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記憶の紙魚

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雨森が集めた怪談。 こっそり怪談イベントの感想も。 ※朗読や語り利用されたい方はご連絡ください。 内容の肉付け含め相談OK。勉強中のため無償です。
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#祖父

重奏打

DIYにはまっているという誠司さん。 きっかけは祖父の日曜大工だそうだ。 彼の祖父は、定年退職してから毎日のように家の改造やら小さい家具を作っていた。 そして、作業場にこもる時は「誠司もおいで」と必ず誘ってくれたそうだ。 幼い誠司さんは作業場で端材を組み立てて遊んだり、祖父の手伝いをした。 しかし、稀に作業場に入らずに家の中で遊んでいることもあった。 そのような時は家に響くトンカチの音がBGMのようになっていたという。 そのトンカチの音が二重に聞こえた日があった。 祖母が

祖父への確認

少し泣きながら、この話をしようと思う。 私の祖父が亡くなった後の話だ。 うちの家庭は少し複雑で、私は祖父母に育てられた。 2人とも若々しく『おじいちゃんとおばあちゃん』というよりは『ヤクザとその情婦』のような出で立ちだった。 昭和の無口な男を絵に書いたような祖父。 髪型はアイパー。首に金ネックレス、指にオパールのリング。それにグラサンと煙草。 年中草履で黒ずくめ。 そんな強面の祖父は非常に孫煩悩だった。 2年前の夏。 腹痛に倒れて検査入院の結果、大腸癌が見つかった。 抗が