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犬猫の健康診断シーズンが到来

【犬猫の健康診断を受診される方に向け、健康診断の各検査のまとめです。】

犬猫は、人の4倍の速さで年をとると言われているので、病気の進行も早く感じます。ざっくり1年で4歳、3ヶ月に1回の健康診断が理想的なんだろうと思います。
まずは、現状を知るために、健康診断という名のスクリーニング検査を受けましょう。

「 X線・血液・超音波・尿・便・ホルモン検査 」で一般的な病気はほぼ見つかると思って、見つけましょう!

確定診断や現状の把握のために行う検査の概要は下記になります。

心臓疾患なら→聴診+レントゲン検査+超音波検査+血圧測定+心電図検査+血液検査

皮膚疾患なら→視診+細胞診+血液検査+培養検査+血液検査+ホルモン検査+病理検査+アレルギー検査

肝臓疾患なら→血液検査+超音波検査+細胞診+病理検査+造影CT

腎臓疾患なら→血液検査+尿検査+血圧測定+超音波検査+細胞診+造影CT

副腎疾患なら→超音波検査+血液検査+ホルモン検査+血圧測定

甲状腺疾患なら→超音波検査+血液検査+ホルモン検査

神経疾患なら→神経学的検査+血液検査+超音波検査+レントゲン検査+血圧測定+尿検査+MRI+CT+電気生理学的検査+CSF+組織生検

などなど

どんな病気でも複数の検査結果を総合して初めて診断に繋がります。まずは、X線検査 血液検査 超音波検査 尿検査 便検査 ホルモン検査である程度の病気のあるなしは判断できます。その上で、可能性として探求する必要がある病状が見つかればさらに病気の種類を絞り込む検査を進めていくのが良い流れと考えます。


ここからは、各検査についての考え所、一見健康そうな動物でよく見つかる疾患を書いていきます。では。


X線検査

 異常の有無を見るための画像の検査です。肺、心臓の大きさ、骨格の評価に最も使います。肺野に異常があればCT検査でより詳しく調べることもあります。心臓の大きさは、一般的な基準のサイズはあるのですが、いかんせん、動いているものをぱしゃっと瞬間を撮影しているだけなのでレントゲン検査での計測は正確ではありません。異常がありそうであれば超音波検査で精査をします。骨格は、身体検査や整形学的検査で異常が見られた場合にピンポイントで検査をすると異常の検出率が上がります。闇雲な撮影は被曝量が増えるので、健康診断では胸部、腹部を撮影して写っている範囲で評価することが多いです。

超音波検査

腹部超音波検査は、腹部疾患の検出において最重要検査です。レントゲン検査でも、血液検査でも見つけられない異常が見つかります。レントゲン検査同様、画像の検査かつ「主観的」な検査になります。大きい、小さい、ある、ない、白い、黒いなど。さらなる評価には、他の検査との総合判断となります。腹部の腫瘤は超音波検査が検出するのに適しています。心血管系の評価は心臓超音波検査が力を発揮します。

尿検査

 泌尿器の状態を把握する為の検査です。炎症、結晶、細菌の有無。尿比重を見ます。外注検査で、尿蛋白質/クレアチニン比を見ておきたいところ。
検査の為の尿サンプルの取り方によって評価方法が変わります。
1自然排尿サンプル
 膀胱から遠位の泌尿器を通過して出てきた尿のため、膀胱、尿道、包皮内(オス)、陰部内(メス)の情報も入った尿として考える。一度床などにした尿を集めた場合は、環境中のゴミや細菌の情報も入っている。
2カテーテル採尿サンプル
 衛生的にカテーテル挿入された場合、膀胱と尿道内の情報として評価します。
3膀胱穿刺サンプル
 純粋に膀胱のみの情報として評価します。穿刺の刺激によって血液が混入することが稀にあります。

腎臓病のステージングはIRISでの評価方法でします。
http://www.iris-kidney.com/index.html

便検査

直接法、浮遊法で観察します。寄生虫は、いつどういった経路で感染するかわかりませんので、定期的な検査や駆虫は必要です。人にも感染する寄生虫がいるので気をつけましょう。

フィラリアの成虫検査 /ミクロフィラリア検査

フィラリアは、蚊の吸血によって犬の体内に侵入し、約6~7カ月で幼虫から成虫に成長します。フィラリアが成虫となり、犬の肺動脈に寄生すると、深刻な症状を起こすようになります。(バイエルのHPより引用)
https://www.bayer-pet.jp/pet/library/parasite/filaria/filaria01.html
成虫の検査は、「成虫」でないと検出されません。数が少なくても検出されないことがあります。血液中のフィラリア、ミクロフィラリアを直接顕微鏡下で検出した場合は成虫がいるという判断になります。いづれも、陰性ならOK。

血液検査

血球検査は、骨髄で作られる3種類の細胞の数を検査する検査です。赤血球・白血球・血小板の3種類。極端に多い少ない、2種類以上が少ないかどうか見ています。
生化学検査は、体内のタンパク質や酵素などを測定する検査です。特定の臓器の疾患を示すものやいろいろな臓器に関与しているものなどあります。特異性や感度に気をつけながら読み解きます。Alb TP GPT GOT ALP GGT NH3 T-bil T-cho TG Glu BUN Cre v-lip cCRP 富士ドライケムを使っているならこの辺りを調べます。肝臓胆管系、腎臓、膵臓、全身性炎症、代謝性疾患のスクリーニングになります。空腹時と食後で変化のある項目もありますので、食事と検査の時間の関係も考慮して判断します。

ホルモン検査

多くの動物病院は、検査センターへ外注することで測定しています。甲状腺関連として、T4 fT4 TSH 副腎関連としてコルチゾール(刺激前、刺激後)を調べておきたいです。これらは病気をしている時は生理的な反応として増減したりしますので、病気の時に測定すると判断に困ることがあります。健康診断として一度測っておき、その子の基準値としておくのも良いと考えます。甲状腺関連の検査項目は、外注先の検査センター毎に基準値や感度や特異性の違いがありますので時々変更します。

外注検査追加

腎臓病のスクリーニングにSDMAは追加しておきたいところ。

http://www.idexx.co.jp/smallanimal/reference-laboratories/sdma-resources.html

どんな病気の可能性を考えているか

健康診断で見つけておきたい病気、つまり、一見健康そうだが、動物病院で検査したらよく見つかる病気は下記。

脾臓腫瘤ー血腫・過形成・悪性腫瘍などありますが、いづれの場合も「破裂」したら循環血液量減少性ショック起こし容態が急変するリスク大。破裂して病院に来るパターンよくあります。犬。

その他腹腔内腫瘤ー卵巣、子宮、膀胱、腎臓、胃、腸、膵臓、肝臓、副腎、リンパ節。超音波検査で偶発的に見つかることがあります。一般的に、悪性腫瘍は3ヶ月以内、犬猫時間に換算すると1年以内に全身播種し命に関わります。年一回の検診では拾いきれない場合があるので、3ヶ月毎が理想的。

膀胱結石ー犬の場合、マーキングなのか頻尿なのか判断が難しい場合があり、検診で見つかり、治療に入るケースも多い。

肝臓疾患ー肝臓はよほど悪化しない限りおもてに症状が出ない臓器です。超音波検査で構造異常があるかどうか、血液検査で肝障害や肝機能障害があるかどうか。お腹の2/3程が肝臓腫瘍に占拠されていても「最近、ちょっと太ってきたんですよ、よく食べますよ、食べ過ぎ?」と問診時お話しされるくらい、症状が出ない場合もあります。

胆嚢疾患ー胆嚢粘液嚢腫の予備軍はよく見かけます。治療を進めても改善ない場合は進行して胆管閉塞リスクが高まる場合は外科介入して行きます。閉塞や破裂をすると、全身状態が急激に悪化します。

心臓疾患ー心臓疾患は、無治療で、進行することはあっても治ることはありません。僧帽弁閉鎖不全症に対する弁形成術など一部に根治が望める治療方法はありますが、多くの場合、治療をしても治るものではなく、「付き合う」病気となります。ただし、早期発見早期治療で、5年生存率に変化がありますので、積極的に検査治療を勧めます。実際に、薬飲まないと直ちに心不全症状が起きる場合に関しては、投薬必須です。逆に、心不全症状がない場合は、投薬により、表立って大きな変化が見られないので、治療しないという選択をされる方もいます。その場合は、病状の変化を定期検診で確認し、投薬のタイミングを逃さないようにしましょう。

腎臓ー多飲多尿が症状ですが、実際、日常生活の中で、飲水量を気ににする事とかないと思うので、検査で異常が見つかる場合があります。特に高齢猫。

胸腔内腫瘤ーレントゲンで偶発的に見つかることがある。細胞診、CT検査、外科的治療など進めます。

重度の歯周病ー動物は自ら歯磨きしませんので、歯石がつきやすく、放置しておくと歯肉炎を起こします。歯磨きしましょう。人だとほぼありえないですが、幅抜けるくらいまで進行していることもあります。自宅では見ないので病院で指摘されて初めて気がつく場合もあります。

高血圧症ー計らないとわからない病気。網膜剥離、心臓病、腎臓病、甲状腺疾患、副腎疾患などの検査のために調べます。高すぎたら下げます。

甲状腺機能亢進症/低下症ー 「高齢だけど元気一杯です」「高齢なのでおっとりです」ではなく病気の可能性あり。

徐脈ー興奮すれば心拍数が増えます。病院にきた時点である程度興奮している場合が多く、ある程度の心拍数であることが普通。病院でも安静時の心拍数の場合、「すごく落ち着いていますね〜物怖じしないんですね〜すごーい」と言っている場合ではなく、ちゃんと心電図検査をしておく。伝導障害からの徐脈であり、治療対象である事も結構あります。最終手段は心臓ペースメーカー設置。年に数件、内服治療で管理できなくなり、ペースメーカー適応になる症例あります。

まとめ

わずか1時間ほどの診察の中でざっと病気のスクリーニングをするのが健康診断。ちょっと調子悪そうな場合や、なかなか治らない病気の場合も、上記スクリーニングは行います。元気だし、病院年2回くらいしか行かないし、という方が健康診断の対象になるかと思います。春先は、フィラリア予防やワクチンなどで病院へ足を運ぶことがあるかと思います。全国各地、津々浦々。動物病院で健康診断受ける際の参考になればと思います。



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