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おばあちゃんの狂気

昼、行きつけのスーパーの前にある証明写真機で写真を撮ろうと思い中に入ると
「故障しています。こちらまでご連絡ください」との文字がモニターに表示された。
証明写真なんて、めんどくさくて2ヶ月は放置する。やっとの思いで辿り着いたのに本当についていない。
写真機に向けて舌打ちをし、スーパーへ向かった。

入り口まで着くと、おばあちゃんとおばちゃんが、やけに近い距離で絡み合っているのが見えた。

最初は家族の揉め事か何かかと思ったけど、明らかに動作が大きく、服を引っ張って腕を絡ませて何かを叫んでいた。

一瞬思考と体が止まったが、それがガチの喧嘩であることを認識した。

とりあえず止めに入ったのだが、
おばちゃんが、おばあちゃんに対して、
「この人盗んだんです!捕まえてください!!」と半ばヒステリックに僕に叫んできた。
正直状況がよくわからず、取っ組み合いをやめさせて、お互いを引き離した

すると、おばあちゃんが逃げた。
早歩きだが、老人とは思えないスピードでその場を立ち去った。
途中まで追いかけて、待ちましょうと説得したが、
なんだか、そこまでする筋合いもないし、強引に引き止めたら自分もなんらかの罪に問われる気がしてやめた。
途中スーパーの店員さんにあの人ですと、逃げたおばあちゃんを指差したが「我々も警察じゃないので強引には止められないんです」と言われて断念。
おばあちゃんはすごい速さで横断歩道を渡り後ろを振り返ることなくまっすぐ歩き、路地へ消えていった。

その後はどうなったのかよくわからない。

家への帰り道。さっきの出来事を思い出していた。
おばあちゃんは、血走った目で「知りません!」と叫んでいた。
何があったのかどっちが悪いのか、全くわからなかったけど、
おばあちゃんの言葉には殺意に似たものがこもってた気がする。まさに狂気。

どれだけ感動的な映画を見ても、仕事で達成感を得ても、ギター壊したり暴れまくるライブ見ても殺意なんか感じないのに。
最近の出来事で1番「人間」を感じた瞬間だった。

引っ掻かれた手の甲がジンジンと痛み、自分の鼓動がいつもより速く強く鳴っていることに気がつく。

僕らは「人間」的なライブをできているだろうか。いつかあのおばあちゃんの狂気に届くようなライブをしたい。そう思った休日であった。

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