トランペットとエアの使い方。

トランペットの奏法について常に話題に上がることに「エアをどう使うか」ということがあります。"Use more air!"なんて言う人もいます。これは言い回しの非常に難しいものであると考えています。確かに使い方の問題なんだけど、実は「量」の問題ではないと考えるのです。幸運なことにこの20年くらい、数多くの欧米の名手と話して意見を聞くことができましたが、去年亡くなったLAの巨匠、Carl Saundersは「必要最小限のエアで最大限の効率の良い仕事をしなさい」と言っていました。イタリアのAndrea Toffanelliはトランペットの管の太さから言って大量のエアはそもそも入らない、とも言っています。ボビー.シューはボロカス言ってましたが、マウスピース製作の巨匠Bob Reevesは「ラッパを吹いてる時、エアはほとんど動いてない」なんて言うことも言いました。エアを使え!と言う言葉がある一方でエアは要らないと言う人もい流わけで、この禅問答はなかなかに難しいものがあります。私はこれはカールの言ってることが正解だと考えています。それを見つけ出すきっかけはエリントンバンドの伝説的なハイノートヒッターのCat Andersonでした。7-8年前だったと思うのですが、ボストンのトランペッター、Tony Lujanがキャットにレッスンつけてもらった時のレジュメをFacebookでシェアしてくれました。キャットの言ういわゆる"Silent G"の練習の仕方を垣間見ることができたのです。これは最小限のエアと音量でできるだけ長くロングトーンをする、というものでした。これを見ていて気づいたのがクラークのテクニカルスタディとの共通点です。クラークのテクニカルスタディもまた一つのパターンを最小限のエアと音量で可能な限りリピートすることが要求されています。ロングトーンかパターンかという違いだけで「最小限のエアと音量で一息でできるだけ長く」ということがぴったり同じなんです。また、ラファエル.メンデスの映像を見ると、ワンブレスでMexican Hat Danceを吹ききるというデモ演奏があります。やはりキモは最小限のエアで綺麗に鳴らすということなのです。楽器という共鳴体を振動させるために必要なエアの量はさほど多くなく、音域が上がる、すなわち高次倍音を吹くに従って楽器に吹き込むエアの圧力を上げるということだと思われるのです。イギリスのPaul Mayesの教則映像もこの辺りをうまく説明していて非常にふに劣るものがありました。使うのはMore AirではなくてEffective Airということだと思われるのです。

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