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一般教養としてのソナタ形式

ソナタ形式がどういったものか知っていますか。

・音楽の授業で習ったことがあるが詳しいことは覚えていない

・ピアノソナタという言葉なら知っている

・ベートーヴェンなど音楽史における古典派の時代に流行った楽曲形式

といった人が多いのではないだろうか。

この記事では一般教養としてのソナタ形式について書いていく。

さて、一般教養としてのソナタ形式とは何か。

私は一般教養というものは古典であるものを勉強することだと思う。その観点からいえばソナタ形式は音楽においての古典となる形式であり知っていてほしい。ソナタ形式を知ることで音楽以外、例えば小説など物語における構造と比較して考えたり、論理的構造をもつものと対比して考えたりするのも面白いかもしれない。この記事では物語で例えた場合こういうものだという例を出していこうと思う(あくまで例なのでイメージ)

ソナタ形式はソナタの第一楽章で使われる形式だ。

ソナタは通常、3楽章形式や4楽章形式でありそのうち第一楽章がソナタ形式となる。

ソナタであっても2楽章は緩徐楽章として二部形式や変奏曲形式となる。終楽章ではない3楽章はメヌエットやスケルツォ。終楽章はロンド形式やロンドソナタ形式が多い。

ソナタ形式には第一主題(the first theme)と第二主題(the second theme)が含まれる、これがソナタ形式の骨格を為すものだ。大抵は第一主題と第二主題は対照的になっていること多い。第一主題が激しいものであれば、第二主題は穏やかなものなど。また、第一主題と第二主題の間に動機的関連を持たせるものも多い。動機(モティーフ)とは独立した楽想を持った最小単位のいくつかの音符ないし休符の特徴的な連なりだ。主題、すなわちテーマと聞くと「この物語のテーマは」といった文章を想起することも多いと思う。そういったことと関連付けて考えてもいい。

ソナタ形式は提示部、展開部、再現部といった3つの部分で構成される。再現部のあとに終奏(コーダ)が付く。終奏は物語でいうとエンディングだ、カタルシスを得られるパッセージが多い。序奏は付かない場合もある。物語でいえば、いきなり本題に突入するパターンだ。

提示部は名前の通り、第一主題と第二主題を提示する部分だ。第一楽章のソナタ形式を一つの物語と考えると第一主題と第二主題を登場人物に例えることもできるだろう。再現部では文字通り、この主題を再現するが急に新しい主要登場人物を出すことはできない。推移部は経過句などではメインキャラクター(主題)以外の脇役やメインキャラと関係のない群衆を登場させることができる。また、ロマン派時代に作られたソナタでは第三主題が登場することもあるが、基本は第二主題までで構成される。

第一主題と第二主題は調性としては近親調の関係になるようにできている。長調であれば第二主題は属調、主調の完全5度上の調となる。完全5度上とは半音でいうと7つ分上方に移行することだ。半音2つで全音。12半音で1オクターブとなる。

提示部では第一主題と第二主題が登場するが第一主題の後にすぐ第二主題が出てくるわけではなく推移部や経過句が存在する。物語でいえば場面転換だったり情景描写などかもしれない。また第一主題がAとし、A’として出すことを確保という。(大事なことなので二回言いましたといったところだろうか)ちなみに提示部も二回繰り返すことが多い。(根幹となる第一話を周知のために再放送するようなものか)しかし、試験などでは大抵時間的な都合などで提示部を二回繰り返さないことが多い。

展開部は文字通り提示部の主題をあれやこれや展開するものだ。主題を登場人物として見立てたとき、その主題のもつ性質に合わせて様々な旅をすることになる。同じ主題を展開させようとしても作り手が違えば異なるものとなるだろう。

再現部では文字通り提示部で示した主題の再現が行われる。だが、もちろん提示部と全く同じではない。物語でいえば展開部を通して色々な経験を積んだ登場人物がはじめの町に戻ってきたときの変化が加味されるといった感じだ。しかし、展開部を経たとはいえ同じ人物であるし、またメインの登場人物と別人が出てくるということはない。物語なら面白ければありかもしれないが二期に一期にいないキャラが出てくると読者に嫌われることがあるのを覚悟したほうがいい。

最後にコーダだ。ここは物語の帰結、クライマックス、技巧を交え堂々完結といったような感じ。

ここまで簡略的にソナタ形式について説明してきた。重要なところは

・第一主題と第二主題が対照的な関係となりながらも最小単位となる動機(モティーフ)は関連付けられることが多いこと

・(序奏)、提示部、展開部、再現部、(終奏)といった形をとること

・ソナタ(奏鳴曲)の第一楽章に用いられること

といったところか。さらに詳しいことは調べてみるといいだろう。

最後に私の好きなソナタ形式の曲(楽章)を紹介して終えることにする。

シューマンがロマンティックな大ソナタと名付けようとしたソナタの第五楽章。

ウィーンの謝肉祭の道化の第五楽章 演奏:Leon McCawley

演奏:Arturo Benedetti Michelangeli(楽譜付き)

変則的で自由なソナタだ。ソナタは基本3、4楽章から成るのではなかっただろうかと思った読者は正しい。ソナタはベートーヴェンやモーツァルトなど古典派の作曲家によって形作られてきたものだ、その尊敬からかシューマンは実際にはこの曲をロマンティックな大ソナタとは名付けなかった。この第五楽章は楽曲のフィナーレを飾るに相応しい色彩感豊かで生き生きとしたものだ。第一主題とは対照的な第二主題も優雅だ。フィナーレのフィナーレとも呼べるコーダも良い。

他にも紹介しようと思ったが、冗長になりそうなのでここでこの記事を締めようと思う。ソナタは非常に論理的で奥が深い。色々なソナタを聴いてみてほしい。









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