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僕は、田舎から田舎に越してきた人間だ。 と言っても、住処が父方の家から母方の家になったと言うだけで。 以前は、家の事情で父の実家と母の実家を行き来していたが、今度からは父も母の実家に完全に住むことになった。 その年は、父方の祖父が老衰で逝去した頃だった。 父方の実家の事情は僕には分からない。ただ、母はたまに面倒くさいと独りごちていた。 田舎の習慣というのは閉鎖的で縛りが強く、土地管理、金銭管理も父が長男だからと丸投げ状態だった。 そんな父も管理が上手い訳ではなく、無くすよりは
南の地方、某かの県で生まれた人間が僕である。 とにかく体が弱く、薄着をすればすぐ風邪をひく子供だった。 僕の幼い頃の記憶は、夜間救急からの帰り、ぐったりした僕をおぶった父の背中から見た、田舎の集営住宅の階段、その天井片隅に居た小さな蜘蛛がせっせと巣を作っている姿だった。 たんたん、と、コンクリートの階段を両親が登る音を聴きながら、眠りについた。 照明がちかちかと点滅を繰り返し、その光に虫が寄ってきていた。 踊り場から時折見える外は真っ暗で、ただただ闇が深く感じたのを覚えている