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『イシナガキクエを探しています』の考察とまとめ

去る2024年4月29日から5月17日にかけて3回にわたりテレ東で放送された『イシナガキクエを探しています』について、情報をまとめた上で少し考察してみます。ネタバレしてます。

どんな作品?

 「TXQ FICTION」第1弾と銘打って放送された、失踪人捜索番組に心霊ミステリー要素を内包したフィクションのドキュメンタリーです

 55年前に失踪した「イシナガキクエ」を探し続けた米原実次氏の遺志を継いだ捜索番組に寄せられた情報を追っていくうち、奇怪な真相があらわになっていく、という内容で、過去にテレ東で放送された『このテープ持ってないですか?』とYouTubeの『フェイクドキュメンタリーQ』シリーズを掛け合わせたような作品でした。

3話までの内容まとめ

イシナガキクエ
昭和22(1947)年8月10日生まれ
55年前(1969年)に行方不明
⇛失踪当時22歳
⇛生きていれば77歳

米原実次
享年84歳
2024年2月10日に死去
キクエ失踪当時は29歳

文字だけの捜索チラシを配っていた

家族はみんな事故死か病死
仏壇に父母、妻、娘、息子と思われる遺影

米原氏の死後、家の中に人が複数うろついている動画が寄せられた

心霊YouTuberキラフの動画
2024年2月9日に山奥の一軒家で撮影
15年前から空家
(その割に給湯器がピカピカで、蜘蛛の巣や埃がない)

封筒に入ったナンバーが振られた写真を発見
ナンバーは35まで。ナンバーなしが5枚
盗撮のような、不自然な構図もある
被写体は顔だけが歪み、ハッキリしない

上田怜歩那が見つけたビデオテープ
男2人組による撮影
地図のような紙を手に池を探してきたらしい

池に沈んでいる遺体のようなもの
遺体の胸の上にイシナガキクエの写真のようなものが乗っている
写真の顔部分に17と書かれているように見える
(男たちの動機はなに?)

(ナレーション:状況が整理でき次第みなさまにお伝えしたい)
⇛配信限定の4話に繋がった

1987年(失踪後18年)のローカル番組
匿名で番組宛に届いたビデオテープ
米原氏は当時48歳
司会者とアシスタントに写真を渡している

「35体も処理している」
「見つからないのが一番良い」
「キクエがもうこの世にいないってことを皆さんに確認してほしくてここに来ました」

住所と電話番号の書かれた紙をカメラに示す

稲垣家について
米原氏が番組中に示した住所と電話番号の所在地

米原家からだいぶ離れている

家屋の周りに大量のモノ
・オリモ式大物罠の箱が複数
・大きな体重計
・プラスティックのカゴ
・たくさんのワイヤー
・タイヤ
・動物用のケージ

軽トラと普通車が停まっている

稲垣義一が現在の家主
「一人っていうか、まあ、ひとりです(笑)」

家の中も雑然としている
・冷蔵庫のドアにリラックマなどのキャラ物が貼ってある
・玄関に女性向けデザインの傘
・児童向けのキリンモチーフの家具

稲垣乙(おと)の存在
年代は定かでないが既に故人
稲垣義一の母親で祓い屋
米原氏は1990年以降に稲垣乙に“処置”を依頼していた

「代理人を用意」とは?

ひとつの結末
2024年2月10日に米原氏の焼死体が発見された

イシナガキクエを知っている人は(残って)いない

番組終わりで安東弘樹の頭部が小刻みに揺れているように見える

そしてほんとうの結末へ

 てっきり配信版の3話で追加シーンくると思っていたものの、TVer・U-NEXTでも地上波版と同じ内容で配信され、
『これで終わってしまうのか…?』
そう思っていた2024年5月20日、公式Twitter(現X)アカウントに次の画像が投稿されました。

カーブミラーに姿が映っていない???

 そして2024年5月22日、4話の限定配信が発表されました。

4話の内容まとめ

 稲垣乙の遺品に複数の8ミリとビデオのテープが見つかり、稲垣義一から番組に提供された。

1975年の映像(A)
複数人の男が布に包まれた遺体らしきものを運んでいる。米原実次と稲垣乙らしき姿もある。遺体の胸の上にキクエの写真。
ナンバーは15
遺体を山中に埋めた

1979年の映像
小屋の中で若い女を布で包んでいる
写真ナンバーは19

1982年の映像
写真のナンバーは26
やはり山中に埋めている

1984年の映像
小屋の中で誰かを殺害している
女性の呻き声のような音声

1985年の映像
包んだ布に紋様が見て取れる
呪術的な紋様
写真のナンバーは33
雰囲気的に米原氏の自宅周辺という印象

1975年の映像(B)
写真のナンバーは17 
例の池に遺棄

キクエ死亡判明後の追加取材
例の池も写真があった家も、米原家からほど近い事が判明した

写真の家の所有者は米原実次だった

取材班が写真の家と無人の米原家を再取材

書斎にあった写真は、キラフ氏が元の場所に戻したはずだったが失くなっていた

ナンバーなしの写真
改めてキラフ氏の動画を解析
5枚とも、厳重に拘束されエクトプラズム的なものを出す髪の長い女性の姿があった

蔵書のタイトル
霊界物語
新霊交思想の研究
透視 霊能秘傳書
※いずれも実在の書籍だった

米原実次は自殺だったのか
追加の遺品:米原氏から稲垣乙への手紙

もう そこにはありませんでした。
追伸。(ボカシの入った箇所)をご存知でしょうか?
稲垣様がもし無理であれば今回は
そちらに処理を頼もうと思っていますが
信用できるか 分かりません。
(行全体にボカシの入った箇所)
(行全体にボカシの入った箇所)
稲垣様の見解をお聞きしたいです。
 米原 実次

米原実次から稲垣乙に宛てた手紙

手紙に血のようなシミが多数ついている

2話で流れた、例の池を捜索した2人組の映像のプレイバック
1話で流れた、複数の人物が米原家に侵入している動画のプレイバック
米原氏の遺体発見現場に残された、布のような燃え滓
キラフ氏の撮影中(つまり2024年の2月9日深夜から2月10日未明にかけて)に米原氏の焼死現場と思われる地点に火が上がっていた。

米原家の納屋の映像
無数の御札を貼られた納屋
・馬頭観世音の御札が2箇所
・金比羅山と読める御札が1箇所

壊れた封印の壺。骨壺に見える
地面に叩きつけたのか、遺灰様の粉が骨壺から溢れている

遺灰の中に折り畳まれた写真が1枚
写真に若き日の米原氏とキクエらしき女
三面鏡に2人を映して撮影しているが、向かって右の鏡面は角度が合っていない
(ここで4話終了)

要点だけ考察

イシナガキクエは何者だったのか
 空家にあったナンバーなしの写真を生前のキクエと仮定すると、いわゆる霊媒師だったのでしょう。かつて、霊媒師が拘束された状態でエクトプラズムを出し、そこに霊魂を宿すという"降霊術"が行われていました。
 完全に想像の域を超えませんが、米原氏はキクエの霊能力に目をつけ、降霊術をやらせることで金儲けしていたのかも知れません。従わせる方法として、色恋を用いていた証があの遺灰に埋もれた写真なのかも。
 しかし、米原氏が29歳の時にキクエは死亡しています。なぜなのか。米原氏には妻子があった形跡が、仏壇の遺影に示されていました。もしかすると、キクエとは最終的に不倫のような形になっていたのではないでしょうか。そして揉めることになり、キクエが自殺してしまったか、あるいは米原氏が口封じのために殺害してしまった…。1話に「すぐ警察に届け出た」というアナウンスがありましたが、裏付けがなく信憑性に欠けます。「すぐ」がいつだったんでしょうね。
 いずれにしろ、そこで生じた怨念がキクエの霊能力と結びつき、米原氏の周囲に度々現れるようになったのかもしれません。ナンバー入りの写真は顔だけが歪んでおり、Xにポストされた写真ではカーブミラーに映っていません。
 米原氏の捜索ポスターが文字だけだったのは、写真の顔が不気味に歪むせいだったと考えられます。また「会話:できない」は、霊魂なので、と考えると得心がいきます。

そして儀式がはじまる
 米原氏は、キクエの怨念から逃れる術を探しました。別宅の蔵書なんかは、その時に読んでいたのかも知れませんし、降霊術の"仕掛け"のためだったのかも知れませんね。ともあれ、やがて祓い屋である稲垣乙を見つけます。
 稲垣乙がどこまで知っていたのかは分かりませんが、おそらく生きた人間を"代理人"としてキクエの霊を降ろし、憑依させた状態で殺害し、呪文の布で包で遺棄する、という儀式でキクエの怨念を封じようとしたのではないでしょうか。
 この頃に骨壺への封印と霊を宥めるための写真の封入、納屋のドア内側に御札を貼る、という二重の封印を完成させたものと思います。すでに世に出てしまった分の怨念は代理人で封じる一方、それ以上に拡散しないように封印したのです。通常、魔除けの札は外からの侵入を防ぐためのものですが、どうにも外に出さないための封印という気がしてなりません。
 米原氏所有の別宅については、降霊術や儀式の現場だったものと考えられます。15年ほど空き家状態だった、という割にはホコリが溜まっておらず、給湯器も新品同様でした。生活はしていないものの、定期的に人が出入りしていたものと考えています。稲垣乙の死去もあり、ここ15年ほどは儀式を行っていなかった可能性もありますね。
 そうして米原氏は合計35体ものキクエを始末する代償として、うまいこと都合できる"代理人"が見つからず、最終的には家族まで犠牲にしたのでしょう。また、儀式には米原氏と稲垣乙以外に複数の男性の姿を確認できます。どちらかの家族なのか、教団的な組織があったのかは不明ですが、キクエの呪いの存在を知っている人間は複数いた、という事になると思います。
 しかし、死の間際まで米原氏は毎日をキクエ探しに費やしていました。「呪いがこの世にもう存在しない」ことを確信するのは、現実的には不可能です。ずっと怯え続けていたのか、あるいは米原氏がキクエを発見している状態で、"祓える"霊能者を探していたのか。今となっては分かりません…。

米原実次は自殺だったのか
 
これに関しては、まあまあ明確にメッセージが込められていたように思います。
 まず、米原氏が稲垣乙以外に頼ろうとしていた誰か、もしくは何かの存在があります。ボカシのために明確には分かりませんが、おそらく何かしらの霊的儀式を執り行う集団だったものと推察できます。稲垣乙からの見解が届かなかったか、あるいは届くまで待てずに依頼してしまったのか、いずれにしろ、その"誰か"にキクエの存在を知られてしまったのです。
 次に、例の池を捜索していた2人組の男について。4話で恣意的に示された男たちの顔をよく見ると、向かって左側の男の顔が稲垣義一に似ているように思いました。これは考えすぎかも知れませんが、義一は米原氏の敵側についていたのではないでしょうか。手紙が届いたのは稲垣乙の死後すぐで、内容を見た義一が"誰か"に接触してしまった、とか。
 なお、4話で公開された手紙は複数枚あるうちの最後1枚だけだと思われます。冒頭の1行目が唐突すぎて、何を指しているのかさえ分かりません。おそらく、前段の説明が少なくとも1枚は別に存在しているはずです。番組側が意図的に見せなかったのか、稲垣義一が送付の際に抜き取ったのか。紛失の可能性は低いでしょうね。
 ともかく、その"誰か"たちはキクエを探しているようです。わざわざ池に潜って撮影している点からも、その意向を窺えます。キクエの憑依体の遺物を呪物として利用できるのかも知れません。
 やがて、"誰か"は米原家の納屋に目をつけます。撮影班が取材したときには窓の鍵がかかっていない、という不自然さがありました。封印の間が未施錠なんてあり得ません。遺灰や写真が残されていることから、封印を解くことだけが目的だったのでしょう。例えば、2月9日夜に米原氏を殺害して布に包み、現場まで運んで燃やしたのかも知れません。後日家探ししていた集団が鍵を発見し、納屋に入って封印を解き、また鍵をかけて去り、別宅に侵入し、写真を持ち去った。窓は…入った直後の換気で開けて、鍵をかけ忘れたとか?(雑すぎる

その他、細かい不明点
・なぜ、例の池のそばにビデオカメラが放棄されていたのか?
呪物の獲得には成功したものの、すぐに呪いが発動してしまい、慌ててカメラを投げ捨てて逃げ出したのか

・稲垣義一の正体は?
自宅に置いてあったものからは、大型の野生動物の狩猟を生業としているようでした。鹿や猪などは、血肉を捧げることもできるので、何かの隠喩かも知れませんね

・ローカル番組の映像の送り主は誰?
匿名なので知りようもありませんが、番組を知った人間が、キクエの死亡を印象付けるためと、稲垣乙に辿り着かせるために送りつけてきた、と考えるのが自然です。これも稲垣義一によるものか…

最後に

 心霊ホラーのようでありながら、最後には人間の怖さみたいなものを醸し出してきて、幾重にも重なった恐怖が内包された作品でした。これを突然見ることになったひと(ほとんどいないでしょうが)なんかは、何が起こっているのか分からないまま時が過ぎてしまったのではないでしょうか。
 しかし、何度も見返すことで浮かび上がってくる不気味さ、得体の知れない何かが迫ってくる恐怖、後日配信限定で公開された真実など、視聴者を虜にしてしまう要素が満載でした。メ~テレの『心霊マスターテープ』みたいに、「TXQ FICTION」も名シリーズになるといいですね。今後も非常に楽しみです。(了)

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