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東京にあった2

上京当日。本来なら初日から目当ての店に行くつもりだったのだが、残念ながら店休日であった。しかたなく19時過ぎに友人宅に宅配業者を装い押し掛けたところ、後ろ手に木刀を装備して出迎えてくれた。玄関先に木刀を常備してるあたり、東京というのはなるほど物騒な土地らしかった。

「あれ見るとさぁ、あぁ都会に来たんだなってきがするわ。あの赤い奴見ると。」

友人宅から30分ほど歩いた先にあるおばんざいの店で軽く腹を満たし、慣れない酒で若干おぼつかない足取りを誤魔化しながら旧友と高層ビルを眺めた。東中野から見える航空障害灯は、くそ田舎から出てきた身としては中々壮観な画だ。

4月6日水曜日。私は東高円寺にアパートを借りることになった。各種家電寝具、生活に必要なものは総て揃って2週間8万弱。ホテルをとると1週間でも足りない位の好条件だ。長期出張に縁がない仕事をしていると、宿の取り方やどんなスタイルの賃貸があるかなんてそうそう知ることもない。ウィークリーマンション、1つ利口になった。齢37にして。

そもそも長期の出張なのだから経験者の親父が最初から誘導するべきではないのか?とひとりごちてるうちに、友人に案内されアパートに着いた。やはり持つべきものは土地勘のあるツレである。

近所に飲食店多数、オリジン弁当も松屋もある。山陰にはどちらもない。何より20時以降やってる店などほとんどない。都会に出た同級生が地元に帰ってこない理由が少しわかった気がした。

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