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食品製造副産物飼料の使い方やら注意点やらメリットやらデメリットやらetc.

 私の仕事は食品製造副産物や食品の賞味期限切れなどの人が利用出来ない、人が利用しないものを主に飼料や肥料として再利用出来ないかと日々考えることです。
 今年も醤油粕やおから、チョコレート、酒粕、アーモンド、豆乳粕、デーツにみかんの皮、澱粉、メカス、アミノ酸抽出残渣、ジュースの搾り粕など、120種類以上の色々なものを扱わせて頂き、農家の方々に給与してもらいました。
 ほとんどアイテム数を数えたことはないのですが、数えてみると、まぁたくさんあったなぁと。しかし、これも排出業者が飼料に出来るように仕分けや梱包をしてくれて、農家の方々が使用してくれたおかげです!

 ほとんどは飼料として取り扱っているのですが、その飼料を販売させて頂く際に「どうやって使うの?」「どれくらい給与していいの?」「メリットは?」「こんなの牛や豚にあげて大丈夫?」などなど見たことも使ったこともない飼料に対して疑問や不安を聞かれることが多々あります。
 実は昨日も新規のお客様で食品製造副産物や未利用資源をそれほど使用したことのない方に聞かれました。
 なんだか非常に使いづらく難しい特別なものだと思っている方がたくさんいると思います。

 昨今、飼料分析や飼料設計ソフト、家畜栄養学がものすごいスピードで進歩しています。昔のように使ったことのない飼料は経験と勘で牛や豚を見ながら使いこなすという感じではなくなってきています。当然このような感覚は今でも非常に大切な部分です。しかし、経験がなくても科学的な視点で見ていけばたくさんのことをフォロー出来るようになってきています。
 
 基本的には、配合飼料やとうもろこし、大豆粕、ナタネ粕、コーングルテンフィード、ふすま、ビートパルプ、小麦や大麦などの一般的な飼料を使う時と同じように飼料設計することが出来れば大きな問題はないです(この飼料設計が出来るというのが実は一番難しことではありますが・・・)。
 飼料設計の基本さえ押さえていればそれほど難しいものではないと約20以上で数百種類?の変わった飼料を扱ってきて思います( 偉そうに言ってますが、すべて農家さんを筆頭にいろいろな方に学ばせて頂き今があります)。
 
 そんなこと言っても上手くいかなっかた!あんなのもう使わない!と思うような苦い経験をした方も多くいるかと思います。実はその原因は使う側(農家)ではなく、提供する側(飼料販売業者など)に問題があったりすることも多々あります。私もそんな失敗をしたことがあります。そんな話をさせてもらいながら農家さんのメリットやデメリットを伝えて、少しでも多くの未利用資源を有効活用して頂き、「もったいない」を無くすと共に飼料コストの低減に役立てて頂けたらと思います。

 まずは飼料設計の基本さえ押さえていればと簡単に言ってしまいましたが、実はここが一番大切でハードルが高かったりします・・・ここはしっかりとした知識がないといけません(私ごときが言う発言でもないし、私よりも数倍家畜栄養学に長けている方がいる中でこんなこと言うのも恐縮ですが、最低私くらいの知識があればなんとかなります。なると思います)。それなのになぜ失敗するのか?上手くいかないのか?

 食品製造副産物や未利用資源は同じ名称でも全く違う栄養価のものが多々あるからだと思います。私もこれで大変迷惑を掛けた経験があります。

 どういういことかというと、例えば醤油粕のCPは18~50%くらいまでのものがあります。脂質は10%~35%くらいのものがあります。よってTDNは70~110(牛の場合)くらいの幅があります。これを同じ「醤油粕」という商品名で売られています。これは同じ飼料でしょうか?商品名が同じであっても全く異なった飼料です。

 これは醤油粕に限ったことではありません、酒粕でも、水分が45~65%( 酒粕は見た目では水分含量は分かりずらいです。それは糖分が水溶性だからです)CPは10数%~60%、澱粉は数%~50%、糖分も数%~50%のものもあります。おからであればは水分含量が65%~80%、豆腐の作り方によってはCPも15%~30%くらいの違いがあります。みかんの皮もそうです。みかんの皮は早生(わせ)、中生(なかて)、晩生(おくて)により成分が違います。 
※養豚に対しての飼料分析等についての問題点については下記をご覧ください。
(食品製造副産物飼料の養豚での使い方や思うこと①食品製造副産物飼料の養豚での使い方や思うこと②)

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醤油粕

 こういった同じ商品名であってもメーカーAの醤油粕を納品して、次はメーカーBの醤油粕を納品してしまうと、牛が良い意味でも悪い意味でも反応してしまうことがあります。これはメーカーが違うから悪いというわけではなく、メーカーが違っても同じような栄養価のものを納品することが出来れば全く問題ありません。私は同じような栄養価であってもどうしてもメーカーを変えなければいけない時には出来る限り農家さんへ伝えるようにしています。時にはメーカーが変わることによって飼料設計の変更をお願いすることもあります。決してこれがいけないことではなく、伝えないことがダメであって、伝えなかったことにより農家さんが不利益になった場合は農家さんは原因がわからず、「醤油粕(使用したことのない飼料)が悪いものだ」とレッテルを貼ってしまうことが多々あります。折角、コストダウンが出来る良い飼料なのにこんな些細なことで正反対の悪い飼料となってしまうことがあります。

 このようなことを知っていれば、これを同じ飼料原料として飼料設計をする人はいないと思います。しかし、メーカーや商品によって飼料分析をそれぞれ出しているケースは私はあまり見たことがありません(弊社はしているつもりですが・・・汗、やっているメーカーさんはごめんなさい)。

 もしくは日本飼料標準を参考に飼料設計をしたり、養豚の場合では日本食品標準成分表を使うことを推奨されている方もいます(最近2020年版の八訂が公表されましたね)。日本飼料標準であれ日本食品標準成分表であれ、これはあくまでも平均値であってそのものずばりの成分を出していません。日本食品標準成分表に限っては家畜のためのものではないため、全く情報がないときに参考にする程度であれば良いですが、これを使って養豚の飼料設計をしっかりと出来るかというとなかなか難しいと思います。

 そこで私個人の意見ではありますが(批判が怖いので・・・笑)飼料分析は販売する方が持って行くのが当然だと思います(あくまでもここでは表示票ではなく分析表や計算値です)。購入した側が飼料分析に出すのは違います。

 話が少しそれますが、配合飼料もそうです。誤解を恐れずに言うのであれば、特に配合飼料の計算値は必要だと思います。なぜかというと、一般的に一番多くの量を給与しているであろう配合飼料の計算値すら分からない中で正確な飼料設計を出来る人はいません。少なからず私は出来ません。
 計算値がもらえない場合は自分で分析に出すか、自分で配合飼料の推定値を算出するしかありません(配合飼料成分の推定値の算出方法)。

 こんな言い方をすると、やっぱり使いづらいとなると思いますが、取り扱う業者がメーカーや商品をしっかり押さえて同じ栄養価のものを提供する努力をすれば栄養価は安定します。食品製造副産物や未利用資源を使用する際は業者からの情報をしっかりと得て飼料設計を行えば大丈夫です。大丈夫といっても当然牛や豚をを見ながら微調整は必要です。これはどんな飼料でも同じだと思います。配合飼料であれ、単味飼料であれ全く同じ工程を踏んでいると思います。

 このような飼料を使う際にはメリットとデメリットがあります。このメリットとデメリットを天秤にかけて使用するか否かを決める必要があります。これも配合飼料や単味飼料でも同じですよね。このメリット、デメリットの考え方も業者や農家さんによっていろいろとあります。

 私はこういった飼料のメリットはコストパフォーマンスが殆どだと思っています(はっきり言ってそれ以外ないとさえ思っています)。これ以外に嗜好性が…カロテンが…乳量が…。例えばメーカーAの酒粕がCP58%、TDN91%。醗酵粕なので酵母はじめ沢山の有用菌がいます、嗜好性も良いです・・・など、だから付加価値がついて・・・とはじめるとキリがありません。
 だからこの価格でも…と聞いたことがありますが、だからと言って飼料コストが高くなっていいのか?何か特別な栄養価はあって損はしませんが、往々にして添加剤等から補給したほうがコスト安の場合が多いです。嗜好性は良ければなおいいね!(だから単価高くなるのは・・・?)という立ち位置です。

 飼料分析から出てきた数字はそれ以上でもそれ以下でもありません。その栄養価に対しての評価のみします。
 だって、こういう飼料は手間がかかる。時間がかかる。365日×飼料給与回数分身体を動かすことになります。この飼料作りが長くなった分、牛舎に入れる時間は少なくなります。そのことの方が大きなデメリットだったりすることがあると思います。発情発見の時間が削られるとか…。タンクに入れてボタン押してはいOKというものは非常に少ないです。その手間と時間をかけても、その価格でバランスとれていますか?となると思います。私のお客さんではこの手間でこれだけのコストカットなら割りに合わないとはっきり言う方が多くいます。

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 ここまでの話だと、それなら使わない方が良いのでは?と思うかもしれませんが、それを凌駕する程のコストカットが出来れば使うメリットはあると思います。
 具体的な価格は地域や業者によってかなり様々ですので言えませんが泌乳牛1頭に対して飼料費が50円安くなったらどうですか?仮に100頭なら50円×100頭×365日=1825000円です。養豚や肥育牛であれば5円×1000頭×365日=1825000円。この金額は収入ではなく限りなく利益に近い金額だと思います。この金額の利益を出すためには、どのくらいの収入を得なければならないのでしょうか?かなりの収入(乳量など)になると思います。
 これは50円ですが、100円ならどうでしょう?頭数が200頭なら…。なんだかインチキ商売みたいになってきてしまいましたが、収入を増やすことはもちろんですが、コストのかなりの部分を占める飼料費を下げることも大事なことだと思います。場合によってはこれ以上のコストダウンが可能です。

 では具体的にどのように飼料設計をしたら良いのか?飼料設計は出来るけどなぜ使うことに対して躊躇してしまうのか?を私なりに伝えられたらと思いますが、こういった文章を書くこと自体非常に慣れないし、簡潔にまとめれないためダラダラと思った以上に長い文章になってしまっていますので、この辺で一旦区切らせてもらい、近いうちすぐに書きます。
 養豚に対しての飼料分析についての問題点についても私なりの考えを次回お伝えします。
書くことって疲れますね・・・

長くだらだらとした文章を最後まで読んで頂きありがとうございます。

食品製造副産物を利用した飼料コスト低減方法
食品製造副産物飼料の養豚での使い方や思うこと①
食品製造副産物を利用した飼料コスト削減方法(牛編)

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