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新劇場版シティーハンターで戦場と化す東京を目撃せよ

 先週シティーハンターの新作を見に行きましたがとても最高でした。ぶっちゃけこんな記事を読んでる暇があるなら今すぐ見に行ってもらいたい程エンタメしていたのだが、「えー、なんかコンテンツのルールとか知らなきゃダメなんじゃない?」って人のために今回は新劇場版シティーハンターについて紹介したいと思う。
 なお、今やっている「天使の涙(エンジェルダスト)」を見に行っても全く問題ないのだが、本記事では既に見放題とかでアクセスできる前作「新宿プライベート・アイズ」を中心にお話しようと思う。

開幕5分でどういう作品か分かる

 シティーハンター……それは伝説の掃除屋・冴羽獠がゲストキャラの女の子にモッコリしつつもカッコよく悪の手から守り抜くガンアクションである。
 原作は昭和の作品なのでルパンとか水戸黄門みたいに何も知識がなくてもすぐにキャラが分かる作りになっているのだが、全ての人が分かってくれるとも限らない。本作の冒頭はそんな人でも一発でピンと来る完璧な出だしとなっている。
 開幕いきなり目に飛び込むのはミニクーパーとジープの壮絶なカーチェイス。ジープのオッサンはむき出しのRPGを携え、対するクールな男の手には.357パイソン。しかもこれが新宿のド真ん中で繰り広げられているのだ!L.A.でもなくコロンビアでもなく紛れもなく日本の歓楽街でだ。
 この超高濃度のドラッグが開幕2分に詰め込まれており、過去作を何も知らなくても否が応でも釘付けになるはずだ。「銃社会じゃないからガンアクションできないよ…」とか「令和は草食系だから昭和とか香港みたいな映画は無理かな…」とかそういう夢のない固定観念をすべて吹き飛ばしてくれる。
 そこから「MOKKORI…」と囁くセクシーなOPを挟み、主人公の冴羽獠が実際にモッコリして100トンハンマーで殴られる。ここで完全にシティーハンターがどういう作品か観客は完全に理解するわけである。
 こう偉そうに書いているが実は私もシティーハンターは本作が初めてだった。そんな私でもニューロンが異常活性する成分がこの映画にすべて詰め込まれているわけだ。しかもこの熱量が90分以上に渡って繰り広げられるのだから驚嘆せざるを得ない。

スマホがおもしろガジェットしている

 この手の作品におけるスマホの扱いが毎回気になるのはSFファン……というか映画ファンの性である。2000年代半ばまで「メールも出来て地図も見れてネットも見れるスーパー携帯端末」なんてものは夢が詰まったSFガジェットだったのだが、いざスマホとして現実になった途端、妙に作品のスケールを矮小化させる扱いの難しい小道具と化してしまった。
 こういったスマホ的要素は昭和リバイバルとの食い合わせが往々にして悪く、いわゆるバエとかバズなどの若者の流行に必死に食い下がるオヤジ臭さが終始漂うのでやや見苦しくなるのだ。挙げ句「やっぱアナログが一番!」みたいに開き直られると苦笑いせざるを得ない(シリーズ物だとそれを演出するために主人公のIT知識がナーフされる時すらある)。

 ところが今作のスマホはどうだろう。ゲストの女の子が新宿駅のなんともない広告にスマホをかざした途端、ロックマンエグゼみたいなカッコいいエフェクトが出てきてそこから伝説の伝言板がホログラムとして現れる!たった一瞬の演出だが全身に鳥肌が立った。このさりげない1シーンで本作スタッフのSFガジェットに対する熱意を剛速球でぶつけられたのだ。
 無論スマホだけじゃない。最近流行り始めたドローンのデザインもMGS4や虐殺器官みたいなミリタリーパンク調で統一されているのでSDGs社会的な妥協を一切感じさせず、現実的かつエンタメとして切り離された世界を心ゆくまで堪能できる。
 当然ながら冴羽獠も伝説の掃除屋(スイーパー)らしく抜かりなく知識をアップデートしている。盗撮ドローンとエロをかけあわせて「エローン」というギャグを瞬時に思いつき、実際に使いこなしているあたりにただの昭和オヤジではない風格を感じさせる。そして奴は最新のPMCやドローン相手に必ず生きて帰ってくる。アナログの勘がピコピコしたデジタルを出し抜いたからだろうか?違う。冴羽が無敵の男だからだ。

最前線のエンタメとなったシティーハンターを見逃すな

 以上、短いながらシティーハンターの紹介を行った。シティーハンターはルパンなどと違って新作のTVSPを放映したりしないのであまり身近に感じない人も多いだろう。だがこの新劇場版シティーハンターはバブル期の熱狂と冴羽獠のクールさをそのままに現代の技術やテンポ感を実装することで純粋なハイスピードアクションを実現した。
 こんな最前線のエンターテインメントを見逃さない手はない。見放題で第一作「新宿」を見て気に入ったのなら現在上映中の「天使の涙」も同じくらい面白いので急いで見に行くべきだ。モタモタしていると大スクリーンから追いやられて小さい会場に追いやられてしまうぞ。

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