COVID-19へのCT検査の診断能にはpublication biasが存在する (4月16日)

COVID-19に対するCTの感度は9割超えとかなり高い、と報告されています。
中国において、一時期、CTでCOVID-19陽性とするworkflowがあった所から、この感度の高さは広く知られています。

しかし、patient inclusionへのbiasがあり、診断能の過大評価されているのでは?とされています。(実臨床ではこれが理解された上で診療が行われていますと推定しています)

また、文末に述べますが、症状発現時期によりCT所見の感度が異なる事も実臨床では大きなポイントとなると思われます。

UCSFの放射線科からのcommentary及びACRのreview

過去のCOVID-19に対する感度・特異度については、patient inclusionへのbiasがあり、過大評価されているのでは?とのcommentaryが出ています。

Chest Computed Tomography for Detection of COVID-19: Don't Rush the Science | Annals of Internal Medicine | American College of Physicians
https://bre.is/7JF4VvaB
(4月8日)


これを補強する文献として、American congress RadiologyからCOVID-19に対するCT適応についてのreviewが昨日(4月16日)にpublishされました。


Chest CT and Coronavirus Disease (COVID-19): A Critical Review of the Literature to Date : American Journal of Roentgenology : Ahead of Print (AJR)
https://www.ajronline.org/doi/full/10.2214/AJR.20.23202


ACRは3月22日付けのrecommendationで

The findings on chest imaging in COVID-19 are not specific and overlap with other infections, including influenza, H1N1 [influenza], [severe acute respiratory syndrome], and [Middle East respiratory syndrome]” and “CT should not be used to screen for or as a first-line test to diagnose COVID-19.

としており、COVID-19に対して、何でもかんでもCT利用をする事に付いて反対の立場を取っており、少しコンサバな所があります。

ACR Recommendations for the use of Chest Radiography and Computed Tomography (CT) for Suspected COVID-19 Infection | American College of Radiology
https://www.acr.org/Advocacy-and-Economics/ACR-Position-Statements/Recommendations-for-Chest-Radiography-and-CT-for-Suspected-COVID19-Infection

Reviewのsummary

このreviewの中ではSensitivityとSpecificityについて、簡単に文献reviewをしています。
CT検査の感度の高さについて初期に報告されたのがFangらの51症例のPCR陽性例についてCTの診断能を検討した論文(2月19日)です。

Sensitivity of Chest CT for COVID-19: Comparison to RT-PCR | Radiology
https://pubs.rsna.org/doi/full/10.1148/radiol.2020200432

この論文ではCTの感度は98%と高いのですが、inclusion criteriaの不手際を指摘しています。
すなわち、呼吸器症状がある患者のみCTが撮影されている点です。

また、より症例数が多いstudyとしてAiらの1014例の論文(2月26日)が紹介されています。
彼らも97%という高いCT感度を報告しています。
Correlation of Chest CT and RT-PCR Testing in Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) in China: A Report of 1014 Cases | Radiology
https://pubs.rsna.org/doi/full/10.1148/radiol.2020200642
但し、inclusion criteriaがやはり不明確で、このreviewの著者らは恐らくは入院を要する重症患者のみにCTを用いたのでは無いか?と推測しています。
Aiらの報告はFangの報告に比べて、症例数が圧倒的に多い訳だが、それをもってスタディデザインがより優れているかの様に誤って捉えられている事を指摘しています。


感度については、防衛医大の戌亥先生らがダイヤモンドプリンセス由来の入院全患者104名にCTを撮影した検討が最もアテになりそうです。
有症状例 (発熱が11%、咳が19%と軽症例が多く含まれる)ではCT感度は79%、無症候症例ではCT感度は54%でした。
Chest CT Findings in Cases from the Cruise Ship “Diamond Princess” with Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) | Radiology: Cardiothoracic Imaging
https://pubs.rsna.org/doi/10.1148/ryct.2020200110
検査前確率が100%だとしても、半分は見落とす事になります。
また、最近は余り話題にならなくなったのですが、症状発現から2日ですと半数、4日以内ですと20%弱程度がCT陰性という報告もあります 。
CT撮影患者に対するselection biasがあってもこれですから、実際はもっと低いと思われます。
CT Imaging Features of 2019 Novel Coronavirus (2019-nCoV) | Radiology
https://pubs.rsna.org/doi/10.1148/radiol.2020200230
Time Course of Lung Changes On Chest CT During Recovery From 2019 Novel Coronavirus (COVID-19) Pneumonia | Radiology
https://pubs.rsna.org/doi/10.1148/radiol.2020200370

長くなったので、言及を避けますが、特異度についても過去の論文のデザインの不備やnon-specificな所見が多いため、報告ほど高く無い事を指摘しています。


それを受けて、Implication for the application of CT in clinical practiceの項目では下記の様に述べられています。
すなわち、検査確率が高い患者群においては特異度が低くてもPPVは上がるが、CT陽性所見で検査後確率が上がらないのであれば、臨床的優性が低いのでは?とコメントしています。


In populations of patients with a high prevalence of COVID-19 pneumonia (as in disease surges or outbreaks), the positive predictive value of CT will appear increased even if CT is not specific. However, according to the Bayes theorem, positive CT results are unlikely to be clinically useful because the posttest probability would not be significantly different from the high pretest probability, given the overall high prevalence of disease.


CTを無症候-軽症COVID-19に使う事は、被曝のリスクの考慮とCT室を経由した感染リスクが適切に回避出来るのであれば、反対では無く、臨床医が必然性 (患者所見への違和感や社会的必要性)を持って撮像するのは容認されるのでは無いでしょうか。
こういったcohortに対するCTの有用性がscientificには証明が不十分、という事を理解した上で診療を行う事でmanagmentの質を向上していく事が出来れば、と思っています。

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