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【短編】 遅く起きたい朝は 【即興小説トレーニング 妹シリーズ】

「お兄ちゃん! おっはよーっ!!」
「ぐはぁっ!!」

 アイスピックを当てて、ハンマーを振り下ろしたら真っ二つにかち割るんじゃないかという程寒い朝。とか言ってたのは、涼宮さんとこの彼だったかな?
 それくらい寒い朝、布団から出れずにぬくぬくしていた俺の上に、降り注いだのは雪でも雨でもなく、妹だった。
 綺麗にみぞおちに妹のお尻がクリーンヒットして、呼吸を困難にされてしまう。
 何か、反逆をしたくて、寝起きの頭で悪口を考えたら……

「お前、絶望的な狸顔だな」
「??? なにそれ? たぬき可愛いじゃん。私好きだよ?」
「そうかい」

 そんな謎の言葉が出てきた。
 が、妹は嬉しそうに笑うだけだった。

「お兄ちゃん、朝!」
「ああ、朝だな。でも、妹よ。朝だから起きなければならないと言うのは、何か間違ってはいないだろうか?」
「ふぇっ!? お兄ちゃん何言ってるの? 私、むつかしい話はわかんないよ?」
「まぁ、聞け、妹よ。朝が来た、太陽が昇った、だから目覚めなければならないって、いったい誰が決めたって言うんだ?」
「えーと、神様かな?」
「そんな誰が決めたかも分たないルールに、従う必要があるのだろうか?」
「でも、起きないとご飯食べれないよ? 私ね、お腹すいた」
「時には、昼過ぎ、いや。夕方までゴロゴロと寝ているのも悪くないと思うのだよ」
「うーん……そうかなぁ?」
「さぁ、妹よ、たまには、ともに惰眠を貪ろうぞ!」
「ともに……? え? いっしょに!?」

 回らない頭で自分が発言したとんでもない言葉に、妹はプチパニック。

「うーん……うん! わかった! じゃあお兄ちゃんと一緒に寝る!!」
「……おや?」

 眠いから、わけのわからないことを言って誤魔化そうとしたら、いつの間にか妹と一緒に布団に入っている社会人男性がいた。よく見なくても、俺だった。
 いいのか? 今日は休みとは言え、妹と一緒に布団で、あまつさえ、妹に抱きつかれ、決して大きいとは言えない妹の胸部が、押し当てられているこの状況。
 世間的にはどうなのだろうか?

「うーん、むにゃむにゃ……」
「そして、のび太くん並みの入眠の早さ!?」

 気持ちよさそうに眠りながら、俺に抱きつく妹のぬくもりが、冬の最強の魔法アイテムである『お布団』以上に眠気を誘い、いつの間にか俺も夢の中だった。


「……マジか」

 目を覚ますと、デジタル時計は16:02。
 完全に夕方だった。

「んん……お腹すいた……」

 横を見ると、妹は、寝巻きをはだけて眠っている。
 流石に腹が減ったのだろう、お腹から可愛い音が鳴っていた。

「美味いメシ、作ってやるからな」

 俺は起きて、キッチンに向かうのだった。
 

 随分遅い一日の始まりだ。


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