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夏の甲子園中止

2020年5月20日。この日は全国の高校球児および高校野球ファンにとって、最も悲しい日になったかもしれません。日本高野連が、新型コロナウイルスの影響が各地に広がる中、8月10日から予定されていた夏の甲子園と、出場権をかけた地方大会の中止を発表したのです。

夏の甲子園の中止は、戦争の影響で中止となった1941年以来79年ぶりで、戦後では初の出来事。春夏連続での中止は、戦争での中断を除いて初めてでした。春の甲子園後に予定されていた春季大会も、準々決勝まで実施して打ち切られた沖縄を除いてすべての都道府県で中止となったため、全国ほとんどの現3年生の代のチームが、公式戦は秋季大会しかできなかったことになります。

一人の高校野球ファンにすぎない私でも、中止が決定してから数日間は放心状態というか、信じられない、信じたくない気持ちが続きました。ましてや甲子園出場を目指して、厳しい練習に耐えてきた球児たちの気持ちを思うと、悲痛で仕方ありません。甲子園に出たくて野球を始めた子、甲子園に出たくて親元を離れて強豪校に入学した子も少なくないでしょう。

そんな球児たちへ、最後にプレーする場を提供しようと、各都道府県の高野連が独自の大会の開催へ向けて動き出しています。中止が決まったのは全国大会としての甲子園と、その代表校を決める地方大会です。勝ち抜いても甲子園へはつながりませんが、代替の大会を行うことに関しては、日本高野連も「それぞれの判断にまかせる」としています。また、開催するための財政的援助や感染リスクを避けるためのガイドライン、情報の提供は惜しまないと明言しました。甲子園にはつながらないというモチベーションが難しいところではありますが、本気の高校野球をする最後の場として、ぜひ開催してほしいと思います。

夏の甲子園中止決定までの経緯

3月11日 第92回選抜高校野球中止

3月中旬以降 各都道府県・地区で春季大会の中止・延期が相次ぐ

3月25日 沖縄大会が無観客で開幕

4月上旬以降 春季大会を延期していた都道府県で中止が相次ぐ

4月6日 沖縄大会が準々決勝で打ち切り

4月7日 7都道府県に緊急事態宣言発令

4月13日 北信越大会の中止が決まり、全国9地区すべてで春季大会中止に

4月16日 全国に緊急事態宣言発令

4月20日 青森大会中止で沖縄を除くすべての都道府県で春季大会中止

4月26日 全国高校総合体育大会(インターハイ)中止

5月4日 緊急事態宣言が5月末まで延長

5月14日 39都道府県で緊急事態宣言解除

5月20日 第102回全国高校野球選手権の第2回運営委員会および理事会で開催中止が決定

中止の理由

・全国で約3800校が参加する地方大会での感染リスクを完全になくすことはできない

・教育の一環である高校野球が、休校延長による夏休みの短縮など、学業の遅れを取り戻す支障になりかねない

・3月から部活動を再会できていない学校も多く、練習不足による故障や熱中症の危険性も否定できない

・甲子園での全国大会は全国からの移動や宿泊などが伴い、無観客にしたとしてもリスクを避けられない

・医療現場がひっ迫しているなかで、例年のように治療スタッフに常駐してもらうことが困難

・第2波、第3波が来るのは確実と言われる中で、終息の見込みが立たないところで延期というのも難しい。選抜に出場予定だった高校への救済策も白紙

個人的には、リスクを完全にゼロにするというのはどうしたって無理なので、可能な限りリスクを抑えたうえで開催へ踏み切って欲しかったです。ゴールデンウィーク明けあたりから感染者も減少傾向にあり、ようやく出口が見えてきたこともありますし、屋外スポーツである高校野球が開催できなければ、春高バレーなどの屋内で行うスポーツ大会はいつまでたっても開催できません。また、今後コロナウイルスとは別の感染症が流行する可能性もあります。そのたびに中止になっていたのでは、またしても不幸な球児を生んでしまいます。甲子園が感染症と共存するモデルケースになるべきだったのではないでしょうか。

とはいえ、中止が決まってしまった以上は仕方ないので、前述した各都道府県高野連の独自の大会が全国で開催され、すべての高校球児が最後にプレーする場を得られることを切に願っております。

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