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お金のたのしみ方

長女が、突然「お店まで歩いてシールを買いに行く」と言い出した。何やら作りたいものがあるそうで。

自分のお小遣い袋を探るも、中に入っていたのは40円程度。
お手伝いや目標達成で細々とお金を稼ぐ事ができるようにしているのだけど、欲しいものがあるとすぐにそこから使うから、長女のお小遣いはなかなか貯まらない。

これじゃ買えない…と寂しそうにしていたので、夏休み、ダラダラと動画やゲームばかりしてるよりはシールを買って工作する時間はあってもいいか、とカンパしてあげることにした。

「今、細かいのないから、ここから使いな」と千円を渡す。

元々少ないお小遣いからシールを買うつもりだったんだから、せいぜいその中から2、300円使うものだと思っていた。

冷たいお茶を持ち、帽子を被ると長女は意気揚々とお店まで歩いていった。

1時間程度して、帰宅した長女が袋から出した商品を見て驚く。色とりどりの折り紙、マスキングテープ、シール、紙粘土。ビーズのようなシールを見て、次女が歓声をあげる。

「…千円、全部使ったの!?」

いや、たしかに、この中から数百円に抑えろとは言わなかった。でも、まさか、全部使うなんて…。

少しの呆れと、自分の考えの浅さを悔いた。いや、子どもなら、そりゃ使うか。
でも、まさか、まさか全部使うかよ?

そう思っていた私に長女はキラキラした笑みで得意げに答えた。

「欲しいものたっくさんあったんだけどね!?頑張って、千円以内で買えるように考えた!
シャボン玉が出る400円のステッキも凄く気になったけど、我慢したんだよね」

そう言う姿を見て、自分が子供の頃、遠足のおやつを買うためにお店で試行錯誤した時間を思い出す。
300円の枠の中で何を買うか。ちいさなものを沢山買うか?大きなものを少しだけ買うか?味の組み合わせは?遠足のあと余ったおやつを楽しむ時間もあっていい。

そんな事を考えながら、限られたお金を握りしめて、自分の好きなものを選ぶ時間はとても楽しかったということを思い出す。

そう言えば、今の子って、そういう時間ないんじゃないだろうか。

400円のステッキも買えるお金は今持ってるけど、買わずに細かいシールを選ぶ、そうやって悩む時間すら楽しそうだ。

戦利品を姉妹で広げて、ふたりで何を作ろうか、と楽しそうにしているのを見たら、さっき頭によぎった気持ちはどこかへ吹っ飛んだ。
むしろ、この時間を千円で買えたなんて、なんて素敵なお金の使い方をしたんだろう。

「暑かったからね、公園とかで日陰にこまめに入って、お茶飲んで休憩しながら行ったんだよ」

あまり外に出たがらない長女にとっては、小さな大冒険だった。
これは、楽しかったろうなぁ。

数時間後、2人でせっせと作った折り紙のおうち。

多彩なビーズがふんだんに使われ、パールカラーの折り紙や、マスキングテープで飾り付けられたおしゃれなおうち。
たくさん、色々買ったからこそ作れる作品。

シールの台紙までもが家の土台に使われて、隅から隅まで買ってきたもので楽しんでおられる。

床は紙くずまみれだし、シールは床に散らばって足の裏にくっついてくるし、楽しくなりすぎて寝るって言ってくれないし、翌日は妹が張り切って5時前に起きてきて続きやってるし、親は、何だかんだ、疲れてしまう。

けど、その疲れの中に言葉に出来ないような、見ているだけで何だか笑ってしまうような温かいものがあるのも確かで。

いつも振り回されてグッタリしてしまうけど、やっぱり子どもからは良いものをたくさん貰えるなぁと思うのです。

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