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雪遊び

新年あけましておめでとうございます。

頬が火照るほどに暑い部屋にいる。
長野に帰省していて、外はうっすらと雪。
厚いカーテンに、石油ストーブ。こたつとみかん。それに半纏。
室内で寒気を感じたくないという、強い意志が感じられる。
時々、幻想が横をかすめる。
この家のどこにでも。そこかしこに。
思い出。
気付いたら彼らはほどけるように消えてしまうから。
気付かないフリをして、青い自分の感情を眺めた。

また1年遠くなる。
また1年忘れていく。

そして、もうこの家には祖母しか住んでいない。
私の家庭は少し複雑で、ずっと祖父母に育てられた。
叔父叔母に囲まれて、沢山の思いを抱えて成長した。
時間の経過と共に叔父叔母、私は家を出た。
現在、祖父は亡くなったし、家はボロボロ。

また1年近くなる。

思い出たちとの別れ。場所との離別。
しゅんしゅんとヤカンが鳴いても、珈琲を飲む祖父はいない。
賑やかな食卓もない。
年々枯れていく家族と自分。
ひとり、増え。
ひとり、消え。
根雪のように固くなった記憶は、そのうち解放されて地面に吸い込まれていくのだろう。
いつかは消えゆく家のあちらこちらに佇んでみると。
歴史の隙間から幻想たちが動き出す。

帰省というのは厄介だ。
何をしても新しくない。
帰省というのは厄介だ。
何をしてももの悲しい。

家族に会うというのは、嬉しい。

何もわかってくれなかったけれど、私もわからなかった。

様々な想いが積もる。
外では、粉雪がまた降り出していた。

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