スタバとグッチと在宅に共通する「欲求の解放条件」
こんにちは。
リサーチ会社に勤務している、てつ(@tetsu_marke)と申します。
仕事柄マーケティングに関する情報収集をよくしているのですが、外出自粛で大きく環境が変わったことで、消費や仕事など様々なことが「場所にとらわれずに出来るようになった」と感じています。
場所にとらわれなくなった最大のメリットって、「周りの目を気にせずに行動できること」なんじゃないかと思います。
「周りの目を気にせず行動できる」ようになったことで、従来とは異なる消費行動が生まれてきているんですよね。
以前より「潜在的な欲求を解放しやすい環境」になってきた気がします。
具体的にどういうことなのか、スタバとグッチと在宅勤務を例に挙げてご紹介できればと思います。
モバイルオーダーが変えた消費行動
海外のスターバックスの事例になりますが、モバイルオーダーが売上の25%を占める結果になったそうです。外出しずらい環境になったため、利用が増えたこともありますが、面白いのは大きく客単価が上がったということ。
モバイルオーダー&ペイが第1四半期で25%にいたり、売れ筋も異なっているという。トールサイズで4.50ドルするアイリッシュ・クリーム・コールド・ブリューなど高額で限定商品が売れているのだ。(記事より引用)
スターバックスはコーヒー以外にも色々なメニューや、トッピングなどのカスタマイズもできますよね。私自身はほぼやったことがなく、機会があれば試してみたいなとは何となく思っていました。
ただし人気のお店なのでどの時間帯でも混んでいることが多く、慣れない注文をしたら、後ろに並んでいる人や店員さんにどんくさいと思われる気がして、ついつい『コーヒー。 グランデで』みたいな頼み方をしてしまっています。
(完全に余談ですが「スタバではグランデを買え!」という本を読んでから、最もコスパがいい一番大きいサイズを頼んでしまいます。)
ただ心の奥底では「スターバックスを楽しみきれてない」と何となく自覚していて、この記事を読んだときに「モバイルオーダーだったら、誰にも遠慮せずにカスタマイズできるな」と確かに思ったんですよね。
自分の中でスタバは「コーヒー頼むお店」と無意識に諦めていたことを、「周りの目を気にしないモバイルオーダーなら、欲求に素直になってもいい」ということに気づけました。客単価が上がったというのは、とても納得感がある話でしたね。
牛丼を提供している吉野家もモバイルオーダーの恩恵を受けています。普段の客層はイートインだと男女比率が「8:2」なのですが、テイクアウトについては「5:5」になるそうです。
ここから分かるのは、牛丼を食べたい気持ちは男女で一緒。ただし、女性の場合は「入りずらい」という課題があります。
一昔前のイメージにはなりますが、牛丼屋は「男性のビジネスマンが手早く食事を済ませる店」みたいなイメージは確かにありましたよね。
妻にも聞いてみたのですが、周囲の目線が気になることや「こんなに食べるのかこの人は」と思われたら嫌とのことでした。
頭ではそんなこと思われない、気にしなくていいと分かっていても、何となく抵抗感を感じてしまう気持ちはわかります。
上の写真はなんと恵比寿の吉野家です。吉野家では「入りづらさ」を解消するために、女性の入りやすい店舗の開発にも力にも入れてます。
まさに周りの目を気にさせないことで、牛丼を食べたい欲求に素直になってもらおうという戦略ですね。
アプリならグッチも怖くない
グッチのアプリも面白いです。
普段ブランド服はほとんど買わないのですが、日経MJ の AR 特集で紹介されていて、アプリで試着体験ができるようなので自分でも試してみました。
(写真はスニーカーのAR体験。カメラに足を映すだけ)
スニーカーの他にも、サングラス、口紅などがAR で試着体験ができるのですが、これがなかなか面白かったです。口紅は絶対に買うことはないと思うのですが、興味本位でやってみちゃいました。笑
この体験で気づいたのは、ほとんど興味がなかったグッチに対して関心が出てきたことです。
お店については、正直店員さんの目が怖くて入りづらいと勝手に感じていました。アプリの場合は誰の目も気にせず、自由に試せます。安心した状態だと色々試したくなるんですよね。
試していくと、色々と欲しくなってきちゃいますね。普段敷居が高いブランドやサービスこそ、一段階ハードルを下げて疑似体験をアプリで出来ると購買意欲が刺激されるのかなとも思います。
在宅勤務で集中できない理由
最後は在宅勤務についてです。在宅勤務のあるあるなのが「家だと集中して仕事ができる人/できない人問題」。オフィスだと仕事ができるのに、家だと集中できないというものです。
1つ面白い実験を紹介させてください。ダニエル・カーネマンの「ファスト&スロー」という書籍の中で紹介された「見られている」ことに関する実験です。
いわゆるオフィスグリコにきちんと代金を入れるか?という趣旨で、集金箱(値段表)に張り付けられた写真が集金に影響を及ぼすのか?というもの。何の説明もせずに、1週間ごとに「目の写真」と「花の写真」を入れ替えています。
結果は、目の写真の週とミルクの週では投入金額が大きく違いました。
「見られている」ことが象徴的に示されただけで、無意識に行動の改善を促したということです。
在宅勤務については、意図せず周りの目がない環境ができたことで、自分の欲求に素直になりやすくなった。そのため、 仕事以外の欲求の魔力が強くなり集中できないということです。
昔からある手法として、カフェで仕事や勉強するというものがありますが、自意図的に見られている環境を用意することは、欲求をコントロールするために効果的なんですね。
欲求が解放されやすい条件を知ることが大事
スターバックス、グッチ、在宅の3つの共通点は「潜在的な欲求を開放しやすい環境」を作っているということ。
周りの目を気にせず選べる環境、つまり「心理的な安全が保障されている状態だと人は欲求を解放する」ということです。
そういった意味では、自宅からスマホを通じて注文できる「モバイルオーダー」や「フードデリバリー」は今後もっと伸びてきそうな予感がありますね。
スタバやグッチのように意図的に仕掛けていることもあれば、在宅勤務のように意図せずに環境が作られてしまうこともあります。
欲求の力ってものすごく強いので、意思だけではどうしようもないこともありますよね。
ついついオンラインで買いすぎてしまったり、在宅勤務で集中できないという方は、自分の欲求をコントロールするためにも、周りの目を上手く使う環境づくりに取り組んでみるのがおすすめです。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
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→以前書いた別の記事「ワクワクしたマーケティング3選」
【引用/参考文献】
BLOGOS「売上の25%がモバイルオーダー!限定高額商品がバカ売れする理由?」
https://blogos.com/article/513795/
Marketing Native「𠮷野家常務・伊東正明が放つ次の一手|「V字回復」の先に見据える戦略と戦術とは?(前編)」
https://marketingnative.jp/mn19/
ロケットニュース「【マジかよ】恵比寿にある “ほぼカフェの吉野家” がお洒落すぎて震えた / 牛丼を「お牛丼」と呼びたいレベル!」
https://rocketnews24.com/2016/04/08/733878/
「ファスト&スロー(上)」ダニエル・カーネマン
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