令和の企業ノベルティ はこうなる! |昭和平成ノベルティ史 & SaaS企業事例から学ぶ
企業ノベルティのことを日夜考えてるtetote 代表ミウラです。「昭和〜平成の企業ノベルティ変遷」を分析しているうちに「企業のノベルティがこう進化する未来予測」にたどりつきましたので発表します!(数年後に見返したらぜったい価値ある内容になるはず…保存版!)
はやく答え知りたいタイパ重視!という方は下の目次の「令和(2020年代〜)の企業ノベルティ最新トレンドはこうなる!」からどうぞ。
企業ノベルティ好き!いいぞもっとやれ!と思ったらハートマークを連打してくださいね。ではいきましょう!
昭和(1980~1990年代)の企業ノベルティ
日本で企業ノベルティが一般化し始めた80~90年代。どんな使われ方をしたのでしょうか?それはマスキャンペーンの時代だったと考えられます。
テレビCMのキャンペーンで「〇〇プレゼント!」「いまなら当たる!」など見た記憶はありませんか?いわゆる懸賞というやつです。マスのパワーが強い時代、みんなが見ていたテレビCMの企業ロゴやキャラクターの限定品が手に入れば嬉しいですよね。
英語のノベルティという言葉には「珍しい」という意味が入っているそうです。いま聞くと、ノベルティ=簡単に手に入るイメージがあるので、特に珍しくなくない?と思いますよね。
しかし当時の「テレビで見たあの企業のロゴやキャラクターのグッズ」を限定で手に入れられる体験。まさにノベルティの語源通り「希少なもの」だったと予想されます。
ノベルティ×レトロなどで、オークションサイトで検索すると企業もののグッズがたくさん出品されています。まだ価値があるということ。90年代くらいまでのノベルティは1つのカルチャーとして根付いたと言えるのではないでしょうか。
平成(1990〜2020年代)の企業ノベルティ
平成になり企業ノベルティに変化が起こりはじめます。キャンペーンは続きますが、イベントで”バラまかれる”ものへ。この時代に登場するのが、企業ノベルティを語るのに切っても切り離せない「ビジネス系イベント」の存在です。
東京ビッグサイト・パシフィコ横浜・幕張メッセなどの大規模展示場が 1990年前後に一斉に出来上がったことが経産省の資料(展示会産業の歴史)でわかります。toC向けから、toBイベントが増えてきている流れも伺えます。参考=展示会産業概論 - 経済産業省
企業ブースの前でノベルティを配る。名刺交換したらノベルティあげます!的なBtoBのビジネスイベントで配ったりするもの=ノベルティの代名詞としてイメージされている方も多いと思います。
前の時代の「みんなが知ってるグッズ欲しい!」から「知らない会社がドアノックで認知を獲得するためのツール」に使われ始めます。それに伴い、名入れ・印刷のノベルティwebサイトが乱立し、誰でも作れるようにマーケットも加速。
ユーザーのもらって嬉しいかどうかの気持ちより効率を重視した、イベントでバラまく前提の早い・安い・大量生産のノベルティ時代がはじまります。
ここから企業ノベルティは以前持っていた希少性を失っていきます。企業ノベルティ=おまけ。だから「要らない・もらっても嬉しくない」というネガティブな印象も起き始めたと予想します。
令和(2020年代〜)の企業ノベルティ最新トレンドはこうなる!
さて、ここからが本題です。ノベルティの捉えられ方が変わってきました。「キャンペーンで当たる」→「ビジネス系イベントでの配りやすいおまけ」と変化した企業ノベルティの変遷。次はどうなるんでしょうか?
答えは「ブランディング」の時代です。「ストーリー」の時代とも言えるかもしれません。「ノベルティでブランディング?」という方も多いと思うので、具体的な企業の最新ノベルティ事例を紹介していきます。
Sansan
働き方を変えるDXサービスのSansan。ビジネスの根幹である「出会いからイノベーションを生み出す」というコンセプトがあります。そこから生まれたノベルティが「野菜のタネ」なんだそう。
Sansanといえば名刺管理。出会いが実る=タネ。アイテムが企業のコンセプトと合致してます。ただの「ロゴ入りノベルティ」ではなく、Sansanという企業が持つブランドのストーリーが意図的に埋め込まれていることがわかります。これを渡したら顧客との会話が続きそうです。
マネーフォワード
バックオフィスSaaSを提供するマネーフォワード。経理業務に携わる方とのオンラインイベント「決算お疲れさま会」でノベルティをギフトボックスにしてユーザー様へ送っています。
経理の実務を行われてる方にとって「決算」は共通の山場です。それを支えるのがマネーフォワードのサービス。ユーザーインサイトに寄り添うグッズは「私たちは仲間である」というストーリーもデザインされた事例です。もらったら絶対嬉しい…
サイボウズ
グループウェア国内最大手のサイボウズ。「チームワーク」や「働き方」を発信するオウンドメディア「サイボウズ式」10周年記念のノベルティギフトボックスです。
編集部の10周年のテーマは働くことの「しんどさ」をテーマにしたもの。そこでコンセプトを『仕事と癒し』に。仕事で持ち運べるタンブラーのstojo(ストージョ)と、オンオフの切り替えができる癒しのバスソルトをセットに。
「チームワーク」や「働き方」に悩むユーザーに寄り添い、サービスで改善する。サイボウズのブランドイメージとリンクする世界観を作られています。
SmartHR
クラウド人事労務ソフトのSmartHR。ブランディング×ノベルティの分野では最先端と思われます。ぜひラインナップをご覧ください。オンラインの打ち上げアイテムBOX、サービスの404ページに出てくるヤギのアグリーセーター、自社サービスの便益とリンクする年末調整に便利な封筒・・・
社内カルチャー理解・サービスの世界観を反映したデザイン・ノベルティの選択….全てに意図や狙いが含まれています。日頃からブランディング視点でカルチャーを考え発信するインハウスのデザイナーチームが、その延長で作るノベルティだからこその強みがめちゃくちゃ詰まっています。
なぜ令和のノベルティはブランドやストーリーが必要になったのか?
最新の企業事例をご覧いただいて「ロゴだけ入れたグッズをバラまく」のとは体験価値が違う、自社ブランドを伝えるノベルティの流れを感じていただけたのではないでしょうか?
なぜ新トレンドが起き始めたのか?私が研究や実践の中で感じていることをまとめると以下の3点となります。
①顧客との関係性を維持する必要性が増えた
トレンドを引っ張る事例、SaaS企業が多い印象です。リモートワークへの変化、オンプレミスからSaaSとビジネスモデルが変化することで、顧客とのリアルな場でのつながりが生じにくくなっています。
また、顧客接点が多いインサイドセールス・代理店・カスタマーサクセスなど、渡す相手のフェーズや状況も細分化しています。
例えばクラウド・セキュリティ分野でトップシェアを誇るSaaS企業のHENNGEさんのtetoteの制作事例。採用チームと制作したものですが求職者のみならず、代理店様やインナー向けなど、様々なコミュニケーションを前提に作られています。
従来より「顧客との関係性の種類も増え、質も変わり、それを改善・維持する必要性がある」ため、ノベルティがその媒介となってきているのではないでしょうか。
②社内でのコミュニケーションも必要になった
コロナ禍&リモートワークで社員同士のつながりが生じにくいという流れも。自社ロイヤリティーを上げる施策も各社取り組まれています。SmartHRのオンライン飲み会セット・LINE、DeNAのインターン向けギフトボックスも、社内のコミュニケーションに一役買っています。
この「社員みんなで同じ体験をしよう!」という企業ギフトボックスも最新のトレンドです。こんなの届いてみんなで画面越しに乾杯したらぜったい楽しい…
場がなくなった中でアイテムがつながりを補う。PCとスマホ上では感じられない「リアルなつながり体験」をノベルティで作る企業が増えています。
③SDGs的な意識が醸成されてきた
使われない企業ノベルティを作ることへの忌避感が高まってきています。本当に自分がもらって嬉しい・使われるものを作りたい。そういう想いがある方々が、従来より予算や手間をかけ、従来の早い・安い・大量生産のおまけノベルティではないものを作り始めています。
さらにSDGs文脈で、アイテム自体がサステナブルであるかどうかはもちろん、「ものづくりの文化を助けたい」「作り手の雇用を意識したプロダクトか」などの制作プロセスも発注担当者の選択ポイントになってきました。
金融証券のマネックスグループでは、捨てられるバナナの茎の部分の繊維で作ったエシカルな紙であるバナナペーパーでグッズを制作。
日経BP社の日経ビジネスは間伐材をスタンドに使っているエコなミニマルカレンダーを。このように弊社の事例でもエコ文脈は増えてきています。
ブランディングできる新時代の企業ノベルティの作り方
ではでは、「ブランディングできるノベルティ」を作るのか?研究家としての知見から3つ挙げてみました。企業ノベルティを作る方はぜひ意識してみてください!
①「アイテムの使用感」と「企業のブランドストーリー」の整合性をとる
届けたいブランドコンセプト(企業やサービスプロダクトが産む価値)とノベルティの使用感や効能を一致させる。これを意識するとガラッと変わります。
前述のSansanは「出会いを育てる」。サイボウズは「ビジネスに疲れた時の癒し」。企業やサービスのコンセプトと末端のノベルティが乖離せずつながっている。これがブランディングとして非常に重要です。
②ブランドカラーを印象的に反映させる
カラーは視覚的に伝わりやすい「ブランドのしるし」です。名入れロゴが1つ入るだけより、アイテム全体のカラーや、パッケージで表現することでよりその会社のブランド感が演出されます。例えばSmartHRの事例。全部ブランドのキーカラーがデザインとして要所に使われています。
③「ストーリー」や「気持ち」をメッセージに込める
企業のストーリーを伝える=ブランディングの役割。なぜこのアイテムを選んだのか?届けるあなたに何を伝えたいのか?私たちはどうビジョンを持っているのか?…を伝えるための言葉が必要になります。
ただ透明な袋に入れたアイテムを渡すのでなく、そこにメッセージを添えて、私が何者であるか?をノベルティを通じて伝えると、従来と違う印象を簡単に届けることができるのでおすすめです!
おわりに
企業ノベルティは少しずつ進化しています。もちろん平成の「おまけのようなノベルティ」の良さはあります。一方で、「それは要らないし・効果もないし・エコでもないよね」という機運が高まっています。
企業の担当者さんたちが、さまざまな視点が埋め込まれている新しいノベルティを作っても、なぜか企業ノベルティってあまり表立って評価されない!基本的にまだ「おまけ」の世界なので…
今後はフィギュアスケートやM-1グランプリのような加点方式で「ブランドストーリー・アイテムのインパクト・アイテム制作プロセス・パッケージ・渡す場での体験」などが総合的に評価されるように変わっていくと予想します。
私としては良いノベルティを紹介し、仲間を増やすべく発信を続けていきたいと思います。新時代の企業ノベルティが世の中に増えるきっかけに、このnoteがなりますように!