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「宇宙人」のような人達との共同開発

熱い思いはあれど、市場に出ていける商品を作ることは簡単ではありません。とりあえず形にしてみた「あやせ匠の鉄板」が誕生したものの、自社のオンラインショップすら持っていなかった2015年当時のナウ産業には、友人・知人に勧める以外、なす術もありませんでした。

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時を同じくして、社長が1年間かけて学んだ綾瀬市のBtoCセミナーが終わりの時を迎えていました。締めくくりは自社製品のアイデアのプレゼン。もちろん社長は、ナウ産業の技術を生かした鉄鍋のアイデアを発表しました。

「本気でやりませんか」

同セミナーの講師だったアッシュコンセプトの名児耶代表は、受講生に問いかけました。そして、我らが社長が手を挙げたのでした。これがあやせものづくり研究会のはじまりです。

しかし、本気の自社ブランド・自社製品づくりは生ぬるいものではありませんでした。石の上にも3年とはよく言ったもので、本当にここから3年かかって最初の「Tetsu Nabe」が誕生したのです。

何にそんなに時間がかかったかというと、コンセプトを決めたり、試作や改良・取り止めをしたり、セールスに必要なデータをとるために大学に依頼したり、そもそもメールのやりとりが苦手だったり…。本来ならば、そこまで時間はかからないのでは、、とは思いつつ、何よりチンプンカンプンだったデザイン会社のおしゃれクリエイターさん達との溝を埋める時間だったのではないかと思っています。

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アッシュコンセプトは浅草にある会社。定例会議以外のやりとりは基本メールになるのですが、本業でもあれこれ忙しい社長が一人で対応せねばならず、そのキャッチボールすら、なかなかスムーズにできませんでした。そもそも顔の見えないやりとりに慣れていないので、少しずつ小さなフラストレーションが溜まっていきます。

また、作り手目線ではコストや手間を考慮して「作りやすいもの」を追求しがちですが、小売商品はデザイン性やユーザ目線も重要です。そのあたりでデザイナーさんとのすれ違いは多発しました。さらに製品以外にもパッケージやパンフレットなど、売る前に準備すべきものが山ほどあります。

加えて「上代」などの小売業界の概念が町工場にはありません。もはや共通言語もなく、常識も異なる「宇宙人」との会話。ついに音を上げ、初代「あやせものづくり研究会」会長だった当時の社長は、アッシュコンセプトに、あるひとつの提案をしたのでした。

「定例会議の後に、飲み会を開いてください」

いわゆる「呑みニケーション」です。令和の時代に失笑されてしまいそうですが、それがいちばん町工場の社長たちが理解を深められる近道でした。2016年。コロナがなくて本当に良かった。もしも時代があと数年違っていたら、Tetsuシリーズは世に出る前に、そっと姿を消していたかもしれません。

会議の中では消化しきれなかったこと、小さな誤解、聞いたことのない名詞や概念、業界のアレコレ、意見の裏側にある本音やその背景…。わりと真面目な人達ですから、そうやってちょっと気を抜いた場所でのやり取りも必要です。ちょっと関係ない話もしながら、そうやって相手のことを好きになって、わだかまりをなくしていきました。

まだ商品開発を始めて間もない頃、実は、景気悪化の煽りを受けて会社が深刻なピンチを迎えた時がありました。その時に社長が「もうやってられないよ!」と、投げ出しそうになったTetsuを、ナウ産業を、なんとか励ましてくれたのは、研究会の仲間であり、アッシュコンセプトの皆さんでした。
いつの間にか、しっかり絆ができていたのです…泣

tetunabe実演集合写真
発売日、店舗にてアッシュコンセプトの皆さんと

会社の倉庫には、日の目を見なかった試作がたくさん眠っています。その数々を見た時には、なんとも言えない気持ちになりました。きっとデザイナーさん側も、考えまくって絞り出してくれたのにボツになったアイデアがたくさんあることでしょう。

そうやってすり合わせて、一緒に作り出した商品だからこそ、今こうして自信を持って発信することができます。良い商品だから、いずれ日本全国、世界にも愛されるようになってくれたらいいなと願っています。

世に出るまでの時間こそかかったけれど、アッシュコンセプトさんの力を借りて、私たちの製品がすごくおしゃれなパッケージに包まれて、大々的にお店で売り出された時は、本当に感動しました。

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自社製品の「あやせ匠の鉄板」を作ってみて、パッケージも取説も、暗中模索で作ってみたけれど、自分たちだけでは全然上手にできませんでした。本当にありがたいご縁で、やっとスタートラインに立てました。

私たちもいろんな知見が広がったし、今の商品開発や営業にもすごく生かされています。失敗もして、石の上にやっとよじ登った3年だったけれど、たくさんの経験をして乗り越えた分は、全く無駄じゃなかったなと思います!

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