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たのしい地方創生

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地域活性化の業界で働く筆者の、日常のささい気づきを、まじめ風味でお届け。
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#地方

#67 『地方』と『地元』の差分

2024年6月某日 先日、久しぶりに実家に帰る機会があった。到着して早々は、かつての生活に対する懐かしさが込み上げてくるし、両親も気持ちやさしい。しかし、数日たてば、「風呂に入れ」「飯はどうするんだ」という、ありがたいご指摘を受けてしまう。筆者はすでに良い年なので、そっとしておいてもらえると助かるのだか、親子関係というのはいつまでも相対的なもので、「関係性」があまり変化しないことについて、ありがたさをグギギと噛み締めることとなった。 … さて、実家に帰るとつくづく感じる

#25 イマドキの『会食』

2023年12月某日 地方のビジネス・コミュニティの交流機会は限られていることもあり、異業種交流会とか勉強会の類に誘っていただくことが多い。筆者は顕在化した「隠」属性であることから、必ずしも得意とは言えない場であるものの、参加すれば学びや気づきもあるので、できる限り顔を出すようにしている。 先日、アイデアソンみたいな勉強会に誘われたので行ってみたら、とある学生とグループワークで同席することになった。医学生らしい。お話を聞いてみると「無償の愛」「ノーブレス・オブリージュ」と

#24 『豆腐屋のおじさん』

2023年11月某日 筆者は人口10数万人程度の地方都市に住んでいる。そのため、生活の中に「八百屋さん」「お魚屋さん」「お肉屋さん」といった、土着的な業態を利用する場面もまだまだあり、むしろそのような場所に行くことが好きだったりする。最近は、「お豆腐屋さん」などもよく利用している。 先日、ご近所のお豆腐屋さんを訪ねたところ、御年90歳の店主が丁寧に迎えてくれた。今でも現役で、毎朝5時から豆腐づくりに励んでいるのだという。大変だな、と思うと同時にひとつの疑問が湧いた。なぜ、

#23 『地方』である理由

2023年11月某日 最近、ふと疑問に思うことがある。なぜ、自分は地方で働いているのかということである。ふりかえると、なんとなく地方で生まれ・育ち、就職する際になんとなく地元に帰ってきた。よくよく考えると、筆者は地方で働く理由はあまりないのではないかとすら思えてきた。 … コロナ禍の際に、「地方移住」「東京からの脱出」「地方でリモートワーク」みたいな話題がよく聞かれ、世の中、「ほんとうは、地方がとても良いと思っていたんだよね。」という空気感につつまれた。筆者はこれに対し

#16 『ワカモノ』の加齢臭

2023年4月某日 山口周氏の『劣化するオッサン社会の処方箋(光文社新書)』を読んだ。ざっくりと理解した話はこうだ。従来、年配者は若年者よりも充実した経験と知識を保有しているから、情報蓄積媒体という点で優れていた。だから敬うことが美徳とされた。しかし、最近は環境変化のスピードが早くなってきたり、情報のコモディティ化が進み、年配者が相対的に多く保有していた『経験』や『情報』の価値の陳腐化が進んでいる。ゆえに、年配者だから無条件で『優れているとは言えない』ということである。その

#14 『地方』というファッション

2023年4月某日 最近、『地方創生』や『地域活性化』みたいな営みは、コモディティ化しているのではないかと感じる。決して、当事者としてニヒリズムに陥っているわけではない。おそらく、地方創生やまちづくりに関する営みが、ほんの少しだけ、ファッションとしての『おしゃれさ』を纏いつつある状況に、戸惑っているのだと思う。 筆者は、リーマンショック直後に就職活動し、紆余曲折を経て、現在では地域経済を調べたり、まちづくり事業の企画をしたりすることを仕事にしている。今でこそ、『地域活性化

#13 地域ブランドの『単位』

2023年4月某日 新型コロナウイルスによる混乱も少しずつ落ち着きを見せ、町に人が随分戻ってきた。特に、外国人旅行客を見かける頻度が明らかに増え、観光産業の復活と攻めのフェーズへの転換に期待が膨らむ。 さて、そんな中、観光庁が全国11のエリアを『モデル観光地』に認定(2023年3月)している。具体的なねらいは以下とされる。 筆者のざっくりとした要約で恐縮だが、つまるところ、1回の旅行で沢山のお金を使う人々に対して『深く刺さる』コンテンツや宿泊施設を整備することで、超ハイ

#9 『アントレプレナー』と『虎』

2022年11月某日 ふと、地方ビジネス界隈でのロールモデル像の変化を感じた。筆者が就職活動に精を出していた頃(リーマンショック前)は、「IT、六本木ヒルズ」などのキーワードが憧れの象徴かのごとく存在していたように思う。その後、リーマンショックを経て、2010年頃からは「newspicks」などのメディアの台頭もあり、「社会課題の解決」みたいなキーワードを耳にする機会が増えた。 その過程での地方ビジネスの様子はというと、正直、2010年代半ばくらいまでは、都市的なビジネス

#1『たのしい地方創生』はじめました。

ご挨拶皆様はじめまして。本noteにアクセス頂きありがとうございます。 私、テツナカと申します。日本のとある地方で、まちづくりや地域活性化事業を企画する仕事をしています。 地方生まれ、地方育ちです。社会人になって以降、ほんの少し都会で仕事する機会もありましたが、かれこれ10年以上、一貫して地方を拠点に『地方のリサーチ』に携わるキャリアを歩んでいます。 地方ビジネス界隈の『いま』インターネットやSNSが普及したことで、最近は都会の華々しいビジネスの話題が尽きることなく、私