ご近所パン事情

 札幌の隠れた美味しいものは、パンとコーヒーだ。小さなお店が、高いレベルで競っている。

 ご近所パン屋さん、その①
 イタリアパンのお店。イタリアのパンだとは知らずに今まで購入を続けてきた。ここに書くのに調べてみると、どうやらそうらしい。
 ドイツパンのようなゴリゴリのハード系(好きだけど)でも、カリッカリ、サクサクのフランス系(これも好きだけど)でもない。見た目は気にしませんけど、質実剛健というほど気張りもしません。わかりやすく大きな主張はありません。ただゆっくり噛んで味わってください。それぞれが送るそれぞれの人生のそばにいますからね。そういうパンたち。
 いろんな料理と合わせて美味しいし、お酒を飲む人にはたまらないんだろうなぁと思ったりする。
 小さな村に住んでいて、そこにパン屋さんが一軒しかないのであれば、この店であってほしい。5種類のパンとパテやラザーニャなどのお惣菜も備えている。

 ご近所パン屋さん、その②
 フランスパンのお店。バケットもクロワッサンも、文句なしに美味しい。ショコラオランジュとスコーンがお気に入り。
 日常づかいとして頂くには少しハードルが高いけれど、節目節目で食べたくなるパンたち。小学校のクラスに1人か2人はいる、ちょっとしたお屋敷に住んでいる子の感じ。
 種類は多いのだけれど、焼き上がり時間がずれているので全品が揃うことはない。焼き上がり時間を狙っていくか、予約する。パンを買うのに予約ってなんだかなぁと思い、気まぐれで行く時間に目前にあるパンを買ってもハズレはない。
 村のとなりの少し大きな町にあってほしいパン屋さん。

 ご近所パン屋さん、その③
 ザ・日本のパン屋さん。何の緊張もなく店に入り、すらーっと買ってしまう。そう思うと、他のパン屋さんに入るときには緊張しているのか? と自分の気の小ささを嘆きたくなるほどの脱力系(いや、ぼくが脱力しているだけでパンやお店が脱力しているわけではありません。念のため)。
 小さなショーケースとテーブルの上に20種類ほどのパンが並んでいる。メロンパン、あんパン、カレーパンが郷愁を誘う。ベーコンエピや明太フランスなど、日本のパン屋さんの比較的新しい定番も顔を揃えている。
 中国で2年間暮らし、ガチ中華の味に覚醒し、帰国後に入った町中華で腰が抜けた感じ。「なんやかや言うてますけど、あんさん美味しそうに食べてますやん」的な。
 実家のあるとなり村に一軒あってほしいパン屋さん。

 徒歩5分以内に、この三軒がある。それは、とてもしあわせなことだ。どうか、どのお店も潰れずにパンを焼き続けてほしい。
 ちゃりんこ5分圏内になると、さらに選択肢が増えるのだけれど、とりあえずぼくの欲望はそこまでは及んでいない。徒歩5分圏内で自足している。

 たぶんこの札幌の街は、どこに住んでも近くにお気に入りのパン屋さんができる街なんだろうな。

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