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水上悟志が大好きだ!

まだ池袋に芳林堂があったころ。僕はこのコミックストアの雰囲気が大好きだった。天井には膨大な漫画家のサインが並び、ただの「書店のマンガコーナー」ではなく、マニアックな本も並んでいる。客層は若い男性からOL、学生や高齢者まで。チビッ子はほとんどおらず、かといって変なオタクってわけでなく、マンガのファンが集う大人の店の感じ。

書店員さんも親切に対応してくれる。以前、高浜寛の「蝶のみちゆき」と「四谷区花園町」を求めたとき、店にある高浜寛の作品をその場ですべて即答してくれた。

その芳林堂が推していたのが水上悟志の「スピリットサークル」。

たまたま、最終巻が発売されていたときに、店の手書きのPOPがあり、名作間違いなしという感じだ。

マンガとの出会いは人や恋人との運命の出会いのように思う。星の数ほどあるタイトルの中で、僕は芳林堂は2~3時間も作品を探すのが大好きだった。ちょこちょこと試し読みもあるし、いろいろ探る、そのときの気分や引かれるジャンル、表紙の絵で決めることもある。その中で書店の推しやPOPはとてもためになる。読みたいのが見つかると心が躍る。ハズレは損をするため必死なのだが、迷惑な客だったろう。ああ芳林堂が惜しい。

で、何度も「スピリットサークル」の推しを見ているうちに、ついに購入を決意。読むしかないなと。僕は、居酒屋で一杯やりながらマンガを読んだり、もう1つ大好きな旅行のおともにマンガを読むのが無上の幸せだ。よく旅行の本末転倒なことも起きる。一度、「累」(松浦だるま)を旅の前に買った、駅のホームで読みふけり、そのまま旅行を断念、ひたすら喫茶店を歩き回り探したこともある。

そのときは、深大寺にお参りし、蕎麦を食べる予定だったが、もはや深大寺どころではなくなった。「スピリットサークル」(以下スピサ)を一気に3巻まで読んでしまい、そのまま全6巻買いに行った。

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 (僕も最初は、絵が少年漫画すぎたので抵抗があったが、もうやみつきに…!)

特にラファル編を読んだとき、押切蓮介の「ミスミソウ」を読んだような読み疲れと光悦感にぐったりとふける、最高の感覚を得た。

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「これは現代の手塚治虫か、現代風のエンタメとしてはそれ以上なのか…」と、はじめて読んだ手塚治虫のSFに夢中になった感覚を思い出した。ちなみに、僕は小学校のころにアニメのきっかけもあり「火の鳥」を読み、輪廻転生や人間の生き方を考えてみたことある、今思えば手塚作品によって世界観が作られたような気もします。て言っても、手塚作品は火の鳥以来は大学生になって読んだ程度ですが。手塚作品といえば「ジャングル大帝」や「鉄腕アトム」などは子供が読むものというイメージでしたが、「奇子」や「きりひと賛歌」でその奥深さを知り。「陽だまりの樹」は聖書です。

スピサは今でも読むと涙ぐむぐらいの僕の中の傑作。長いファンタジーは苦手なのだけど、1つ1つの「過去生の話」は飽きさせないような演出とまとめ方で。何より、その「過去生の話」が繋がっていて。ラファル編の最初の「生き写しね」てシーンや「ロボネコ」などが、みんな繋がっていて、前の「過去生の話」のドラマを思い出し、うぅっと自然に嗚咽が。たびたび読んでそうなります。

で、水上悟志のファンになり、「惑星のさみだれ」も読んだ。最初はちょっと受けつけなかったけど、中盤からラストのカタルシスが最高だった。最初は戸惑うが、読み続けて決して裏切らないのが水上作品だ。特にラストは「読んでよかった」と本当に思う。その信頼性はアニメのために水上先生がつくった(アニメ→原作という珍しいパターン)「プラネットウィズ」でも多くの人に認知された。アニメは好きなマンガが多くの人に広まるコンテンツとも思っているが、まずOPで「作者 水上悟志」と出てくるのも誇らしい。そして、ネットで視聴者の反応をチェックしても「最初は面白いのだけど、まったく予想ができないから不安」「これは視聴し続けていいのか」というコメントに、多くの水上ファンが「信頼して見ろ」「この作者は絶対に裏切らない」と書いてあり、それを見るだに僕も「ざまあみろ!これが水上悟志だ!!」と思えてしまう。

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(一見正義のヒーロー!? しかしこのあと、常識がくつがえる。さらに、この地味な連中たちも、だんだんと好きなキャラに。特に左端の虎居さんは本当にかっこいい。あと右から2人目の岳蔵じいさんも素敵です!)

「二本松兄妹と木造渓谷の冒険」は物足りない感じもしたが、1巻のエンタメ性を考えるとワクワクする内容だった。何より、短編集の「放浪世界」はもう、最初の「竹屋敷姉妹」でニヤニヤし、最後の「虚無をゆく」で圧倒された。心の底を持って行かれました。

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マンガ版の「プラネットウィズ」も完結まで追っていくし、最近は長編のファンタジーで手が伸びなかった「戦国妖狐」も読み始めている。けど頼むから、最近連載がはじまった「最果てのソルテ」の更新がせめて毎月なら僕はもっと幸せになれるのになあ。

たびたび、水上悟志やスピサの話はしていく予定です。

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(何気に、この「バケツ」も面白かった。意外な展開で、脳がかき乱されます。しかしながら、水上作品は、王道で熱い!何より伏線の回収、そしてラストの終わらせ方の説得力よ。世界の見方が変わるかもしれません。)


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