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Webマーケティング畑の人間が 「採用」という構造を整理をしてみた

株式会社プレックスで採用を主軸に担当している平井です。

採用に携わり2年が経ち、自分なりに採用をどう捉えているか?というのを整理しようと思って書いてみました。

また、自分とともに採用を一緒にやってくれる人を募集していることもあり、今後入ってくるであろう新しいHRメンバーに向けた記事でもあります。

これが正解というものではなく、あくまでも自分なりの捉え方なので、ご自身の採用の捉え方と比較し、何かしらのインプットになればと思っています。


この記事を書こうと思った背景

採用においても、その時の流行であったり、採用の調子が良い企業の手法論が取り沙汰されることが多いですが、その多くに対して、個人的には情報が不足しているなと感じることが多いです。

・「採用がうまく行った」という結果に対して、影響を与えている要素について網羅的に語られることが少ない

・「それも確かに1つの要因だよね」というような変数を絶対視する

・そもそもの課題や目的、背景の話がなく、手法の話に終止し、断定する

例えば、「採用にはマーケティング視点を取り入れるべき」「スカウトの文面変えたら返信率UPした」「潜在層へのアプローチが重要だからTwitterをやるべき」といった内容になります。

もちろん、部分的にはその通りですし、複雑かつ定性的な話が多い採用において、全ての背景や影響範囲の話をすることは不可能だと思いつつも、背景やその他検討要素の話が少なすぎるケースや、断定し過ぎでは?というケースも多々見られるなあと感じます。

そこで改めて、自分が何かしらの情報発信をする際に基盤となっている考え方や背景といったところを記事にし、「自分はこういった構造で捉えていて、今はこの点について話しているが、他の変数も影響しているから一概には言えないけどね」という大義名分を言語化しておくことで、Twitterやnoteや口頭で説明するコストを下げつつ、未来の2人目のHR社員の方に向けての研修資料にもなればいいなと思っています。

自分なりに採用の構造を分解してみる

早速ですが、自分なりの採用を取り巻く構造をどう捉えているかということをまとめてみました。(etcで省いているところは膨大すぎて諦めてしまいました...)

全体

これでは何も伝わらない気もするので、1パーツずつ解説していこうと思います。

採用構造l1

候補者OK×自社OK=採用

まず左側ですが、そもそもの採用とは、候補者と自社それぞれに自分(自社)にマッチするかを確かめ、双方マッチするとならないと採用にはいたりません。

そういった、改めて語られないが、構造として存在している隠れた前提というものとして、下記のようなものがあります。

・候補者がOKして、自社がOKの2つが揃わない限り採用に至らない
・候補者は自社と他社を比較して、総合的に自分の希望を叶えられそうな会社1社に入社する(副業、1社しか受けてないなど例外はあります)
・自社は1人に限らず、採用目標数に応じた人数を採用することができる

それらの前提をもとに単純化すると、下記のパターンに収束します。

A.自社に来てほしい方かつ、自社に来たいと思っている人を見つける
B.自社に来てほしい方だが自社に興味がない方に、自社を他社より魅力に感じてもらう
C.自社に来たい方を、自社にマッチするか判断する
D.今は自社にマッチしていない方がマッチするように、受け入れる幅と深さを広げるべく社内を整える

スタートアップ、ベンチャーにおいては知名度が低いことや、一般的にはスタートアップやベンチャーを希望する人が少ないことから、B、Dがメインの方向性になるかとは思いますが、前提としてはこういう構造だと捉えています。

採用チャネル・選考

では、採用チャネルや選考はなにかというと、候補者OKと自社OKを双方が認識するための情報伝達、交換媒体と表現しますが、恋愛に置き換えると手紙、LINE、電話、デートと同じようなもので、双方の情報や感情を確かめる、伝える手段です。

後に解説しますが、

・候補者が求めるものに対して、自社がどういう価値を提供できるのか
・自社が求めるものに対して、候補者がどういう価値を提供できるのか

といったところの情報を、選考や採用チャネルでのコミュニケーションを通じて相互に理解を深めていき、候補者OK、自社OKにたどり着きます。

例えば、RA/CA分業制の人材紹介という採用チャネルでは下記のように情報伝達を行っていくプロセスを通じて、候補者OK、自社OKを判断してきます。

自社→RA→CA→候補者→CA→RA→自社→選考...といった形で情報を伝達していき、候補者OKと自社OKを獲得する必要があるため、採用という構造の中に、各採用チャネルの構造も存在しているので、チャネルの特性や構造、取り巻く変数を理解する必要があります。

採用競合

前述しましたが、候補者は自分の希望が総合的に最も叶えられる会社1社に入社します。

そのため、自社側としては、ただ候補者OKと自社OKを揃えるだけでなく、採用競合と比較したときに相対的に候補者のOK度合いの総合点を上回っている必要があります。

よく聞く採用競合は同業界とかで考えがちではありますが、どちらかというと後述する「自社が希望する候補者が並行して選考を受けていて、かつ自社の提供価値が近しい企業や団体」が採用競合になります。

採用構造l2

※真ん中から左に向かう矢印は候補者OK、自社OK、採用チャネル・選考に向かっています。

候補者希望(ワクワクと安心)

候補者希望とは、簡単に言うと転職理由や転職先に求めるもの、キャリアプランなどが該当します。

こと中途採用において転職を考える候補者は、何かしらの希望を求めて転職しています。

例えば年収を上げたい、残業時間を減らしたいといった雇用条件から、将来事業を作れるようになりたい、マネジメントの経験を積みたいなどの成長、スキル欲求、ロジカルな人が多い職場といった人の面、仕事が好きな人が多いなど価値観、といったものが該当します。

それらの希望の中にも濃淡はあるものの、「この会社なら自分の希望が満たされそうだ」と最も強く感じる会社に転職するのが基本路線になります。

隠れた前提条件として、人が何をワクワク(ポジティブな要素を積み上げるための転職での希望)と感じるか、何を安心と感じるか(ネガティブな要素をなくすための転職での希望)は人によって異なります。

例えば、図では雇用条件は便宜上安心の方に入っていますが、給与UPが最大のモチベーションの方にとってはワクワクの要素に入ることがありますし、転職するならバリューを出さないと不安と言う方には、ポジションや経験が安心要素になることもあります。

加えて、安心とワクワクの希望の濃淡も人によって異なるため、後述する候補者解像度が重要になってきます。

また、希望は1つだけで終わることの方が少なく、基本的に複数の希望があり、それらの総合値で希望が満たされたかを判断されるケースが多いです。

例えば、給与を上げたいという希望があった場合でも、業務内容や労働時間が何でも良いかと言うとそうではありません。そのため、候補者の希望する要素の中で希望度合いの濃淡のグラデーションを捉えて、情報を提供していく必要があります。

自社希望(いわゆる採用要件)

自社希望とは、スキルや素質、カルチャーなどどういう人を採用したいかという、いわゆる採用要件になります。

詳細は後述する自社解像度の部分でお話しますが、採用はあくまでも経営、事業課題に対する1手法になるため、「経営と事業の現在の課題および目指す未来に対して、どういう採用をするべきか?」を考えて採用要件を定めていきます。

採用の文脈でよく出る話ですが「性格が良い人」が、「企業にとって良い人」と限らないのは、経営や事業上の「良い人」と私生活での「良い人」は基準が違うからです。

この採用要件の議論は経営、事業責任者、マネージャーレイヤーと議論することになるため、採用担当は採用市場と自社事業を行き来して、適切な要件に落とし込むことが重要になります。

隠れた前提条件としては、候補者は相対評価的にOKを決めますが、企業は採用予算と採用枠が続く限りは基本的に絶対評価で採用しているはずです。(採用枠1枠で同時に2名きて、ほぼ同じスキル、カルチャーで、予算が1人分しかないみたいなレアケースを除く)

候補者の提供価値

いい言葉が見つからなかったのですが、「企業の希望を満たすかどうかを、企業が判断するための候補者の情報」になります。

大方の企業では、過去の経験や素質、カルチャーの部分で何かしらを採用する人の希望を持っているケースが多いので、能力とカルチャーという大きな区分で書いておりますが、ここは自社の事業や状況によって、多種多様な希望があるかと思います。

例えば営業経験を希望するA社とマーケ経験を希望するB社があった場合、類まれな営業実績(候補者の提供価値)があっても、A社はとても評価するし、B社では全く評価されないケースもあります。

いわゆる優秀な人が多いと言われる会社出身であっても、自社の事業モデルや課題感によっては特に必要がないこともありますし、その逆もあります。

自社側としては、自社の希望をベースに候補者の提供価値が自社の求めているものかを判断する必要があり、面接や書類選考などの選考プロセスにおいてそれらを判断していきます。

隠れた前提条件としては、採用担当及び面接を行う人は、候補者の提供価値を適切に判断するだけの知識や能力を持っている人をアサインする必要があるという点です。

どの選考プロセス、面接官が何を判断するのかを明確にしておかないと、マーケしかやったことない人が営業の実績や能力の高低を判断することは相当難易度が高く、双方のミスマッチや工数が積み重なることになるため要注意です。

よくあるのは、人事はカルチャーや志向性を判断し、現場メンバーがスキル感を判断するというケースになります。

自社の提供価値

候補者の提供価値のところを言い換えて、「候補者の希望を満たすかどうかを、候補者が判断するための自社の情報」になります。

つまり、候補者が自分の希望に対してワクワクする情報や、安心につながる情報になります。

具体的には、業務内容やキャリアパス、年収、有給の取得実績、社員の入社理由、新規事業の計画などの企業の情報がこれにあたります。

その情報を候補者に伝達する手段として、SNS、採用広報、エージェントへの情報共有、スカウト文面、面接での会社説明などがありますが、基本的にこちらが発信しないと候補者がアクセスしづらい情報になりますので、自社としては発信できる用意はしておかないといけません。(採用広報が大事と言われるのはこの文脈)

隠れた前提条件としては、あくまで候補者が判断するための情報になるため、候補者が理解できる言葉で伝達しなければいけないことと、候補者は複数社を比較検討するため、全部を能動的かつ完璧に理解する時間を割いてくれるとは限らないという点です。

「弊社はとてもいい会社なんです!」と抽象的に伝えたところで、自分が熱中している趣味の話を、その趣味をやったことない人に理解してもらうのが難しいのと同じで、中にいる人と外にいる人では自社の常識が異なり、触れている情報量と質に大きな乖離があります。

それらの情報をテキストで伝えるのか、映像で伝えるのか、音声で伝えるのか、対面して感じ取ってもらうのか、どれが適切に伝達できそうかを踏まえて、媒体や選考プロセスを決定し、どういった情報の粒度で伝えることで候補者希望とマッチしていると認識してくれるかを考えて、情報を伝達していく必要があります。

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※真ん中から左に向かう矢印は候補者の希望、自社の希望、候補者の提供価値、自社の提供価値に向かっています。

自社解像度

ここから解像度という抽象度高めな言葉を使いますが、下記のFOUNDX、馬田様のスライドをまずご覧いただければと思っております。

上記を共通理解として、採用に影響する自社の変数の解像度を高めていきます。

具体例として利益やオペレーション設計などの内容を上げておりますが、ここについては様々な変数が存在しているので、かなり多くの変数を割愛しており、個人的に自社及び候補者の希望、提供価値に影響度が大きいと思うもの例として記載しております。(ほんとに一部なので例が全てと鵜呑みにはしないでください)

前述の通り、自社OKおよび自社希望とは、経営や事業の状況と未来から逆算して決定されます。

採用予算に割けるだけの利益が出てないと採用は出来ませんし、オペレーション設計のレベルが低い状態の場合は、オペレーション設計を出来るもしくはオペレーション設計が整ってなくても成果を出せる要件を持った候補者の採用が必要になることが考えられます。

また、事業モデルおよび対象顧客がtoCやtoBか、候補者に馴染みがある領域か、業務内容が転職市場において希少性とニーズが高いかなどによって、候補者のどういった希望に対して、どう満たせるかが変わってきます。

採用という構造における最も基盤になる要素のため、ここの高低によって採用の難易度や工数、コストが大きく変わってきます。

隠れた前提条件としては、候補者は相対的に企業を判断するため、採用担当としては他社の解像度も高くないといけないということです。

例えば、自社の年収しか知らずに、「弊社は年収300万円の高収入な会社です!」と言っても、自社の解像度はたしかに高いのですが、300万円というのは採用市場からすると相対的に高収入と言えるレベル感ではないため、年収に関する希望がある候補者OKもらうためにはほぼ役に立ちません。

年収だけではなく、セールスのスクリプトのレベル感、マーケティングのLPのレベル感など、該当する職種については、採用市場の相場観であったり、職種での業務レベルの相場観などの解像度の高さも求められます。

また、その相対的な価値も状況に応じて変わるため、常にアンテナを貼っていなければいけません。

例えば、コロナ前であれば「弊社はオンライン商談で契約を獲得しています」というのは相対的に価値が高そうに思えますが、コロナ以降においては割とスタンダードなな価値になってしまっているといったイメージです。

候補者解像度

自社の解像度が高まっただけでは、候補者のOKを貰うことは難しいです。

なぜなら、基本的には経営や採用計画には期限がありますし、候補者が選考プロセスや事前情報収集に掛けられる時間は有限のため、候補者がどういう情報を求めているかを知り、求めている重要度が高い情報から順に渡さないと、解像度の高い的はずれな情報を提供し、タイムオーバーになってしまうからです。

例えば、「弊社はこういう思想から、こういったバリューを設定しており、定義としては~~~~です。ただ、年収はよくわからないです...。」となった場合、おそらく候補者からOKを貰える確率としては相当低くなると思います。(転職先探しの際に、バリュー以外を全く気にしない方がいれば別ですが)

そのため、自社が求めている候補者はどういった経験や採用チャネルで接点を持てるのか、自社が求めている候補者が転職に際してどういった希望を持っている傾向にあるのかを知ることで初めて、マッチ度が高い候補者の方に、自社を魅力に感じてもらうための情報を集め、伝達できるようになります。

隠れた前提条件としては、自社が求めている候補者の方の解像度を高めることが重要だという点です。

理由としては、自社の希望や提供価値は短期的に変えられないことが多く、数日で幅広い候補者を受け入れられる事業、組織にすることよりも、現状の自社の希望と提供価値でマッチする方と接点を持つほうが比較的容易だからです。

基本的に自社の希望(採用要件)というのは、現状メンバーでやれることはやった上で課題に対して採用という手法を選んでいるため、採用要件の定義が明らかに適切じゃない場合を除き、そもそも課題を解決できるのであれば、最初から採用要件の幅が広いはずだからです。(提供価値も同じです)

それに反し、様々な採用チャネルを使ったり、採用担当の行動量を増やしたり、オペレーションを変えてアプローチする生産性を高めることのほうが、比較的難易度は低くなります。

加えて、規模化を前提とした経営スタイルの場合は、将来的に採用の幅が広がることを踏まえて、幅広い候補者の解像度を高めることも重要にはなります。

ただ、恐らく3年くらいで見える範囲で求めている候補者の解像度から上げていかないと、10年後に会社があるかどうかもわからないスタートアップやベンチャーにおいては特に現実的なラインかなと思います。

構造や関係性を捉えた上でどうするのか?

ここまでで、採用というものがどういう要素によって構成され、どの様に影響しあい、採用に至るのかを現状の自分なりの理解で書いてまいりました。

こういった背景から、1つの変数を動かしたり、1つの施策によって採用という結果に至ることはありません。

その上でどうオペレーションレベルまで落とし込んでいくかをまとめていきます。

個人的には、下記のような思考プロセスで考えております。

・目的、目標の確認
・ボトルネックやキーとなる変数の特定
・戦術の策定
・徹底的な実行
・成果の判断
・再現性、規模化をするためのオペレーション構築

それぞれについて解説します。

目的、目標の確認

ないがしろにされがちな、目的や目標ですが、「もう分かってるって」となるくらいまで、自分および採用に関わるメンバーには共通認識を取れてるか確認します。

何を基準にしても良いのですが、自分としてはサークルではなく、株式会社として、その中のメンバーとしてやっている以上は、経営や事業の計画や目標に応じて、採用という手法でどうアプローチしていくかを考えるのが良いかと考えています。

何かしらの基準がないと、「なんか良い人そうだから採用しました!」とか「いくら掛かるかわからないけど採用しました!」といった採用も許容してしまい、事業や組織が成り立たなくなってしまい、株式会社としてやりたかったことや、本来やるべきことにフォーカスできなくなってしまう可能性があるからです。

関係者で共通認識を取る必要性としては、基本的に選考プロセスや施策を全て1人で完結していないケースが多いと想定されるため、複数人で関わる以上は誰かしらでも認識の齟齬があると、コミュニケーションのエラーが発生し、様々なデメリットが想定されるからです。

例えば、Aさんは緩く楽しむサークルの新入生募集のつもりで新歓を行っていて、Bさんは全国優勝を目指す部活の新入生募集のつもりで同じ団体の入会を薦めていたとします。それぞれが「新入生募集しよう」とだけ認識を合わせて、個人個人がビラを作ったり、ホームページのデザインを作って、歓迎会を開いたりして、いざ双方の良いと思った新入生の顔合わせをしたときに、双方が「緩いサークルなのにガチすぎないか?」「ガチな部活なのに緩すぎないか?」となってしまいます。

そうなってしまった場合は、同じ時間をかけていれば入会を獲得できた新入生の獲得機会損失や、ビラやホームページデザインに掛けたコストとリソースは全て無駄になってしまいます。

そこで採用の目的や目標の共通認識を取れればどんなオペレーションでも良いのですが、オペレーションの具体例としては、下記のようなものになります。

自分が採用の目的や目標を理解するためのオペレーション例
・上司や経営層などに、どういう課題や計画があり、いつまでに達成を目指しており、その解決、達成に向けて採用という手法をなぜ選定したのかを聞く

採用関係者全員で共通認識を取るためのオペレーション例
・自分が理解した上で、それを関係者各所に口頭やテキスト、図などを用いて伝達しつづける

ボトルネックやキーとなる変数の特定

目的と目標を確認した後は、それらの達成に向けて取り組んでいく方向性を決めていきます。

このときに重要なのは、何が定数で何が変数なのかという把握と、どこが最も重要度の高い変数なのかを理解するということです。
※変数とは、「自分の影響範囲でコントロール出来る、しやすい要素」
 例)スカウト文面、利用する人材紹介会社
※定数とは「自分の影響範囲ではコントロールが出来ない、難しい要素」
 例)提示年収、事業モデル、現状のマネジメントレイヤーのレベル感
という意味で使ってます

なぜかというと、お金や時間は有限で、目的や目標も時間軸の期限が設定されていて、最小コスト、最速、最大成果の総合値が高い選択をすることが企業の中では評価されるケースが多いからです。

では、ボトルネックやキーとなる変数をどう見つけるか?というオペレーションですが、正直なところ構造やつながりの解像度を高めると自然と見えてきます。

改めて自分なりの構造を見てみると、基本的には自社及び候補者の希望と提供価値の相互の情報伝達が重要となっています。

全体

では情報伝達がというものの構造はどうなっているかというと、自分なりには下記のプロセスがあると思います。

情報が存在しているか否か

情報を知っているか否か

情報を理解できているか否か

情報を加工し適切に伝達できているか否か

このプロセスの中でボトルネックになっているものを現状と照らし合わせて、アプローチするポイントを決めていけばOKです。

例えば、業務内容のイメージが湧かないであったり、成長できるか分からないなどの理由で候補者NGが出ている傾向があるのであれば、募集しているポジションの業務内容を知らないのではないか、どういう業務やスキルを経験できるかの解像度が低いのではないかと仮説が生まれます。(解像度高めた上でまた別の仮説が出る可能性もあります)

また、今回はあくまで全体像の構造とつながりしか書いていませんが、各採用チャネルの中にも構造とつながりが存在しているので、全体を深く、広く、詳細を理解すればするほど戦略やアプローチを決める上でとても役に立ちます。

仮説検証の優先度を決める

おそらく人不足な現在、採用の課題が1つということはないとは思います。

では複数出てきてどれも重要そうな課題に対してどのように優先度をつけていくかというと、自分は下記3つを主軸に総合判断を行っています。

・工数や予算に対して投資対効果の大きさとスピードの総面積
・必要なリソースの投資量
(社内のリソースを使いづらい役割なら、動かせるリソースの現実性も入って来ると思います)

例えば、全人口の99%が知っている会社で、50%の内定承諾率の会社があったとして、あと1%の認知を取りに行くのと、50%を60%に上げに行く取り組みでは、投資リソース次第ではありますが、後者のほうがおそらく成果に与える影響が大きく、優先度は高くなるはずです。

ここまで極端かつ明確に数字に出てくる例は少ないですが、基本的な思想は同じです。

各社の状況やボトルネックが異なるため、「〇〇から始めるべき」と明確に決められることはなく、自社の状況と採用の市況感を深く、詳細に理解して、優先度の設定を行っていきます。

また、企業の成長スピードによっては1週間で状況が変わることも往々にしてあるかとおもいますので、状況変化の情報をキャッチアップできるように、各所との連携は常に取っておくことが重要になります。

戦術の策定

ボトルネックやキーとなる変数を特定し、その中で優先度を決めた後には、具体的にどういうアプローチを行っていくかを決めていきます。

例えば、業務内容のイメージが湧かないであったり、成長できるか分からないなどの理由で候補者NGが出ている点についてアプローチすると決めた場合は、下記のように考えます。

業務内容、得られるスキルを採用に携わるメンバーが知っているか

業務内容、得られるスキルを採用に携わるメンバーが理解しているか

業務内容、得られるスキルを採用に携わるメンバーが候補者が理解できるレベルで伝達できているか(もしくはテキストや映像媒体に落とし込まれているか)

この中で、それぞれを満たしていると思われる条件を設定して、施策を検討します。

知らない場合:
・業務の様子を同行してみたり、音声や録画データの確認
・自社採用広報記事リストを確認し、該当する情報が存在しているか確認
など

理解していない場合:
・面接のロープレを行い、業務内容や得られるスキルの質問に対する回答を確認
・記事の内容を修正し、実際に業務しているメンバーに確認を取る
など

伝達出来ていない場合:
・面接の逆ロープレやスクリプトの作成を行う
・記事のシェアや面接前の日程調整でURLを送付
など

このように、基本的にはボトルネックやキーとなる変数の特定の思考プロセスと同じで、ボトルネックとなっている点の解像度を高めていけば自然とアプローチも決まってきます。

よくある間違いとして、戦術ベースから入ってしまうケースがあるのですが、構造を捉えていないがゆえに、その戦術の良し悪しを判断できないケースに陥ります。

構造を捉えると、どういった状態が理想か?というものを定義できるため、理想状態を定量化し、そのギャップが埋めるために施策を考えて実行するため、そのギャップが埋まっているかを確認すれば良し悪しは判断できます。

隠れた前提としては、打ち手自体の良し悪しはあるが、そもそもの課題を捉えていれば大筋打ち手が悪いということはなく、課題の特定に問題があるケースが起こりうる点です。

野球で例えると、プロ野球選手になるため、打撃に課題がある人に対して、守備の練習をしてもらっても課題の解決にはなりませんが、守備の練習をするという戦術自体はプロ野球選手を目指す上で悪くありません。

このように、課題に対しての良し悪しと、打ち手自体の良し悪しは別の議論になるため、基本的には課題や目的と戦術はセットで語ることを意識し、どちらかが抜けていたり、ロジックがずれている場合は注意が必要です。

徹底的な実行

戦術が決まれば、あとは実行するだけです。ただし、ここで注意しなければいけないのは、後述する成果の振り返りの際に、「実行が足りていないから成果が出なかった」という振り返りを避けるために、正しく、徹底して実行する必要があります。

先程の例を引用すると、下記のような戦術でアプローチすることが決まりました。

知らない場合:
・業務の様子を同行してみたり、音声や録画データの確認
・自社採用広報記事リストを確認し、該当する情報が存在しているか確認
など

理解していない場合:
・面接のロープレを行い、業務内容や得られるスキルの質問に対する回答を確認
・記事の内容を修正し、実際に業務しているメンバーに確認を取る
など

伝達出来ていない場合:
・面接の逆ロープレやスクリプトの作成を行う
・記事のシェアや面接前の日程調整でURLを送付
など

1つ目の、「業務の様子を同行してみたり、音声や録画データの確認」という点で考えてみると、1人の1つの音声データを聞いただけだった場合はいかがでしょうか。

1つ聞いたから実行したといえばその通りではありますが、本来の目的としては候補者に訴求する業務内容の魅力を理解するという点から見ると、その音声は100パターンある商材の1商談音声に過ぎなかった場合、「知っている」という状態とは言い切れなくなり、実行が足りないという結論に至ります。

結局の所は、前段階の「ボトルネックやキーとなる変数の特定」「戦術の策定」の解像度次第という着地にはなってしまうのですが、「どういう実行を行えば目的が果たされるのか?」を可能な限り明確にしておくことで、「実行が足りないから成果が出ない」という検証結果を先に潰しておくことが出来ます。

実行してみないと成果が出るかどうかについては仮説に過ぎず、正直やってみないとわからないことが多い世界です。

そのわからないことが多い世界の中で唯一自分がコントロールすることでなくせる検証結果として、「やりきっていないから成果が出ない、わからない」という結果です。

不確実性が高い中で、こちら側のオペレーションでコントロールできる変数は、コントロールしきっておきたいというのが背景で、徹底した実行が重要になります。

成果の判断

実際に実行した後は、「想定される課題に対して、どのくらい達成できたのか?」「投資したリソースに対して得られた効果は適切だったのか?」を判断する必要があります。

この際に、重要になるのは、定量的な指標で判断できるようにしておくというポイントになります。

なぜなら、特にベンチャー、スタートアップにおいては投資できるリソースは限られていて、可能な限り投資対効果が高く、かつ投資回収スピードが早い方が好まれるケースが多いと思います。

「なんとなく良かった」という振り返りでは、「それに投資したリソースを他に割いたほうが、事業の成長はより早かったのではないか?」という問いに対して答えられず、こういった不安定な意思決定を積み重ねていくと、事業がうまく立ち行かなくなります。
※いちいち投資対効果気にするコストのほうが高いようなことはさっさとやっちゃいますが

そういった背景から、可能な限り定量的な指標で、リソースを投資しつづけるべきか、打ち止めて他のアプローチを模索するかを判断できるようにしておく必要があります。

改めて先程の例を使うと、下記のケースで「面接のロープレを行い、業務内容や得られるスキルの質問に対する回答を確認」することで、業務内容や得られるスキルを候補者に訴求できるようになることを目的として施策を行ったとします。

理解していない場合:
・面接のロープレを行い、業務内容や得られるスキルの質問に対する回答を確認
・記事の内容を修正し、実際に業務しているメンバーに確認を取る
など

その場合は、「どういう数字が出れば、面接官それぞれが業務内容や得られるスキルを必要レベルまで理解したと定義できるか?」を検討します。

自分が具体的に検証の指標を置くとするのであれば、下記のようなものになります。

・現状で最も業務内容や得られるスキルの理解度が高いと感じる方から、面接担当する全員が合格を貰う
・候補者に面接後フィードバックを業務内容や得られるスキルについての理解度アンケートを回答頂き、5段階評価で平均4以上を貰う
など

隠れた前提条件として、こういった検証指標を置くと決まれば、Googleフォームで面接後アンケートを作っておかないといけないなど、新たなタスクも生まれてきます。

実行を行う前に検証出来るようなデータを集積できる環境を作っておく必要があり、指標によっては後から回収できない可能性もあります。

そのため、目的、目標の確認から成果の判断までのフローの事前準備は一貫して実行の前に行っておくほうが良いというのが、隠れた前提条件になります。

再現性、規模化をするためのオペレーション構築

ここまで、課題の特定からアプローチ、投資対効果の検証という流れを説明してきました。

「再現性、規模化をするためのオペレーション構築」という点は、会社の目指す方向性によっては不要になるため、あくまで補足として書いています。

PLEXでは、複数の事業を展開していく経営スタイルから、一定の規模化が必要になり、一定の規模化が必要になると「属人的になんとかなっていた」という要素を減らしていくほうが、規模化をする上で安定感がでます。

そのため、業務で求められる感覚やセンス的な部分を少なくしつつ、一定再現性があるようなオペレーションを組み立てる必要があります。

オペレーションとは具体的なスカウト送信などの業務だけではなく、課題特定のプロセスなども含みます。

この記事は、思考のプロセスも可能な限り具体例含めて記述したつもりではありますので、「平井が考えれば出来る」ではなく、「この記事を読めば未来に入ってくる2人目、3人目のHR社員も、課題を特定し、成果を出すために改善を回すことが出来る」というというところを目指した再現性、規模化を意識したオペレーション構築の1つとも言えます。

他にも、セールスのトークスクリプト、スカウトのテンプレート文面、面接での質問項目などもオペレーション構築に該当してきます。

目指す企業の規模や世界観、人員計画次第では必要のない考え方ですが、補足として記載させていただきました。

今までまとめた内容を振り返って、未来のHRメンバーに期待すること

思考のプロセスを書き出してみた結果、解像度を高めることに着地するなと思いました。

事業、採用、各採用チャネルについての解像度を高めていくことで、課題や成果を出すためのポイントは自ずと見えてくるなという印象です。

個々人にどこまでの役割を任せるか次第ではありますが、現状のPLEXにおいては、事業側の理解と採用マーケットの理解双方を深めておくことが求められるため、インプットを絶やさないことや、知的好奇心を持ち続けること、個人、企業のメタ認知を適切に持つことが重要になるのではないかなと思っています。


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