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スリー・テン は ファシリテーションの練習になる

「スリー・テン」というゲーム

「スリー・テン」というゲームがある。いわゆるコンセンサスゲームと言われるものの一つだ。その他の有名なコンセンサスゲームには NASAゲーム などがあるが、スリー・テンはNASAゲームと異なり、ゲームとはいえ、特に勝敗が決まるゲームではない。

スリー・テンは出典・作者不明と言われており、説明された条件下において、下記の属性をもつ10名の中から3名を選ぶ、という行為を集団の中の意思決定として行うゲームだ。(設定や条件は検索するといくつか出てくるが原作が不明なのでここには記載しない)

弁護士 弁護士の妻(妊娠している) 女子大生 プロサッカーの選手 学識豊かな女優 

東南アジアから留学に来ている医学生 有名な小説家 生化学者 70歳の牧師 武装した警察官

このゲームのミソは情報が圧倒的に欠けている中、時間内に集団で合意し、意思決定を行わなくてはならないことだ。情報が欠けている分、思い込みで議論を進めてしまうことがよくあり、多くの場合一時的に場が混乱する。

例えば、「プロサッカー選手」と聞くと「10代後半から30代前半の体力のある男性」をイメージしがちである(し、おそらくこのゲームが最初に開発されたときにはそういう選手しかいなかったであろう...プロサッカーという概念があったかどうかすら怪しいが)が「シニアの女性プロサッカーリーグ」ということがあってもおかしくない。「女子大生」という言葉も大学に通う女子学生なのか、女子大に通う学生なのかまで考えると、年齢どころか性別まで怪しい。

会議はどのように進むのか

ファシリテーションという観点を持ち込み、このゲームを実施するに当たりどのようにして議論をすすめ、まとめていくのか?ということを考えてみたい。

私が最初にこのゲームを体験したときは、まず個人で考え、そして集団で考えるという方式を取っていたため、私の参加したグループでは「私はこう考えました、理由はこうです」という発表から始まり、そこに対して「いや私はこうだ」という意見を言い合うという形で話が進みました。参加者の方のほとんどが、情報が欠けているもののそれは特に気にせず、その際に自身が思い描いたイメージに基づいて発言されていたように見えました。4名のワークだったのですが、ここで一人あたり1分を費やしてしまいました。

一方私は情報が欠けていることに対してイライラしてしまうタイプなので、まずは前提をクリアにしてほしいと伝えました。最初にした質問は、弁護士の妻はここに登場する弁護士の妻なのか、それともただ別の弁護士の妻なのか。(弁護士夫妻を両方残すべきか、妊娠している方のみを残すべきか、という話題で紛糾しかけたので)

...グループにいるとめんどくさいヤツですね。

情報をどう整理するか

目の前には明らかに状況を整理するための「事実」が並んでいます。しかし、その事実から個々の参加者が読み取った「イメージ」は人それぞれ異なります。

生存するにあたり精神的支柱として牧師や小説家を残そうという選択をする人ももちろんいるでしょう。しかし生存できる空間というのはどのような空間なのでしょう。もしかしたら個別にこんなカプセルに入ることで生存するのかもしれません。

妊婦や医学生を残すことで出産の可能性に賭ける、という選択をする人ももちろんいるでしょう。医学生はいるが、出産に関する知識はないかもしれません。必要な道具がないかもしれません。全員、言葉が通じないかもしれません。

アイデアを出し、そこから決定をする、というプロセスは通常「拡散」→「収束」という段階を踏むと思いますが、この拡散の段階でイメージをすり合わせておかないと、「あれ?それってそういうことだったの?」ということになってしまいがちなので、ファシリテーターは必要な情報を適切に補完していったり、より拡散する問いを与えることでイメージを全員で共有していく手助けをする、ということが大事なのかもしれません。

価値観はどうだろうか

人の意思決定においては、(少なくともその場における)ベースとなる価値観というのがそれなりに大きく影響するように思います。

70歳の牧師に対して、「先が長くないから」という事実に基づいた理由付けをして選択する人がいますが、この直接的な理由だけではなく、背景にある理由を共有する ことも大切なのではないかと思いました。20年くらいしたらこの絶望的な状況は解決し、その際に若い方が妊娠・出産により人類滅亡を避けるようにしたい、という理由があれば納得できます。

どうせ全員の先が長くないと仮定して、どうやって7人で幸せに過ごすことができるかを考えたいから小説家は必要だ、とか、死んでしまった後にここで起きた事実を記録に残しておきたい(そういう映画ありますね!この発想は面白いと思いました)という価値観を前提にすると、説得するのにも納得感があるように思います。

価値観をチームで決定する、というのはなかなか難しそうですが、どれを重視するかを決めて、合意する、というのはチーミングにおいては大切な進め方なのかもしれないですね。(Mission-Vision-Valueを先に定義する、というのをよく見かけますが、そういう意味なのだと思います)

一方で、このゲームの設定における価値観と、その方が普段から大事にしている価値観を勝手に同一視するのもよくありません。人狼ゲームで平然と嘘をつく人が日常生活でも平然と嘘をつくと思ってはいけないのと同じです。

普段の会議や意思決定を思い出すと

何らかの意思決定は、あくまでもその時わかっている事実から何らかの可能性が相応に高いということでしか行っていないということに気付かされます。電車は定刻どおりに来ると思っているから電車での移動を選択するのです。そこで「いやいや、電車が止まるかもしれないでしょ」という意見は「正しい」ですが、その可能性を一旦切り捨てて本筋の議論をしないと話は進められないでしょう。(もちろん、何かあった場合のセカンドプランは別途考えるほうが良いでしょうけど)

不確実性の高い世の中と言われていますが、その中でも何らかの結論を出して実行に移すことが求められている昨今、いつまでも「〜かもしれない」ばかりを連呼して議論が前に進まない、なんてことがないようにしたいと改めて思いました。

その他参考

大学の授業(?)等でもこちらを扱っているので、ゲームのポイント等については下記のスライドなどをぜひ見てほしいです。


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てつのすけ(@Tetsunosuke) - まなびプランナー

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