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ユーズド

コスプレ衣装や備品等を貸し出す商売をしている、浜田さん。
彼の仕事は、大々的には書いていないが24時間対応をしていた。
深夜の収録などにも贔屓にしてもらっているため、いつでも倉庫に行けるように車を用意している。

この日は、26時頃に収録で使いたいと急な依頼が入った。
すでに時間は24時半。
倉庫での受け渡しだったが、時間があまりない。
彼は慌てて車に走った。
しかし、ドアが開かない。
鍵はオートキーで、近付けば解錠されているはず。
時間もないので確認もせずに鍵を鍵穴に突っ込んだ。

ジャリッ

砂をすり潰すような感触が鍵越しに手に伝わる。
だが、ドアは異常なく開いた。
乗り込むと、ハンドルが砂っぽい。
座席シートもなぜかジャリジャリとする。
足元を見ると、海辺にいったかのように白い砂が落ちていた。
浜田さんには海に行った覚えも、砂を扱った覚えもない。
「砂……なんて使ったか?」
車を走らせ、なにかの備品についていたのだろうかと考えているうちに、倉庫近くまでやってきた。
軽くブレーキを踏もうとするが、踏み込めない。
慌てて下を見ると、子供の腕が挟まっていた。

「シャベルが無いよう……」

その白い腕の奥から、一言。
急にブレーキが軽くなる。
切り裂くような音。衝突音。
倉庫の駐車場にあるガードレールに、車がぶつかった。

「浜田さん! 大丈夫ですか!」
すでに待機していた依頼主が走ってくる。
「あ、あぁ……怪我はないよ。すぐ品物渡すからな。それから警察でも呼ぶわ」
「え、商品はもう用意して頂いてあったんで大丈夫ですよ」
依頼主の手には、骨壷と砂遊びセットがあった。
「再現Vでどうしても必要だったのに依頼忘れてて……こんな事になって本当にすみません。骨壷なんてドンキじゃ売ってなくて……」
「……そうか。気にするな。ほら、現場に行きな」

それから、浜田さんは中古品を商品として買い集めるのをやめた。
珍しい貸出品もあると評判だったが、それまで使っていた中古品はすべて処分したそうだ。

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