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例えば日本酒とテレビの関係について

先日、とある日本酒イベントでテレビ局の方とお話しした。
いわく、「日本酒はテレビと相性が悪い」らしい。

彼とはほとんど面識がなく、彼がとくに日本酒好きというわけではなく、お互いの前情報もない中での会話で、「日本酒はなぜあまりテレビで取り上げられないのか?」との話になった。

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以下、かなりの主観と勝手な想像の域を超えない文章、また特定の銘柄名を例にして書いております。お許しください。
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日本酒とテレビ。私的には絵面(えづら)の問題かな、と長らく思っていた。
過去に放送された日本酒関連のテレビ番組は各地の酒蔵を訪問し、蔵元と話し、酒を飲む、というのが定番の構成。
だが、酒蔵の建物自体、見た目はそんなに代わり映えしない。酒も同じ色。味のコメントもまぁそんなに変わらない。出演者も変わらない、と本当にビジュアルや内容に変化が乏しい。蔵元を前に芸人みたいなコメントも不釣り合いだから、盛り上げ方も難しい。
そんな表面的な見え方に対する意見を持っていた。

彼の意見はこうだ。
その1)「テレビで特定の銘柄の日本酒を紹介する。そのあとどうなるのか?紹介された蔵元は対応できるのか?」
いまだにテレビの影響というのは紹介した商品の購買に対して大きな影響力がある。テレビのおかげでスイーツや健康食品が爆発的に売れたり、納豆やヨーグルトが店からなくなったり。製造元にももちろん売上増のメリットがあるだろう。

例として名前を出して申し訳ないが、たとえば新政の干支ラベルをテレビで紹介するとどうなるか?
「新春に絞ったばかりの縁起の良い日本酒です!限定品だそうです」みたいな紹介が想像される。で、当然それを見た消費者はそれっ!といわんばかりに当該商品を買い求める。ところが、ただでさえ入手しずらい新政干支ラベル、手に入らない人がほとんど。限定品だから・・と納得する人もいれば、もっと増産しろよ!って人もでてくると予想される。もちろん、新政にとっては増産することもできないだろう。紹介されたことで知名度は上がっても顧客満足度が上がるようには思えない。紹介されるメリットが蔵元にもなく、テレビ局としてもモヤモヤが残る題材となる。
スイーツなんかだと、テレビ放送に合わせて増産体制を取るそうだ。健康食品もしっかり在庫調整できる。日本酒はそのあたりの調整が難しいと思われる。これがたとえば大関や月桂冠であれば、対応できるかもしれない。でもそこにテレビで取り上げるだけの商品価値があるものであればよいが、だいたいテレビ局としては珍しいものや限定品の方が紹介しがいがある。
このあたりのちょうどスキマ部分をついたのが獺祭なのかもしれない。そういえば八海山の甘酒なんていうのも一時期品切れになるぐらいのブームになった、と今思い出した。
ブームといえば、甘酒も呑む人が多くなったとはいえ一時期のブームは落ち着いたようにおもう。そうすると今度は生産量を減らさなければならない。小さい蔵元にとっては大変手間のかかる調整になるだろう。
つまり、一般消費者で視聴者の我々が「テレビでもっと日本酒紹介して欲しい』と思ってはいても、結局はそれをしたところで関係各所誰もメリットを得ないのではないか?というのが彼の意見。

その2)「民放はなんだかんだ広告料で成り立っているビジネス。そのビジネスに、日本酒は当てはまらないのではないか」
民間放送は民間企業なので、当然ながら売上や利益を追求する営業活動がある。CM1本あたり何百万から何千万という規模感の広告費が設定されている中で、日本酒業界というのは民放や広告代理店にあまり相手にされていない?業界のようである。
ビール大手は毎年のように芸能人やタレントを使い、毎年のように新商品を出して、そのたびにCMを制作して放送する。そんな広告費がある日本酒メーカーや蔵元なんて、ないだろう。公的団体はどうか?国税庁はさておき、酒造組合、酒販の団体などなど。どこも金を出しそうにない。(いやそもそもこういった団体こそもっと自業界の活動を活発にすることに予算を使うべき、という意見もありつつ、いずれにしてもそれはテレビCMの料金が払える規模の予算ではないのであろう)
ちょっといやらしい言い方をすれば、テレビ局にとって日本酒を取り上げて、盛り上げて、みんなが日本酒を飲むようになっても、テレビ局にはビジネス的メリットがほとんどない、と推測される。
まぁ、この点においては公共放送に頑張ってもらうしかないかな。

余り時間もなく立ち話だったので、ここで会話終了となった。

いろいろ極論かもしれないが、ああなるほど、とおもうところもある。
立場が違えば、意見も違うものなのだなぁ。

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