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二木先生応援


10万部突破キャンペーンをしているので、以前書いた記事の感想部分だけを複製してます。前のは有料記事の後ろにつけてたので…!


『二木先生』
2022年一番のヒット。ほんと面白かった。何回も読んでる。

10万部突破おめでとうございます。
すごすぎる…!でも納得の結果でもある。


走り描きの絵ですが…ほんとに凄い良いです。


以下、ネタバレ。



この話は、クラスの中で浮いてしまうちょっと発達障害っぽさを感じさせる主人公と、表面的には「普通」で「人気者」の美術教師の話。ちなみに作中で発達障害の検査を受けるけど診断は降りなかったという描写もある。
グレーゾーンなんだろうな。




この美術教師の二木、いかにも常識人みたいに振る舞っているけれど、実は小児性愛者、ロリコン。

しかも、仕事の合間に漫画を描いていて、それがロリコン系漫画のしかもものすごくエグい部分まで描いてる内容のエロ漫画。親戚のお兄ちゃんのおうちにいった少女が犯されるみたいな、そんな内容の。

そんなロリコンが「常識人」の顔をして高校教師をやっている。それだけ聞いたら「えっ気持ち悪い」って、反射的に思ってしまうじゃないですか。

でも二木先生がどうしてそうしているか、について語るのを聞いていたら、自分の価値観がいかに偏っていて、いかに相手の立場に立とうとしていなかったかを痛感してしまう。

”小学生のころは同級生が好きだった。でも歳を重ねるにつれ、自分がどんなに成長しても、好きになる子の年齢が変わらないことに気づく。好きになった子も、ある一定の歳になると急に恋愛対象でなくなってしまう。”

そんな感覚、自分で持ちたくて持っているはずもないのに。

そして自分自身のその性癖が、社会的に認められるものではないという自覚もきちんと持っているからこそ、それが許される社会に片足を入れて生きることを選んだのが、二木先生で。だから漫画の世界で抱きたい相手を抱き、現実世界では決して女児に手を出さないと決めている。

「もし次生まれ変わるなら普通の性癖に生まれたい」と笑う二木先生を想像したら切なくて切なくて。でもどんなに理解しようと思っても絶対に何も変えられないこの「普通じゃない」こと…。

発達障害とかLGBTとか、色んなマイノリティがあるけれど。社会的に存在が認められれば環境を変えられるマイノリティもたくさんある中で、小児性愛は、恐らく、絶対に認められることはないものだ。

最後に二木先生が選んだ道が明るいものであることを願って、物語の先を色々想像してしまったりした。今までなんとなく「ロリコンは気持ち悪い」と頭ごなしに決めつけてしまっていたけど、完全に偏見だったことに気づく。ロリコンという性癖も、自らなりたいと思ってなったものではない。

とはいえわが子がそういう性癖を持つ、二木先生みたいに自制がきかない人に何かされたらと思ったらやっぱり怖いって思ってしまうよ。
ただ、どれだけ世間から嫌われる人間がいたとしても、そうなりたいと思ってなったわけではないのだと考えさせられる。

見える世界、知る情報だけで相手を決めつけてしまってはいけないと改めて自戒するきっかけをくれた本作に感謝。



この本を読んだあなたにオススメ、と帯に書かれていた本『ドリアン助川 あん』も良かった。(2冊め紹介突入)


これまた、自分の中にある偏見や思い込みや差別観をチクリとくすぐってくる作品。

ハンセン病という病気の存在を、私は名前しか知らなかった。死に至らないまでも、痛みとともに体が歪んでいく病気らしい。その見た目から、ハンセン病患者というのは見てすぐわかるらしい。

伝染力は低いけれど、伝染る病気であるがゆえにハンセン病患者はずっと患者だけが住むコミュニティを成形され、そこに隔離されていた。治療法が確率され、治癒した時点で感染はしないと言われるようになったのに、ハンセン病を知る人のその差別意識がかわることはない。見た目で気持ち悪いとか、病気であるとか、そういう自分の中にある情報で相手をそういう目で見てしまう現実は確かにある。

それをしないようにしようと思っても、その行動自体は無意識の範疇であるから、「そうしてしまっている自分」を認めた上で、相手にどう接していくかをきちんと考えていくことが大切なのではないだろうかと思った。
これは、2冊ともに通じる感想かもしれない。
差別される側の生きかたがとても清々しく、私もこうありたいと思った。

映画にもなってるらしいから、ちょっと観てみたいなぁ。文章だけだと、どういう見た目でどういう動きなのか、ハンセン病患者というものを良くしらないので想像が出来ない。

**

つい最近、ハンセン病療養所で薬物実験が行われていたってニュースになっていましたね・・・

この本を読んだあとにこのニュース知って、とても痛ましいと思いました。この病気になったなら別にどんな薬を打って、どうなったって構わないだろうというお偉い人の嫌な感情みたいなものを垣間見た。

人間は美しくも醜い。

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