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千文字(5)「Don't care, but care」


百文字日記あらため、千文字です。

いつもの5人で毎週ひとりずつ、順番にお題を決めて、皆でそのお題に対して思いついた文章を、1000文字ぴったりでnoteに投稿していきます。

収益は、百文字日記書籍化の費用に充てられます。


今回のテーマ「Don't care, but care」について。山くんが提示したテーマです。

─── この議題を大きな問題にするのはやめましょう。この法案は、可決されることで影響を受ける人たちにとっては素晴らしいものですが、それ以外の人々にとっては、何も変わらず今まで通りの日々が続くだけです。(So don't make this into a big deal. This is fantastic for the people it affects, but for the rest of us, life will go on.)

これは、ニュージーランドで同性婚を認める法律ができた2013年、当時議員だったモーリス・ウィリアムソン氏が議会で行ったスピーチの一節。


 皆、他人に関心がある。関心があるから恐れ、排除しようとする。あるべき権利があるべきように、という働きかけに同意できない人たちの背景には「余計な関心」がある。もっと世界が他者に対して、寛容に「不関心」でいることができれば。

 気にしないで、でも気にかけて。放っておいてほしいけど、忘れないでほしい。そうしたやさしさについて。


01

 そこにないものをあるように見せたり、そこにあるものをないように見せるアルバイトを始めて、そろそろ半年が経つ。文房具や雑貨の、デザインから販売までを自社で行う会社の写真部。カタログやポップ、ECサイト掲載用に自社商品を撮影するカメラマンとして働いている。実際の商品と写真には微細な色味等の違いがあり、それらを実物に近付ける作業が主な仕事だ。およそ午前中には大体の撮影業務が終了し、昼休憩を挟んで以降退勤まではひたすら画像補正をする。編集するJPEGデータのリストと商品を手渡され、黙々と嘘をつき続ける。

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