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【短編】きんだん ってなんだろう? 【即興小説トレーニング 妹シリーズ】

 『禁断』という言葉がある。
 辞書でその意味を引くと、以下のようになる。

 禁断
 [名詞](スル)ある行為をかたく禁止すること。例:「殺生を―する」

 だそうだ。
 絶対にやってはいけないと禁止すること、されること。
 アダムとイブは、そう言って食べることを禁止された「知恵の実」を食べてしまい、神様に怒られたとかいう話を聞いたことがある。
 絶対にやってはいけないこと。
 世の中にはいっぱいある気がする。
 例えば、人を殺すこと。
 例えば、ものを盗むこと。
 例えば、人を傷つけること。
 誰かの迷惑になることや、誰かを苦しめることは、基本的にはすべて絶対にやってはいけないことになっていると思う。

 でも、だとすれば。
 どうして、お兄ちゃんを好きになってはいけないのだろうか?
 良く『禁断の愛』なんて言うけれど、『絶対に愛してはいけない相手』と言うけれど、別に誰かに迷惑をかけるわけでもないし、誰かを苦しめるわけでもないのに、どうして『禁断』なのだろうか。
 どうして、ダメなのだろうか。
 

「ん? どうした、妹よ?」
「……別に、なんでもない」
「そうか……変な奴だな。夕飯なら、もう少しでできるから待ってろ」
「……はーい……」

 私には、それが何故ダメなのか分からない。
 私がまだ、子供だからなのだろうか?
 私が、馬鹿だからなのだろうか?

「……お兄ちゃん」
「ん?」
「……好き」
「……おお、俺も好きだぞ? どした? 学校で、何かあったか? 兄ちゃんでよければ、相談に乗るぞ?」
「……別に、平気。なんでもないよぉー……」

 お兄ちゃんには伝わらない。
 私はそれでいいと思ってるし、満足してる。
 お兄ちゃんに彼女が出来たりしたら、やっぱり嫌だけど、それでも、お兄ちゃんは、彼女ができても、私のことを大好きでいてくれると思うから。
 私のこの気持ちが、その、『禁断の愛』なのかどうかはまだ分からない。
 そもそも、愛が分からないのだから仕方がない。
 生まれて、今までずっと、ずっとお兄ちゃんが好きで、お兄ちゃんだけが好きだったから、この好きが、特別なのかも分からない。
 でも、友達や、お母さんへの好きよりは、ずっと強いことも分かっている。

 だから、

「お兄ちゃん、大好き」
「なんだよ? 今日は、甘えん坊だな?」
「えへへ……」

 この気持ちが、『禁断』なのか、それは私にはまだ、分からない。
 こうして優しく撫でてくれるこの手が、あるだけで今は、満足だから。


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