脱力系エッセイから学ぶ人生の楽しみ方 - 『あやうく一生懸命生きるところだった』を読んで
「仕事を選べる時代は終わりました。」
世間が慌ただしい中、転職について相談したエージェントさんに言われた言葉。確かに2019年ごろのような売り手市場は次いつ来るかわかりませんからね。
でも、こちらは勇気を出して動こうとしている最中なので、冷たい言い方をされた(ように受け取ってしまい)少し悲しいです。
そんな時、気分を変える本を読みたいなと、書店をフラフラしていて見つけたエッセイの紹介。
『あやうく一生懸命生きるところだった』
もっとのんびり生きていいんだよ、と言いたそうなタイトルだなと感じました。
ビールとイカ焼きの隣に寝そべった男性の、日焼けした背中に猫。
脱力感たっぷりのタイトルとイラストに、見るだけで癒されてしまいました。
日本と似ている、もしくは日本以上に競争の激しい韓国で、一生懸命に働いてきた男性の紡ぐエッセイです。
私のために書いてくれたのではと思うほど、読んでいて共感の連続でした。
会社員をしながらイラストレーターとして活動する男性が、40歳を迎えるとともに会社に辞表を出すところから、エッセイはスタートします。
40歳はターニングポイントだ。
今日から必死に生きないようにしよう、と。
人生100年と言われている現代、40歳は生活を変える絶好のターニングポイントと考えた筆者。退職後はのんびりイラストを書きつつも、何もしない時間の大切さを実感します。
「頑張れ」と言われるからといってなぜ頑張らなければいけないのかと疑問を持っていた筆者。まわりの期待に応えようとしてしまう人々の心理や、その不条理さを独特の切り口で紐解いていきます。
特に印象に残った本のメッセージと、私の心境をnoteに残そうと思います。
見返りは気まぐれである
人よりも勉強しないと、いい大学に入らないと、早く内定をもらわないと…
10代後半から20代前半にかけての私は、こんな焦りでいっぱいでした。
でも今思い返すと、そんなに焦る必要はなかったと感じているのが事実。
進学後、やりたいことが見つかり専門学校に入り直して楽しく学んだり、
勉強はがんばったけど、就職は思い通りの結果にならなかったり、
一度は働いてみたものの、方向転換し独立して成功する人がいたり、
自身の興味関心の広がりや、偶然の出会いによって人の道は大きく変わっていくと思います。
エッセイにはこのようなメッセージがあります。
*見返りはいつだって気まぐれだ
必死に努力したからといって、必ずしも見返りがあるとは限らない。
必死にやらなかったからといって、見返りがないわけでもない。
努力をしても見返りがないこともあると同時に、努力以上の見返りを得られることも時にはある、と考えれば少し楽になる気がします。
何かに取り組むときには、この「見返りはいつだって気まぐれだ」を思い出せば、肩の力も抜けて、より良い成果を出せそうだなと感じました。
人生に正しい選択なんてない
どうしようもできない環境の変化によって、方向を変える、もしくは停滞せざるを得ないときもあります。
例えば、受験や就活を前に起こる災害や感染症の拡大。あの大学への合格、あの会社の内定、それらが正解だと思い頑張っていても、個人で解決できない問題により身動きがとれなくなってしまうのは、悲しいけれど事実です。
エッセイの筆者は会社員時代に、キャリアについてある決断をします。しかし、その直後、会社の経営悪化によって計画は崩れてしまったそう。
人生のすべてをコントロールしようと考えてはいけない。
では、どのように生きていけばいいのでしょうか。
筆者の考えは答えを探すことに集中するのではなく、問題を解くことを楽しもうというものでした。
人生は正解のないなぞなぞ
筆者曰く人生はジョークみたいなもので、私たちはずっとその「正解のないなぞなぞ」を解いていると思えばいいそう。
人生では、真剣に悩み「答え」を探すのではなく、次はどんな行動を起こそう、と考える「リアクション」の方が大事であると書かれていました。
人生は「答え」より「リアクション」が重要な試験
これを読んで気付いたのは、私は「答え」にこだわりすぎている人間だということ。
文章を書く力をつけたい、とスクールでライター講座を受講するも、課題記事の企画練りで時間を使ってしまいます。
一方まわりを見ると、フリーでライターの仕事を始める受講生さんがどんどん増えている印象。
それぞれのお話を聞くと、単発案件に応募してみたり、人脈から仕事を紹介してもらったり、自ら進んで行動を起こしていることがわかります。そこで受け取る情報に応えることでお仕事獲得につながっているそう。
「答え」を求めすぎるとはこういうことか、そして私のことだったのか、とハッとさせられました。
やりたいことは向こうからやってくる
すぐに仕事が見つからなくても大丈夫、と筆者は自身の経験とともに読んでいる側を勇気づけてくれます。
本当にやりたいことが何なのかわからない?
でも大丈夫。無理やり探そうとしなくていい。
いつの日か。向こうからやってくるから。
若いうちからやりたいことを見つけて、転職や起業を果たしている人を見ると、どうしても焦ってしまう自分がいました。
この本の筆者も、以前は私と同じ心境だったと書かれていました。
仕事に関して「これがやりたい!」という強烈なインスピレーションを感じるのは、恋愛に例えると一目惚れと同じではないかと考えることで、若くして決断できた人と自分との違いを腹落ちさせたそうです。
恋愛で一目惚れをしないタイプの人間は、相手のことを徐々に知ることで好きになっていくと思います。
だから仕事でも、一気に熱狂することはないから、できる事に手をつけて取捨選択していけばいいのではないか、という筆者の考えに納得するしかありませんでした。
「一生懸命」より「楽しく」
一生懸命という言葉には嫌なこと、本当はやりたくないことを無理して続けるという意味が含まれている、と筆者は綴っています。
「天才は努力する者に勝てず、努力する者は楽しむ者に勝てない」
似たような言葉ですが努力は夢中に勝てないと聞いたことがあります。
人生100年時代。私は何歳まで働いているんだろうと、想像してしまう今日だからこそ「一生懸命」かより「楽しく」を優先してがんばっていこうと思いました。
あやうく一生懸命に生きてしまうところでした。
さいごに
この他にも、人生を楽しく気楽に生きるためのヒントが詰まった素敵なエッセイでした。
挿絵のイラストやセリフが、いい感じに脱力感を増幅させていて癒されます。
よかったら手に取ってみてください。
書店での偶然の出会いに感謝です。
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