人口爆発の背景にあるもの【肥料の歴史】vol.1

こんばんは!毎日投稿78日目になりました。今日も頑張っていきましょう!

異常な人口爆発

   20世紀初頭、地球上の全人口は16億人でした。しかし、1950年には25億人、20世紀末には60億人に達し、2021年現在80億人に迫っています。

日本の人口は江戸時代には3000万人程度でしたが、現在はその約4倍にまで膨れ上がっています。
 
   600~700万年前に人類が誕生した後、アフリカに起源を持つをされる人類の一種ホモサピエンスが世界に広まったのは1万~1万2000年前ですが、その当時の世界人口は500~800万人と推定されています。これほどの顕著な人口の増加は初めてです。
 
   実はこの急激な人口増加の背景には明確な理由があるのです。それは理系の受験生なら知っているであろう「空気から肥料を取り出す技術」、すなわちあのハーバーボッシュ法の登場です。

日本の資源の限界

   日本は江戸時代、鎖国により外国との貿易を行わなかったことで、資源的にも閉鎖的な社会でした。必要な資源は国内から入手し、それによって社会を成立させていたたのです。道端の家畜の糞ですら、公共的に拾う人がいなくても農地の貴重な肥料として人々が争って持ち帰るというような状態でした。つまり、極めて完璧に近いリサイクル社会だったと言うことが出来ます。
 
   また、これを可能にしていたのは勤勉な日本人の国民性でもありました。3000万人もの人々が戦争なくして生活するためには、可能な限り土地を開墾し、肥料を活用する必要があったわけです。
 
   しかしそれでも、江戸時代末期には森林資源の減少が見られたと言います。つまり、日本という国で元から天然に存在する資源を活用しても、3000万人という人数が養える限界だったわけです。
 
   では、一体何が1億2000万人という人々の生活を可能にしたのでしょうか。

肥料は歴史を動かしてきた

   16世紀に南米ペルーに位置したインカ帝国がスペイン人によって滅ぼされる前、インカ帝国のケチュア族はグアノという名の鳥糞石、つまり鳥の糞が化石化したものを金と並んで神からの贈り物だと考えました。その理由は、このグアノが痩せた土地を完全によみがえらせてしまうほど肥料として非常に優れていて、主要な食糧だったトウモロコシの収穫量に大きく貢献したからです。
 
   インカ帝国を滅ぼしたスペイン人は当初、このグアノの存在に気づきませんでしたが、19世紀になってその存在は欧米にも知れ渡ります。するとすぐさまこのグアノはその販売が当時ペルー政府の国家予算の4分の3を占めるほどの主要産業になります。まさに魔法の肥料です。
 
   しかし、その大きな存在に対して他の国も黙ってみているわけにはいきません。このような資源はどこの国でも欲しいに決まっています。そこで、かつてのペルーの宗主国スペインと、ペルー、そして隣国チリの間で、グアノを採掘できるチンチャ諸島の領有を巡って争奪戦”グアノ戦争”が始まります。
 
   しかし、そうこうしているうちに、チンチャ諸島のグアノは20年ほどで根こそぎ採られてしまい、グアノに依存していた社会は一気に危機に瀕してしまいます。

新たな光「チリ硝石」 

   そんな中、その後19世紀半ば、またしても南米のペルー、ボリビア、チリあたりに位置するアタカマ砂漠で採れるチリ硝石という資源が、グアノには劣るにしても肥料として十分有用だとして一気に注目を集めます。しかもチリ硝石はグアノと比にならないほどの埋蔵量を誇り、1900年には世界の肥料の3分の2をチリ硝石が占めるほど一気に広まっていきます。
 
   更に極めつけは、硝石から作られるニトログリセリンという物質が爆薬(ダイナマイトなど)の原料として活躍し、軍事産業への転用が可能であることから、需要が急増していきます。
 
   こんな資源の採取地はどの国も、ましてや戦時下においては、喉から手が出るほどに欲しています。そして案の定、1879年、その地を巡ってペルー・ボリビアvsチリの”硝石戦争”が勃発します。その結果、チリが勝利し、かつて太平洋に接する土地を有していたボリビアはその地を奪われ、内陸へと追いやられてしまいます。

クルックス卿の歴史的演説

   するとやがて、そうして国々が硝石を渇望して奪い合っている状態に警鐘を鳴らす人物が現れます。当時一流の科学者でもあったイギリスのクルックス卿です。彼は1898年、英国科学アカデミー会長就任演説の場を利用して、後に「歴史的演説」とされるスピーチを行います。

歴史的演説と続きはこちらから⬇️⬇️

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