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絶対に採用してはいけないSaaSマーケターの見極め方

こんにちは。浅木レイです。

今回は、「絶対に採用してはいけないSaaSマーケターの見極め方」について書こうと思う。

背景

そもそも僕がこの記事を書こうと思った背景から書こう。

SaaS企業で(いや、別にSaaSに限らないかもしれない)マーケ人材を採用することはそんなに簡単なことではない。圧倒的に売り手市場で募集している企業の数や枠の数に対して、即戦力となれる人材はまだまだ少ない

売り手市場になるほど、当然だが企業は採用の決断を急いでしまいがちだし、採用の基準や条件を甘くしてしまいがちだ。かくいう僕だってそうだった。

ところが、やはりそれでは後々問題が発生する。面接時には気づかなかったような違和感が段々出てきて、期待していた即戦力マーケターが全く即戦力じゃなかったというケースをこれまで何度も経験してきた。

しかし、そのケースにはある程度のパターンがあることがこれまでの経験でわかってきた。

今日は、SaaS企業でマーケターの採用に取り組む皆さんが採用活動に失敗しないためのコツを伝授しようと思う。

ちなみに、今回はカルチャーフィットの見極めについては説明を省く。あくまでスキルフィット的な側面でのコツを書くというのと、広告担当やサイトディレクターなどポジションごとの話をし出すとキリがないし、それこそ企業によって要件は異なると思うので、マーケ職種全般に言える見極め要素について触れておきたい。

イケてるSaaSマーケターとは

絶対に採用してはいけないマーケターを考えるにあたって、まずはイケてるSaaSマーケターとは何かについて明らかにしなければならないだろう。

イケてるSaaSマーケター。あなたはどのような人を思い浮かべるだろうか。

僕の整理はこうだ。

ユーザーの行動と心境をリアルとデータで把握し、ユーザーに対して価値を作りそれを最適な方法で届けることができる人

これは戦略設計をするマーケティングマネージャーでも、イチ広告運用担当者、ナーチャリング担当者、セミナー担当者でも変わらない。

マーケティングはそもそも顧客に選ばれる必然性を作り、製品が売れるようにする職種だ。

顧客に選ばれる必然性を作るには顧客(ユーザー)のことを徹底的に理解しなければいけないわけで、顧客(ユーザー)を徹底的に理解するには直接顧客(ユーザー)の声を聞く必要もあれば様々なデータを見て全体感を把握する必要もある。

その上で顧客(ユーザー)が求めるものについて仮説を立てながら、何が価値になってそれをどういう手法でどういう伝え方で届ければいいかを考えることができる。

それこそがイケてるSaaSマーケターだ。「SaaS」とつける必要はないかもしれないが。

そしてこのイケてるSaaSマーケターであるためには、具体的に以下のようなスキル・素養が求められると思っている。

・ユーザー理解やコンテンツ作成など数勝負な泥臭い業務を誰よりも圧倒的にこなす実行力
・市況の全体感や共通項を見つけ出すデータリテラシーと分析力
・進化するマーケティング手法を幅広く深くキャッチするインプットスキル
・ユーザーに刺さる訴求ができる魅せ方を追求できるクリエイティブ力
・複数プロジェクトをスケジュール通りにこなせるディレクション能力

具体的にどのレベルでそういったことができるかは求める人材の要件によるだろうが、いかなるポジションであれ、こういった能力の高い人材がマーケポジションに望ましいだろう。

しかし、面接でこういう人材かどうかを見極めるのはなかなか難しいのだ

SaaSマーケターの採用でよくある落とし穴

僕が上で書いたようなことは、別に誰だってそういう人材が欲しいと思っていることだろう。しかし実際そうは上手くいかない。

僕もずっと昔からこういうことを思いながら、さらにその企業のカルチャーフィット的な見極めをしつつ、いいと思った様々な人材を採用してきた。

しかし、入社後に「あれ?」っと思う方がちょくちょく出てくる。

そしてその「あれ?」という感覚には大きく2つのパターンがあることがわかった。

1. 実行力のない机上の空論メーカー

1つ目のパターンが、データ分析は得意だし、全体感を把握してそれっぽい戦略や戦術を考えることは得意なんだけど、それを自ら推進していく実行力行動力が弱かったり、生のユーザーの声を理解してなくて机上の空論の域を出ない人材だ。

この人材はユーザーをデータとしか見ておらず、PCから手に入る情報だけでユーザー理解が完結したと勘違いしている。行動力がないので生の声を拾いにいかないのだ。

あとは妙なリスクや反対意見をそれっぽくまとめ、様々な施策をやらない理由から並べていく。結果何もかもやるのが遅い組織になっていき、PDCAが回らない

ところがこういう人材は頭が良いので面接の時に優秀に見えるのだ。今までやってきたことの合理性と成果を雄弁に語り、面接官の質問に対してもロジカルで的を射た回答をする。マネジメントレイヤーにも多く、自分は全く行動力がないのに部下が色々行動して結果が出ているから立派な職務経歴書になっていて面接で気づけないケースもある。

2. 与えられたタスクに満足する鳥籠の鳥

2つ目のパターンは、与えられたタスクにしか興味を示さない人だ。これはマーケ歴の浅いポテンシャル人材においては問題ないのかもしれないが、ベテランと呼んでも良い経験年数の人でも平気でこういう人材はいる。

このパターンは、言われたことをやる能力は高い。なので適切な人材配置をしてしっかりマネジメントをしているとワークする。

一方で、自ら今何が課題なのかを考え、それがどうやったらよくなるのかを考えることをしない。そのため全く意味のない仕事を振っても気持ちよさそうにその仕事をずっとやり続ける。

こういった人材もなかなか面接での見極めが難しい。前職でも上司などから色々言われたことを完遂しているゆえに様々な成果を出していて、いろんなことにチャレンジして成果を出せる人材に見えるからだ。

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・ロジカルで頭は良いのだが、行動力がなくてやらない理由ばかり探す人
・逆に行動力はあるんだが、自分で考えないので裏にブレーンがいないと何もしない人

実際にこういう人と会ったことはないか?採用したことはないか?今後採用しちゃいそうだと思わないか?

きっと同じような悩みを抱えている(もしくは今後かかええる人)は多いのではないかと思う。

今所属している企業でのポジションや挙げた成果、それをどのように実行したかを聞くだけではこういった人材の本質を暴くことができない。即戦力だと期待して内定を出してしまう。

・自分は手を動かさず誰かががっつり推進してくれて成果が出た
・たまたまユーザーと自分の性質が一致していて、大してユーザー理解の努力をせずとも理解できて成果が出た
・上司に言われていたことやチームメンバーが考えたことを実行していたら成果が出た

こういった人材が上記のようなことしか聞かない面接ではわからないからだ。

では、面接でどのようなことを確認すれば良いのだろう。

実行力のない机上の空論メーカーをどう見極めるか

こういう人材はそもそも、PCをカチャカチャしてGoogleアナリティクスや広告管理画面やSalesforceのデータを見て分析したり戦略を考えたりするのに憧れてマーケターになっていることが多い。

ゆえに社内外の方とコミュニケーションを取るのが億劫でそういった動きを強制されない限り全く取ろうとしないし、自分でゴリゴリ手を動かして記事を書いたり、地道な入稿作業をやったり、動画編集をしたり、といったことをあまりやらない(やっても動きが遅い)。

こういった人材でないかを見極める質問として、僕はよくこういうことを聞く(見る)。

まず、自身でSNS・ブログ記事・動画などのコンテンツ配信をしているか

自らTwitterやnoteで発信を積極的に行っていて、それなりのフォロワーやリアクションを抱えている人は大抵実行力が高い。

アフィリエイトやYouTube配信なども成果が出るまでにかなり根気強く発信を続けなければいけない取り組みだ。

こういったことを誰に強制されるわけでもなく自分自身でやっている人材は、ほぼ間違いなく「実行力のない机上の空論メーカー」ではないと考えて良い。ゆえに僕はこういう実績があるかは必ず確認する。(発信力のある人材はそれそのものが価値にもなるわけだし)

とはいえこういった発信ができている人材は一部に過ぎない。それ以外の人材は実行力がないと決めつけるわけではない。

他に見る観点としては、いかにしてユーザー理解をしているかだ。机上の空論メーカーはデータでしかユーザーを見ようとしないと言ったが、まさにそこをどうやっていたかを聞くのだ。

マーケターである以上深いユーザー理解をするのは必須だ。深いユーザー理解をするために、あなたはどのような動きをしたのか。最低でもユーザーに会いに行ったりユーザーとの商談や定例MTGに同席して直接話をしたり、ということをやっていないとマーケターとしては失格だと思う。

よくあるのが、「営業やCSからお客様についてヒアリングしながらペルソナを作りました」という回答だ。この回答しか出てこない人は黄信号だと考えてほしい。社外の人を探して声を拾うという絶対にやったほうがいい行動ができていないのだから。

マーケティングにおいて最も重要な顧客情報を二次情報でしか把握できないマーケターは、間違いなく実行力がないと思っていい。

余談だが、USJを再建された現在株式会社刀の代表をされている、日本を代表するマーケターの森岡毅さんは、山に囲まれた年金受給者のための保養施設「グリーンピア」を再建されるために、山に何日も出向いて猟師免許まで取ったという。山に囲まれた土地を生かし、最高の宿泊施設にするためには、山に生きる人の生態を理解し、山の何が魅力なのかを知るためだ。

ユーザー理解のために時間と努力を惜しまない。トップマーケターはやはり当たり前にやっているのだ。

大抵この両方で理想的な回答が出てこないマーケターは実行力にかけると判断していいと僕自身は考えている。

あとは個人だけでなく、企業の中でコンテンツマーケティングをやっていたり、SNS運用をしたり、粘り強い発信が必要な領域で自ら手を動かし成果を出した人間は実行力があるかもしれないが、ここまでくると単純に上司のマネジメント力が高かっただけだったりという可能性もあるので、見極めとしては難しい要素かもしれない。

与えられたタスクに満足する鳥籠の鳥をどう見極めるか

次に、行動力はあるものの言われたことしかやろうとせずに指示を待つ人材を見極める方法だ。

この人材は、上司の指示にしたがって行動したり、戦略を考える人材のアドバイスに従って成果を出した経験があったり、それをどういう戦略でどういう背景で行なってきたかも理解しているため、面接の時はそれなりにロジカルに語ることもできる。

しかし色々ゴリッと変えていってほしいという期待をしていたにもかかわらず、いざ入社してみたら何もやってないやん!ということになるのである。

この人材を見極めるためには、その人自身がどういうタイミングで何を考え、どう意思決定をして何をしたのかを聞いていかなければならない。

僕はこういう質問をする。

・あなたの自身の目標やKPIは何か
・その目標/KPIを達成するために取った動きの中で最もインパクトがあった施策は?
・それはなぜそういう施策を取ろうと思ったのか(背景や課題感をどのくらいの粒度で把握しているか)
・その際他にどのような選択肢を考えたのか、なぜ最終的にその動きを取ったのか(誰かのアドバイスや単なる思いつきではなく、自身でどこまで論理的に考え手法を意思決定したのか)
・その施策が上手くいったポイントや進める上で困難だったポイントは何か(その人自身が主体的に施策を実行していた生のエピソードが出てくるか)
・今振り返ってみて、その時もっと大きく速く成果を出さないといけないときは何をするか(今ゼロベースで自分で戦略や方針を考えることができるか)
・自身の目標やKPIの範囲を超えて、今全社の課題はなんだと考えているか
・そのために今どういう動きが必要で、あなた自身は何をすべきか
・過去に全社観点で目標やKPIの範囲を超えて行ったことはあるか

ここまで聞いてロジカルに答えることができれば、指示を待つ鳥籠の鳥ではない人材だと考えて良いだろう。

ポイントは「何をやったら」「どういう成果が出たのか」だけではなく、

当時どんな選択肢の中からどうやって意思決定をしたのかを聞くことで自らがいかに最適な方法を論理的に考えられるか、という部分を見極めていたり、

今振り返ってさらに良い方法を考えてもらうことで、この施策自体が本当にその人の頭で考えられて、練られたものなのかを見極めていたり、

自身の目標やKPIに捉われすぎて部分最適な動きだけになっていないかを見極めたり

ということが可能になると思う。

まとめ

以上、採用してはいけないSaaSマーケターの見極め方を解説した。

・ロジカルで頭は良いのだが、行動力がなくてやらない理由ばかり探す人
・逆に行動力はあるんだが、自分で考えないので裏にブレーンがいないと何もしない人

この2種類がマーケターの採用において最も苦労する見極めだ。ここまで書いた見極め方でぜひ行動力と自ら考えてやるべきことを探す能力を上手くさぐってみてほしい。

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