漢詩 行路難 李白
李白は中国盛唐の詩人です。生地は明らかではありませんが、少年時代は四川で過ごしました。揚子江流域の諸都市を放浪し、途中、玄宗に仕えましたが、宦官の讒言によって追われ、多難な人生でした。その後、長江を上下しながら余生を送りました。
「行路難」は天使を補佐することや、文学で名をはせるといった志を遂げられず、鬱屈した心情を吐露した李白の心情がうたわれています。
ではその後半の一部を紹介します。
欲渡黄河氷寒川 将登太行雪暗天
閑来垂釣坐渓上 忽復乗舟夢日辺
行路難 行路難
岐路多 今安在
長風破浪会有時滄海 直挂雲帆済滄海
黄河を渡らんと欲すれば氷 川を塞ぎ
将に太行に登らんと欲すれば雪 天を暗くす
閑来 釣を垂れて渓上に坐し
忽ち復た舟に乗って日辺を夢みん
行路難し 行路難し
岐路多し 今 安くにか在る
長風は浪を破る 会(かなら)ず時有り
直ちに雲帆を挂(か)けて滄海を済(わた)らん
ひとり閑に釣り糸を垂れて
渓流のほとりに座っていても、
心の中ではたちまちまた舟をこぎ出して
花の都を夢見てしまう。
我が人生行路は苦しい。
行く手は迷路のごとく分かれている。
私の理想はいったいどこにあるのか。
しかし、吹き寄せる風が荒波を砕いて
突き進む時が必ず来る。
その時こそ私は高い帆を立て、
敢然と大海を渡っていこう。
世の中、悪いこともあれば、いいことだってあります。
禍福はあざなえる縄のごとし。
いろいろあったほうが物語としては面白くなります。
たまには、ひとり閑に釣り糸を垂れて自分の人生
振り返る、そういう時間を持つのも大切です。