見出し画像

「窒化」って、何をどうするのですか?

私たちのつくるTetsuシリーズの肝といえるのが「窒化」です。

端的に言うと、表面を強化するための処理で、工業では、歯車などの摩耗してはならない部品などに使われる技術です。その副次的な効果で、鉄の表面がとてもサビにくくなります。

これによりTetsuシリーズは、一般的な鉄鍋より頑丈さを増して、通常のフライパンのように台所洗剤で洗って自然乾燥でも錆びず、鍋の上で包丁やナイフを使ったり、金属製のヘラや金タワシを使ってもへっちゃらなのです。

そんな話をすると「良さは分かったけど、そもそも窒化って具体的にはどんなことをしているの?」と、バイヤーの方やお客様によく聞かれますので、今回はそれについて書こうと思います。

窒化ってどんな工程なの?

シンプルにいうと、「鉄の表面を窒化化合物に化学変化させること」なんですけど、わかりづらいですよね。そこで、具体的にどんなことをしているのか、私の噛み砕いた解説でご紹介します。

鉄板がTetsuNabeとして皆様の元へ発送されるまでの工程は以下のようになります。
①パーツを作る
②溶接する(検品)
③ブラスト
④窒化(検品)←今回はここを重点的に紹介
⑤黒染め
⑥洗浄(検品)
⑦梱包

まずは①プレス(機械で鉄板を押し曲げる)および②溶接で、鉄で鍋の形を成形します。

画像7

若干モデルは異なりますが、窒化前の鉄鍋は下記のような銀色をしています。これが「スッピン」の状態です。このまま放置すると錆びてしまいますので、整形したらなるべく早く窒化の工程に移します。

画像2

傷がないか、第一の検品をクリアしたら、③ブラスト(細かい粒子を当てて、表面をやすりがけのようにすること)をして、表面を整えます。これにより、サビ落としや酸化被膜の除去のほか、表面に微細な凹凸ができることで仕上がりが良くなります。

スクリーンショット 2021-08-18 22.05.03

表面が整ったら、いよいよ④窒化です。
窒化はこのような電気炉(釜)の中で行われます。ここで、ちょこっとだけ化学のお話をします。

画像1

この中にぶら下げるように鉄鍋を入れて、アンモニアガス(NH3)を投入し、500℃前後に熱します。すると、アンモニアガスが熱分解し、原子状の窒素(N)が鉄(Fe)の表面から内部に拡散侵入します。

そして、侵入した窒素は鉄やその他の元素と結びついて窒化合物や窒化層を形成します。

窒化した鉄鍋の断面拡大写真がこちら。単位がミクロンなので少々わかりづらいかもしれませんが、上部(鉄の中心部)から下部(表面)に向かうにつれて「鉄」、「窒化層」、「化合物層」となっています。

丸裏側健全部A×500

窒化のイメージは、鉄の外側の表面が窒化化合物に変化して、断面図的にはサンドイッチ状になる感じです。外側が非常にサビに強い窒化化合物に変わることで、強力なバリアが形成されて、内側の鉄が酸化し(=サビ)ません。

なので、逆にいうと、表面の窒化層を無理やり削ぎ落としたり、断裁して鉄の表面が出たりするとその部分からサビます。そのために、形を作ってから窒化をするのです。

実際に、2021年にモデルチェンジする前のフタに蒸気口がなかった頃、吹きこぼれが気になって、強引に穴を開けたことがありました。見事に、穴の内側の鉄が剥き出しの部分だけが茶色(サビ)になりました。

さて、これで窒化は完了です。しっかり丈夫な鉄鍋となりました。ここで第2の検品をクリアしたものが、⑤黒染め加工に回ります。余談ですが、アンモニアって言われると、一般の人からすると「クサイもの」っていうイメージですが、工場も、仕上がった製品も、全く臭くありません。

窒化のこと、少しでも理解を深めていただけましたでしょうか?
「窒化」は工業的には「表面硬化」がメインの作用で、「サビない」ことは副次的な効果の印象があります。そのため、最近では「窒化フライパン」もだいぶ増えてきましたが、開発当初はほとんど同類もなく、たくさんの方に窒化について何度も説明したものです。元祖とまでは言いませんが、先駆的な存在だったんですよ!

いちばん初めはナウ産業でも「スッピン」の鉄鍋を作っていましたが、錆びて使い勝手の悪いことが悩みでした。

画像6

その矢先、工業団地の仲間がアイデアをくれて、現在窒化をお願いしている極東窒化研究所さんと出会い、現在のTetsuNabeが誕生しました(このあたりのエピソードもいずれご紹介しますね)。


ちなみに窒化は、再処理も可能です。
「見た目の使用感が気になる」という場合には、有償ですが見違えるほど生まれ変わる再処理も行なっておりますので、ナウ産業にご相談くださいね。

それではまた!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?