![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/32160242/rectangle_large_type_2_8f01bb71805a034f4eed4fb507b9a480.png?width=1200)
千文字(4)「トンネル」
百文字日記あらため、千文字です。
いつもの5人で毎週ひとりずつ、順番にお題を決めて、皆でそのお題に対して思いついた文章を、1000文字ぴったりでnoteに投稿していきます。
収益は、百文字日記書籍化の費用に充てられます。
01
屋根を外したオープンカーに乗ってポカンと口を開けてトンネルの中の換気扇をいつまでも見つめていた。陰気な山に陰気な風穴を開けたから空気が淀んでいる。この仄暗い筒の中を走る車も、車に乗っている人間も、みんな空洞でできている。地上に存在するトンネルは全て幽霊の通り道だ。胃に見えない穴が開いていて、そこから不可視の存在に侵入されるがままとなっている男。ミイラのような表皮に覆われているお前ではあるが、胃は笑えるくらいピンクでプリプリに違いなく、そこに侵入してきた霊は即刻胃液で溶かされて排泄物に混ざり、分解処理されて海へと還っていくだろう。人間は糞袋改め、成仏袋だ。私は、リサイクルによって生まれてきた魂だ。
ここから先は
4,769字
/
1画像
¥ 100
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?