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現代詩「鐘」

鐘 鐘が けたたましく 空を ゆすっている 私の 黄色い夢の中で 装甲車が 見事に粉砕されていく世界で 収穫されることのなかった 麦が 塩辛い水に変る 涙か 汗か 海か 逃走していくラフマニノフ 燃えている 巨大な両手で 鍵盤を叩きながら 今日も 地上の愚鈍を 叫ぶのだ もっと、もっと 鐘を揺らせ! 空中で浮遊し 暑くなるのは嫌だ と、 呟いている 赤ら顔の少年よ。 もっと、もっと 頭蓋を揺らせ! 風か 光か 月か 螺旋階段を降りたら きっとお気に入りの あ

    • 俳句(2022年12月1日から24日まで)

      2022年(令和4年)12月の自作俳句 街寒くラードのごとき空の色(12/1) 冬帝の碧眼のぞく裏通り(12/2) 枯葎明るさ戻る土曜午後(12/3) 梢にて咲く極月の八重椿(12/4) 頬赤き泣き弁慶の息白し(12/5) 冬の雨重機ふるへてゐたるなり(12/6) ポインセチア鏡に映す唇よ(12/7) 漱石忌師走の寄席の笑ひ声(12/8) 着ぶくれて緑茶焙茶玄米茶(12/9) 長堤に獣のにほひ暮易し(12/10) 枯尾花余光の橋を細くせる(12/11)

      • 現代詩作品2「反抗」

        反抗 縦書きの出来ないワープロソフトで、 終りの決まっていない詩を書きだす。 ウェブ上で書かれていく言葉は、 不安定で、上下に、 揺れながら 進行する。 反抗! 優しき金髪の乙女が、 「若くして死ぬのよ。きれいなうちにね」 と歌っている。 死に損ないの僕は、 ペプシコーラを飲みながら、 彼女の声を聴いている。 ある学者は。 声が美しいことを理由に人を愛する人間は 最低だ と宣う。 けれども、声をかけられなければ 始まりも終りもないよ。 反抗! 代替できないことを

        • 現代詩作品1「無季」

          無季 洋々と風の中を歩き回ると 短く刈った髪の毛の 一本一本が 松の尖った葉のように 空に向いて 泣き叫ぶ。 自由はここにはないと。 あなたの足跡を追って 互いの距離を詰めてきたのに もう何十年も前に 私の前を去ってから よく耳にする ブラームスの交響曲第4番。 苦し紛れの言葉が パッサカリアの形式に流れ込む もういいではないか、この辺で。 私の寿命は 体内で光を放つ ひとつの半月によって 決められていたのだ。 背を伸ばして もう少しだけ その発光するスポンジを 見つ

        現代詩「鐘」