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君待ちの星霜 第4話

ひとつ前




反転


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「…私…さ」

背中から佳帆の声がする。
空になったブランコが錆びた音を立てた。

「優太といる時間が好き」

優しい言葉が胸を刺した。

「一緒にいると凄く楽しいし」

「ウソもつかないでいられるし」

やめろ。

やめろ。

これ以上優しくしないでほしい。

「でも、この”好き”が…
恋愛感情としての、好きなのか、わかんない。

だから、付き合おうって言われたとき、怖くなった。」

俺は振り返って佳帆を見た。
佳帆はうつむいて、両手を重ねて握りしめて、一言一言、言葉を選んでゆっくり話している。

「でも…。

私にとって、優太は、大事な人なんだよ…」

”俺も君の事が大事だよ”とでも言って、このまま佳帆を抱きしめられたらどんなにいいか。

でも…”いい友達”は。
そんなこと、しちゃいけない。

「…別に…俺に気を遣って、そんなこと、言わなくていいよ。
大丈夫だよ、別に、俺、大丈夫だから…」

何が大丈夫なのか自分でもわからなかった。
笑った顔を作ろうと思ったけど、上手に笑えなかった。

声がうまく出ない。震えた声で、何事も無かったように話そうと努めた。

佳帆にとってこれ以上重たい存在になりたくない。

「俺、佳帆と同窓会で会えたとき、ほんと嬉しかった。
また前みたいに仲良く出来たらいいなって、ただそれだけ思ってたんだ。

…でも俺、知らない誰かの隣で佳帆が笑ってると思ったら、それが凄く嫌だった。泣いてるのは、もっと嫌だった。

そんなら俺がいつも隣にいれたらって、馬鹿みたいに単純に考えて…
それだけで、思わず付き合おうって言っちゃったけど…

別に、友達としてでも隣にはいられるし…

それで…それで、いい…」

「だめっ…!」

俺が最後まで話し終わるより前に、佳帆が言葉を遮った。

「それで良く、ないんだよ…!!」

佳帆はまっすぐ俺を見た。

「わ、私…!!!

優太が、好き」

予想のしていなかった言葉に、頭が真っ白になった。


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「この”好き”が、恋愛感情なのか、私にはわかんない。
でも、恋愛感情としての好きじゃないとしても。
優太なら付き合ってみても、いいんじゃないかって…。

…ただ仲良くするなら”いい友達”でも…いいんだけど…

どうせなら…もう一つの”好き”も、知ってみたくなった」

佳帆が話すのを、俺は呆然と眺めていた。
付き合ってもいい、って、どういうこと?

落ち着いていた心臓がまた高鳴りはじめた。

「…なんて。ダメ、だよね。
私が、友達でいたいって言ったくせに、やっぱり付き合いたいとか…
そんなの…勝手すぎるよね…」

俺は、反射的にその言葉を遮って、佳帆の肩を強く掴んだ。

「俺も…佳帆のことが、好きだから!
断る理由なんて…ない」

突然肩を掴まれて、佳帆は驚いた顔をしてこっちを見た。

でも、言ってたじゃないか。付き合うのは、怖いって。
無理して付き合って、結局フラれるなら付き合わない方がよっぽどいい。

「…そう、言って貰えることは凄く嬉しいよ。

でも…恋愛は怖いって言ってたでしょ。
俺に気を使ってるなら無理しなくていいんだよ。
本気で言ってるの?大丈夫なの?」

佳帆は、こちらに顔を向けたまま黒目を小さくゆらゆらさせた。
心音が頭のてっぺんまで響いてくる。耳が熱い。


「…うん。大丈夫」


佳帆は小さな声で、そう言って笑った。


何かが突き抜けていく感じがした。頭が痺れている。
自分の中の理性がふっとんでいく。
肩を掴んでいた手が、ごく自然に佳帆の体を自分の方へ引き寄せていた。

冷え切っていた身体に、小さな身体からぬくもりが伝わってきた。
凍えていたものがゆっくりと溶けていく気がする。

自分の鼓動と、佳帆の鼓動が交じった。

多分、俺は何年も前からこうしたかった。
心のどこかでずっと欠けていた何かが、かちりとハマった気がした。


お互い大人になったんだよ


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佳帆の髪の匂いがする。

「ちょ…、ゆっ…あの」

腕の中から、戸惑うような小さな声がした。

抱きしめる腕の力が思わず強くなる。

俺より身長が20センチは低い佳帆が腕の中でバタバタ動く。
背中側に回した手が俺の背を打った瞬間、すっ飛んでいた理性が戻ってきた。

「あ…あっぶねぇ………」

腕の力をゆっくりと緩める。
佳帆は引きつった顔をしながら後退りした。

「ご、ごめん…思わず………」

勢いで抱きしめた恥ずかしさに、思わず手で顔を覆った。
気持ち的には押し倒すぐらいの勢いだった。
こんなの…俺が変質者として通報されてしまう。

「び、びびび、び、びっくりするじゃん……」

佳帆が胸の辺りの服をぎゅうっと握りしめて、うろたえながら言う。
理性がギリギリで頑張ってくれて良かった。

「…俺。佳帆が”恋愛するの怖くない”って思えるようになるまで…
待ってるから」

無意識とはいえ、もう10年以上待っていた。
ここに数年上乗せされるぐらい、どうってことはない。

それまでは、友達以上、恋人未満でいい。
今までみたいに気楽に遊べる関係のまま、何も変わらなくても…
それはそれでいい。

…いや。本音は、良くない。

でも、嫌われて、会えなくなるよりは、ずっといい。

「…ありがと」

佳帆はうつむいて、目を伏せ、小さく呟いた。
…かわいい。
急に、今までよりずっと可愛く見える気がする。

もう一度、抱きしめたい衝動が湧き上がるのを、俺はぐっとこらえた。

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照れ隠しのように佳帆は笑って言う。「まー多分、私が恋愛怖くなくなるまで待ってるうちにさ…その間に私のダメなとこがいっぱい見えちゃって、優太から”やっぱごめん”って言われちゃうんだろうな」

佳帆はいつもこうだ。
きっとダメだと前もって言い訳しておいて、失敗したときに『ほらね』と笑う。
いつか別れることを前提に婚活したり…とにかく、いつか来るかもわからない失敗に対して、佳帆は昔からいつも過剰すぎるほど気持ちに保険をかける。

「出た、佳帆の悪い癖…
いっつもそうやって、失敗に備えて前もって言い訳するよね。

ダメなとこなんて、そんなの…お互い様でしょ?
俺も…ダメなとこぐらいあるし。

ダメなとこも全部ひっくるめたのが佳帆だし。
それをわかってて…俺、好きになってるから」

俺がそう言うと、突如佳帆の頬に涙がこぼれた。
良かれと思ってかけた言葉で大泣きされた、子どものころの記憶を思い出す。

相手の事を思って言ったつもりなのに泣かしてしまうのは、相手の気持ちをわかろうとしたつもりでも全然理解できていないということなのだろうか。

「あれ…?
ご、ごめん。俺、なんか、変なこと言っちゃった…?」

うろたえながら俺が尋ねると、佳帆は、口をぎゅっと横に結んで首を横に振ると「…言ってない」と答えた。それでも涙はぽろぽろとこぼれ落ちる。

俺はただ、ただ、どうしていいかわからずにそれを見ていた。
佳帆はずず、と鼻を鳴らした。

「…優太が、昔から、すごすぎるだけ」

「す、すごい?
何が?え??」

戸惑う俺を見て佳帆は笑った。

「あー!なんか、お腹すいた!
今何時?わ、7時近い!いつの間に!

…ね、牛丼でも食べに行こっか」

今泣いていたことを無かったことにしようとするかのように、佳帆は涙を指で拭った。

「…牛丼?
なんだ、元気そうだね…安心したぁ」

何かやらかしたかとドキドキしていた胸をなでおろす。

佳帆が少しもじもじと両手の指を絡めながら遠慮がちに言った。

「…えと…じゃ…久しぶりに、手でも、繋いでみる…?」

友達以上恋人未満。
手を繋ぐのが許されるとは思わなかった。
少しでも触れられるなら大歓迎。

「いいね!」と叫ぶと俺は迷わず佳帆の手をとった。
あまりに迷いがなさすぎて、佳帆が一瞬身を引いた。

佳帆の手はとても小さく、指はとても華奢だ。

最後に手を繋いだのは一体何歳の時だったろうか。
今繋いだ手は、小さくても、もう子どもの手ではない。

「…優太の手…大きくなったねぇ」

佳帆が俺の顔を見て笑った。
自分の隣に佳帆がいて笑ってくれていること。
小さな手が自分の手を握り返してくれること。

ただそれだけで幸せだった。

「大人になったんだよ。
…お互い、ね」

繋いだ手を、俺はさっきより少しだけ強く握った。


策略


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二人で牛丼屋のカウンターに並び、注文をした後。
俺は幸一と智やんに連絡を入れた。

今後また4人で会うこともあるだろうし、二人には付き合うことになったことを早いうちに知らせておいた方がいい。

二人に報告したことを伝えたら、佳帆は「うへぇ、何言われるんだろ」と苦い顔をした。

なんとなしに話している間に目の前にできたての牛丼が2つ並んだ。
スマホがテーブルにバイブ音を響かせる。
もぐもぐしながら、画面を覗く。

きっとふたりとも驚くだろうと思っていたのに、返事は至ってシンプルだった。

『お疲れさん』と、智やん。

『頑張ったなぁ』と、幸一。

…いや、もっと違うリアクションあるだろ。
「えー!?付き合う!?」とか「俺たちのいないとこで何があったんだよ!」とか…

これじゃまるで「今日告白してくるから」って前もって二人に伝えておいたかのような反応じゃないか…

『なんか反応薄くない?』と俺が返すと、智やんからすぐ返事が来た。

『優太、佳帆のこと好きだろうなって前から気付いてたし』

…え?と思っていたら、たたみかけるように幸一からも返事が来た。

『二人きりのチャンスは逃さないよな』

…え。

え、ええええええ。

や、ちょっと待ってくれ。
前から気付いてたって、一体いつから。
再会してからみんなで会ったのって2回だけだぞ。

まさか中学の頃?
俺自身がわかってなかった気持ちが、二人にはわかってた?
クラス会企画もまさか、あわよくばこうなることを狙って…

…いや、いやいや。
そんな。まさか。

そもそも、今日は、ふたりきりになったのは偶然で………

待てよ。
偶然…偶然……?

『まさか…今日、二人してキャンセルしたのって…』

恐る恐る、聞いてみる。

二人から光の速さで返信が来る。
どう考えても、ふたりとも、完全に画面の向こうでニヤニヤしながら俺の反応を楽しんでいる。

幸一『予定通りキャンセルしました』

智『それにしたって上手く行き過ぎじゃねw』

二人の返信文を読んで、俺は思わずテーブルに崩れ落ちた。
それを見た佳帆がびっくりして「どうしたの!?」と声をかける。
俺はだまって、今のやり取りを佳帆に見せた。

佳帆はやり取りを見て、あはは、と声を出して笑ったあと「そっかそっか…優太はわかりやすく私の事を好きだったんだぁ…」と恥ずかしそうに言う。
深く考えずにやり取りを見せたが、改めて考えると俺もちょっと恥ずかしくなった。スマホがまた小さく揺れる。

智『ま、おめでとさん』

幸一『別れんなよぉ』

俺は思わず「…ぜってぇ別れねぇし!!」と返信文を打ち込んだ。

送信したあとふと横を見たら、顔を真っ赤にした佳帆がこっちを見ていた。
周囲の人も何人かチラチラとこちらを見ている。
無意識に声が出てしまっていたらしい。しかもそこそこの音量で…。

気恥ずかしさをごまかすように、俺は目の前の牛丼を一気にかっこんだ。


かわいいよ


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仕事あがりや休日。時間が合うときはちょこちょこと俺と佳帆は二人で会って遊ぶようになった。

佳帆はほぼ毎回、待ち合わせの時間に遅れてきた。あまりに遅れてくるので待ち合わせの時間を20分後ろ倒しにしてみる作戦を一度立てたが、後ろ倒しにするとその分さらに遅刻するので諦めた。

絶対に間に合うように向かっているのに何でか毎回途中でトラブルに見舞われるらしいが、ここまで毎回だと、ちょっと疑わしい。

佳帆は食品メーカーで仕事しているそうだ。
なんとなく就職しただけで私にはあまり楽しい仕事ではない、とぼやく。俺が介護職をしていることを話すと「昔っからおばあちゃんっ子だったし、おじいちゃんおばあちゃんから人気あったし、適職だね」と笑った。俺も今の仕事は、大変だけど自分には合っていると思う。

仕事のあとに一緒に夕飯を2時間だけ。
休日に、半日程度ふたりで出かけるだけ。

デートというには甘さもなく、本当に気の合う友達同士で一緒に過ごすような時間。”付き合っている”同士っぽいことと言えば、たまに遠慮がちに指先だけで手を繋ぐぐらい。そんな関係でも、俺は幸せだった。

ある休日。待ち合わせ場所の森林公園のベンチで俺は一人座っていた。

「また遅刻…か。
何回目だよ、まったく」

毎度のこととは言え、なんとかならないのかと思いつつスマホを見ているとパタパタという足音とともに「遅れてごめん!」という声がした。
いつも通りの流れだな…と顔を上げて、思わず息を飲んだ。

「美容室が…思ったより混んでて時間かかっちゃって…」

佳帆は、バッサリと髪を切っていた。

小学校の入学式の翌日に、佳帆が自分で切ったと言っていた、ショートヘア。
それを見て、佳帆になんて言ったんだったか。
忘れてしまったけど、俺が言った言葉で泣かせた事だけは覚えている。

今は…何て言うのが正解だろうか。


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佳帆は視線を逸らしながら「…髪、変じゃない?」と消え入りそうな声で言った。

「変じゃないよ、似合ってる」と俺は笑って返す。

「か…かわいい、かな」

…その言葉に、驚いた。

中学を卒業するまでの間。

佳帆は「かわいい」と言われることを過剰に嫌がっていた。

佳帆は”出来るだけ可愛いって言われたくないから”と髪を伸ばすことを拒み続けていた。佳帆のお母さんから「優太くんからも言ってやって、女の子らしく可愛い髪型にしたほうがいい、って。いつもジャージとかパーカーとか、男の子みたいな服ばっかり着たがるし…」と呆れたように言われたこともあったけど、俺はそういう佳帆が好きだった。

付き合うことになって、一緒にいる時間。
何気なく見せる仕草や行動が全部愛おしく見えて、口から「かわいい」という言葉がこぼれそうになったことが幾度となくある。
でも、その言葉は言っちゃいけないと思っていたから言わないように必死で耐えていた。

短い髪に戻したのは、改めての意思表示なんだろうと思った、のに。

「…かわいいって言われるの、嫌いじゃなかった?」

「やっぱ…覚えてる、よね」

「覚えてるよ、佳帆、誰かにかわいいって言われる度に怒ったり泣いたりしてたじゃん」

「うん…昔はね。言われるの、嫌だった。

でも、今は…言ってもらいたい気分っていうか…」

マフラーに顔をうずめながら、佳帆はもごもごしている。

「…へぇ。そっか。
言っていいんだ」

ずっと我慢していた言葉。
思わず顔が緩んだ。

「…かわいいよ」

佳帆はその言葉を聞いて大きく目を見開いたかと思うと、ベンチに座った俺の胸に飛び込んできた。


恋が怖くなくなるまで


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それはあまりに突然で、正直何が起こったのかすぐにはわからなかった。
美容室のシャンプーだろうか。いつもと少し違う匂いがする。
飛び込んできた佳帆は俺の首の後ろに手を回して、ぎゅうと抱きしめてきた。
これは…抱きしめ返していいやつなのか。
自分の手が宙で行き場を失って迷っていた。

「優太…。
嫌でもわかるって、本当だった」

佳帆が俺の耳元で囁いた。
出来るだけ平静を装って「なにが…?」と返す。

「恋の”好き”と…
友情の”好き”の違い…。

髪、切ってるときずっと思ってた。
優太は何て言うだろうって。
”かわいい”って、言って欲しいって思った。

私、こんな気持ちになったの…
多分初めてだと思う…

でも、いざ、目の前で”かわいい”って言ってもらったら…
どんな顔していいかわかんなくて。
恥ずかしくて顔見れなくて…

でも…凄く…嬉しい…
ごめんね、突然。びっくりするよね」

行き場のない気持ちが込められているかのように、抱きしめた腕にどんどん力が入ってきた。俺はそれを押し返すように、佳帆の身体を自分から離して目を合わせた。

不意に合った目に、ひゅっと息を吸って佳帆が固まった。

「両方わかったら…嫌でも、わかる」

少し首を傾げながら俺がそういうと、口を真一文字に引き結んで佳帆は小さく頷いた。

「…それで…違いがわかって…。

俺とこのまま恋をすることは…怖い?」

数秒ほどそのまま固まった後、柔らかく笑って佳帆は言った。


「…大丈夫。優太なら怖くないよ」


その言葉を聞いて、俺は「よかった…。ギリギリセーフだ」と呟いて佳帆の頭を撫でる。

「え?何が…」

頭を撫でた手で顔を近くに引き寄せて、言葉を発しかけた佳帆の口を、俺は静かに唇で塞いだ。


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数秒間、唇を合わせたあと、ゆっくり顔を離す。
突然の出来事に目を白黒させている佳帆を見て、俺はニヤリと笑った。

「"恋愛するのが怖くないって思えるようになるまで"は、ちゃんと待った」

触れられるのが指先だけというオアズケされていた相手に、突然抱きつかれて耳元でささやかれ、好意を伝えられたのだ。

軽いキスだけで返しただけでも俺は俺を褒めたい。

「しかも、かわいいって言って欲しいなんて…」

胸の奥から今まで抑えていた衝動が沸き上がってくる。
もう、好きなだけ伝えていい。
俺は固まっている佳帆を改めて抱きしめた。

「かわいい。かわいい。かわいい…!!!」

「…そっ…!そんなに言わなくて大丈夫…」

腕の中にいる佳帆がバタバタ抵抗したが、俺は抱きしめたまま「いやだ。言う」と笑った。

「だって今まで、ずっと言いたいの我慢してた」

それを聞いた佳帆はどこから出したのかわからないような変な声を出して、俺の身体を押して後ろに身を引いた。

「や、やだっ、ナニソレ急にそんな甘いの…
ちょっと無理、むりむり…」

首を横にブンブン振って、2、3歩後退りしたかと思うと、さっきキスしたことも思い出したのか、ハッと口元を両手で抑えて佳帆はその場でうずくまった。

「ほんとに、ほんとに、無理……」

ただでさえ小柄な佳帆が、小さく小さくうずくまって恥ずかしがっている姿は、改めてたまらなく可愛かった。

「…そういうトコもかわいい」

ごく自然に口から出た言葉を聞いて、うずくまっていた佳帆がこちらを見た。

何か言いたいけど何を言っていいかわからないというふうに口をパクパクして、少し涙目になっている。

ちょっと急に攻めすぎたかもしれない。


*
*

最終話


サポートいただけたらそれも創作に活かしていきますので、活動の応援としてぽちりとお気軽にサポート頂けたら嬉しいです。