見出し画像

[2018年11月7日水曜日]奇術師の物語

 物語を書く作家さんは奇術を操る奇術師です。
 例えば、スティーヴン・キングさんの『トム・ゴードンに恋した少女』。
 この物語のあらすじを見れば、きっと読者さんは自分だけの『トム・ゴードン』を想像するでしょう。
 その瞬間、読者は作家に変わります。
 そんな奇術を巧みに操るのが、物語の作家さんだと思います。

テツガクちゃん
 気づいてしまいました! 私!
 物語を書く作家さんは奇術師であることに!


肯定
 なんとなく、その気持ちわかるけど。
 テツガクちゃんはどんな奇術を見たの?


テツガクちゃん
 私が最近見た奇術はこれです!
 スティーヴン・キングさんの『トム・ゴードンに恋した少女』という物語です!

 簡単なあらすじを紹介しますね。

 これは深い森で迷子になった少女の物語です。
 一人で森の中に迷ってしまったという大きな問題と、少女が抱える個人的な問題。離婚した両親、母と兄の争いなど、年頃の子供が持つ悩み。
 その二つの問題と向き合う少女。
 その側には、憧れの『トム・ゴードン』という野球選手。
 彼は少女にしか見えません。少女の空想の中の存在です。
 その憧れの存在と共に、この大一番の試合を戦い抜く。

 そんな物語です。
 とても面白そうな物語だと思いませんか!?


肯定
 思います!
 僕もこの少女と同じことをよくしたよ。
 憧れの人とか、好きなアニメのキャラクターとかを空想の世界に描いてさ。
 正直、今も変わりませんけどね。

 きっと、誰だって経験があるんじゃないかな?
 だから、凄く見たくなる物語だと思うよ。


テツガクちゃん
 そうですよね!
 ですが私、知っているんです。 
 この『面白そう!』と思う、ワクワクした気持ちは、今この瞬間が一番強いんです。
 
 まだ私は、この物語を読んでいません。
 あらすじを見ただけです。
 
 ここから本編を読み進めると、徐々に私の中の『トム・ゴードン』が消えていくのです。
 今、この物語を知らない、この瞬間が私にとって一番『トム・ゴードン』が近くにいるんです。
 物語を読み進めるうちに私の空想の物語は、徐々に作者の物語に変わっていきます。

 決して、作者さんが書いた物語がつまらない、というわけではありません。
 ただ、あらすじだけを見た状態が、自分の空想が一番近くにある状態なんです。
 そして、その時のワクワク感はとても大きなものです。


肯定
 なるほど!
 その気持ちわかるよ!
 知らないからこそ自由に空想できるし、あらすじだけを見た状態が一番自由なのかもしれないね!

 映画もそれを観る瞬間が一番楽しかったり。
 目が離せない時に感じている気持ちと、観る前に好きに空想している時の気持ちって違うよね。
 
 そして、どちらかというと、空想している時の方がワクワクしているのかも。


テツガクちゃん
 そんなワクワクを届ける物語の作家さんは奇術師なんです! 

 ですが、ただの奇術師ではありません。
 もう一つ、素晴らしいものを届けます。
 それは想像力です。

 作家さん達は、誰もが持つ作家の幻影を読者に見せます。
 読者があらすじを読んだ時に、様々な物語の幻影を読者に想像させます。
 読者を作家に変える。そんな奇術を操るんです!

 人をワクワクさせ、人を作家に変える。
 作家さんはそんな奇術を巧みに操る偉大な奇術師です!
 本当に凄いです!

 そんな秘密が隠された『トム・ゴードンに恋した少女』。
 いつか読んでみたい、と思います。
 もう少しだけ、私の『トム・ゴードン』との試合を楽しんでから。


関連の話題
『真実に近づこうとすると、真実は離れていく』
『はっきりとした夢』
『カオス理論から日々の行いを考えよう』
『思い込みは……。』
『人は誰しも魔法使い』
『物語に必要なもの』
『影響力は0ではない』
『海を見たことない人が描いた海の絵』
『テツガクちゃんと肯定一覧』


それでは、また次の機会にお会いしましょう。



https://osamura556.blogspot.com/2018/11/blog-post_7.html




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?