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記憶の紙魚

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雨森が集めた怪談。 こっそり怪談イベントの感想も。 ※朗読や語り利用されたい方はご連絡ください。 内容の肉付け含め相談OK。勉強中のため無償です。
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#神棚

祀られる快楽犯

晃久さんの実家には大きい神棚がある。 襖二枚分程の幅で、造りも神社の一部を切り取ったかのように凝っている。 飴色になった木が物の古さを表していた。 神棚の中央には御札と古い鉋(カンナ)があった。 父親は毎朝水を取り換え、鉋を紙で拭き、手を合わせて深く一礼する。 晃久さんはそれが当たり前のものだと思っていた。 だが、友人の家などで見ると神棚や御札はあっても鉋はない。 最近になって、父親に尋ねてみたそうだ。 「なんで神棚に鉋なんて置いてんの?」 「気付いたか。そうだなぁ。お前も

退屈紛れの神舞

麻美さんの小学校は城址跡にほど近く、いつもそこで友人と遊んでいたそうだ。 天守閣や日本庭園がしっかりと残るこの城、敷地の中には神社があった。 とても古く、ささくれや白く乾いた木材が目立ち、賽銭箱さえボロボロだったという。 この日はかくれんぼをしていた。 麻美さんは真っ先に神社を目指した。 ここは拝殿と舞殿がひとつになっており、その床下は子供が忍び込む程度の隙間がある。 常駐する人間もおらず、隠れるにはもってこいの場所だった。 神社に到着すると、背の小さい男性が舞殿で舞って