新型コロナウイルス感染症等の影響による情勢の変化に対応して生活衛生関係営業等の事業活動の継続に資する環境の整備を図るための旅館業法等の一部を改正する法律案について(政治家女子48党浜田聡参議院議員のお手伝い)
今回は新型コロナウイルス感染症等の影響による情勢の変化に対応して生活衛生関係営業等の事業活動の継続に資する環境の整備を図るための旅館業法等の一部を改正する法律案について考察し、所感を述べていきたいと思います。なお本件は令和5年5月30日に衆議院で可決された修正案をもとにしたものになります。
本件は宿泊施設における宿泊拒否や宿泊拒否についての法規制を修正されたものになります。新型コロナウイルス感染の余波はまだまだ続くようですね。
旅館業法については様々な規定があり、本件の要旨とは異なる点にも思うところはありますが、今回は本件に関わる面について探っていきたいと思います。
①旅館業法とは
まず、旅館業法について概要を俯瞰しておきます。旅館業法の概要については厚労省の報道資料にまとまったものがあります。
旅館業法は1948(昭和23)年に制定されたもので、度重なる改正をもって現在に至ります。旅館の定義については以下の通りになります。
本件に係る点は衛生管理維持になるのは自明ですが、現行の条文を確認しておきます。
旅館業法はその設置は古く、戦後まもなくですが、営業の自由と宿泊を求める人の保護という観点から様々な規定がされており、変遷を辿ると時代の移り変わりに合わせて徐々に規制の緩和がなされていることが分かります。法の設置当初であれば、行き倒れなど治安維持に関わる面の在ったかと思いますが、筆者としてはそもそも宿泊施設を取り巻く関連法がある中で、「旅館」という定義をしたうえで法的規制をすること自体が、宿泊ビジネスのイノベーションを阻害する一因になると考えます。事実、厚労省の報道資料にもあるように。ホテル・旅館の数は簡易宿所と比較して減少傾向にあることが分かります。
②今改正案の要旨
今回の改正は第5条の一項と二項が主な部分改正・追加になりますが、改正案要綱に記載があるように以下の点が論点になります。
報道資料の概要と照らし合わせていくと、「宿泊拒否の自由化」といえるでしょう。宿泊拒否の規制を緩和しているように一見みえる法案ではありますが、ここで気になるのは、宿泊拒否事由についてです。「宿泊拒否事由に係る宿泊しようとする者からの営業者に対する要求について、「厚生労働省令で定めるもの」と明記し、厚生労働省令で明確化すること」とあるように省令で対応する旨があります。これは厚労省の権限を強化するものであります。そもそも、様々な宿泊施設の形態が増えている中で、旅館法に該当する施設に対して今回の法改正による緩和はかえって混乱を生むのではないかと推察します。新型コロナウイルスの余波から、宿泊施設で働く従業員と他の宿泊者の安全という観点は重要かと思いますが、宿泊施設の判断で行うべきことであり、行政が定義した業態に関して法改正をおこなう事で「宿泊拒否をしてはならない」という圧力にもつながらないか、新たな問題を生まないか懸念がぬぐえないところであります。
また、現行法にあるように、宿泊拒否をしてはならない場合に「宿泊施設に余裕がないときその他都道府県が条例で定める事由があるとき」とあるように、都道府県にある程度の権限があることが確認できます。地域によって特性は異なるため、宿泊拒否事由についてもそれぞれの地域に沿った対応をすればよいのであり、現行法で十分対応が可能であると筆者は考えます。また、宿泊拒否については差別を助長するとの意見があり、その点について触れておきます。
③宿泊拒否による差別助長??
今改正は昨年の臨時国会でも議論になったものですが、今法案に反対したのが国家賠償訴訟の弁護団や原告団になります。過去に宿泊施設が元ハンセン病患者の宿泊拒否をしたという事がありました。2003年と少し古いですが、現在も大きな爪痕を残していることは今改正法案の修正経緯を見れば明らかであります。
この熊本県の事案は運営者側、宿泊者側の賛否は分かれるとは思いますが、宿泊を命じた県の指導に運営者側は応じなかったため、県の行政指導により営業停止処分が下されています。運営者も廃業になり、宿泊者側も不快な思いだけ残り、非常に後味が悪い事件である。行政が余計に混乱を招き、禍根を残した印象をぬぐえません。
では宿泊拒否事由にはどのようなものが多いのか、令和3年7月厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生課の調べによると以下の通りとなっております。
このように圧倒的に多いのは宿泊者のマナーであり、カスタマーハラスメントによるものであります。
差別助長というのは非常に珍しいケースであり、旅館業法で議論する問題ではなく、ハンセン病のような問題をすべての法案に盛り込むことは、自由を縛る事やまた新たな分断を生むという事につながると筆者は考えます。
もちろん差別は許されるものではありませんが、宿泊施設の営業の自由を阻害する事には賛同できません。
④最後に…木を見て森を見ず??
今改正法案は前述したように、「宿泊拒否の自由化」のように見えますが、「宿泊拒否事由に係る宿泊しようとする者からの営業者に対する要求について、「厚生労働省令で定めるもの」と明記し、厚生労働省令で明確化すること。」との明記に厚労省の権限強化が垣間見えます。つまり法律上では緩和されているようにみえますが、「省令」によってガイドラインを示し、如何様にもコントロールすることができます。レジ袋の有料化と同様、省令で行政がコントロールすることに、国民は常に監視を続けなくてはなりません。また、各都道府県の条例で宿泊拒否事由を定めることができるのであれば、厚労省が省令でガイドラインを定める必要はありません。この修正案、、、骨抜きにならないことを祈ります。
賛否に関してはそもそも、旅館業法の在り方を考える時期に来ていると思うので、その話は本件とずれるので控えさせていただきます。
最後までご拝読ありがとうございました。
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