見出し画像

国⽴研究開発法⼈宇宙航空研究開発機構法の⼀部を改正する法律案について(NHKから国民を守る党浜田聡参議院議員のお手伝い)

 第212回国会(臨時国会)も折り返し、佳境を迎えてきました。今回の法案は国⽴研究開発法⼈宇宙航空研究開発機構法の⼀部を改正する法律案です。

 国際的に宇宙開発競争が活発化しているなかで、日本も宇宙ビジネスの規模拡大を目指しています。宇宙開発は衛星など生活の利便性の向上だけでなく、サイバー攻撃など安全保障上も重要な産業分野です。今回の法改正案は端的に言えば、宇宙関連市場の拡大のために民間事業者等が行う先端的な研究開発を後押しするための資金援助をできる仕組みづくりをおこなうものになります。

基金造成と助成金の流れ(法律案概要より)

 では宇宙産業にまつわる日本の状況はどのようになっているのでしょうか。また、基金造成で日本の宇宙産業は成長できるのか見ていきたいと思います。


①宇宙産業の状況について

 令和4年7月に経産省が公表した「宇宙開発を巡る産業の動向について」という記事がうまくまとめられています。

 この記事から分かる日本の現状としては、人工衛星の打ち上げ数は増加傾向にあるものの、国別の人工衛星打ち上げ数に関しては、全体の2.3%となっているところです。

経産省「宇宙開発を巡る産業の動向について」より

米・ロ・中が上位3ヵ国となっており、下位を大きく離しています。

経産省「宇宙開発を巡る産業の動向について」より
経産省「宇宙開発を巡る産業の動向について」より

 アメリカのモルガン・スタンレーは、2016年に約3,400億ドル(約39兆円)だった市場規模が、2040年代には約1兆1,000億ドル(約126兆円)まで拡大すると予測しています。各国がこぞって開発競争に参入するのは当然であり、日本も競争に負けないだけの成果を出さなければならないところです。政府はすでに民間企業へ「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3)」の枠組みで文科省と経産省から交付金という形で16社に最大388億円を拠出がおこなわれています。

 また、令和5年度当初予算案および令和4年度補正予算における宇宙関係予算として6,119億円が各省庁に組まれています。当初予算・補正予算ともに年々増加しており、予算の使途が多岐に渡っていることが分かるかと思います。

 総計11の府省庁に予算が割振られています。現状の日本の在り方を鑑みると、縦割り組織の弊害が露呈しないか不安でなりません。今回の基金造成は、前述の図のように、内閣府・総務省・文科省・経産省からJAXAに資金が流れ、民間企業や大学に助成されます。世界各国が宇宙開発に注力している状況の中で、日本もIT黎明期のような失敗をしないよう注視が必要でしょう。
 予算の膨張は国家の肥大化につながっている点は忘れてはいけません。今回の基金造成が本当に意味のあるものになるのか不安が拭えません。
とはいえ、宇宙開発は安全保障関連にも大きく影響します。「予算は国家の意志」です。2018年段階で、世界の宇宙関連事業の市場規模は約40兆円となっていました。今後、市場規模は拡大していくと予測されています。この市場を獲得できるか、脱落するかで日本の世界的地位は大きく変化する事になるでしょう。

②基金造成よりも問題は規制

 ロケットの発射場といえば、JAXAの種子島宇宙センターが有名でしょう。しかし、その他の発射場というとあまり聞くことがないと思います。例えば北海道大樹町にある「北海道スペースポート」は「宇宙港」のハブ化を目指しています。民間主導で運営が行われているこのスペースポートは現在、日本では4か所において「宇宙港プロジェクト」がおこなわれています。宇宙港は民間事業者の打ち上げ場として使われます。種子島宇宙センターにある発射場は民間事業者は使用できません。世界では、70以上の「宇宙港プロジェクト」がおこなわれており、世界各国で激しい誘致合戦がおこなわれています。
 政府は令和5年6月に発表した「宇宙基本計画」にも「我が国がアジア・中東における宇宙輸送 ハブとしての地位を築くことを目指す。」と明記されています。
 しかし日本において、ロケットや人工衛星の打ち上げは非常に申請の手間がかかることが大きな足枷になります。また、世界で日本の宇宙港の認知度はほぼ皆無です。
 例えば、オーストラリアでの打ち上げの申請窓口は、宇宙庁のみに対し、日本での申請は10以上の省庁・自治体に申請しなければなりません。これは電波法であれば総務省、宇宙活動法であれば内閣府といったように発射に関連する法律の所管官庁が異なり、自治体にも協力のために申請しなくてはなりません。
 このように手続きが煩雑になってしまうと宇宙港の誘致は後退してしまうのではないでしょうか。

 日本はこれまで、IT産業でも後れをとり、外国から仕入れる環境になってしまっています。また、宇宙港のハブ化が実現できるかどうかも不透明です。日本はアジアにおける空港のハブ化に失敗した過去があります。

はるかに利便性の高い、羽田空港や成田空港の失敗を繰り返さないためにも規制を緩和することや、所管官庁の一元化が必要ではないでしょうか。日本が宇宙港のハブ化を実現するにあたって、規制緩和は不可欠といえるでしょう。

 また、日本は半導体産業で大きな失敗を経験しています。

日本の半導体メーカーはほぼ撤退している中で、経済産業省の令和3年度補正予算案に7740億円を計上しました。これはほぼ税金を無駄に投入しているといっても過言ではありません。
 また、IT産業の出遅れは軍需産業の開発が日本ではできないことも、一つ理由にあります。このような状況を招いたのも規制が問題となっていことを省みなくてはなりません。
 世界各国が宇宙関連事業に多額の予算をつけていることは承知していますが、これまでの日本の政策を踏まえた際、今回の基金造成による助成金が果たして宇宙関連事業に寄与するものなのか疑問に残るところです。

③JAXAから助成される点について

 近年、JAXAではロケットの打ち上げ失敗や、不祥事などが起こり、信用を欠く結果が続いております。

 このような状況の中で、JAXAが助成金の交付をおこなう事業者や大学を選定することに不安を覚えます。基金造成で使われる資金は税金です。税金の使い方に関して国民から厳しい目で見られることは当然です。
 JAXAは宇宙開発においては専門機関であるため、不正などは研究者倫理からも許されるものではありません。このような状況の組織に果たして、多額の税金を委ねていいものでしょうか。

④おわりに

 今回の法案調査での一つの結論は、助成金を配る前に規制をなくしていくことでしょう。日本で宇宙産業市場の獲得に動いているのはベンチャー企業です。かつての大手企業とJAXAの官民連携の時代は完全に終焉を迎えています。
 宇宙関連産業は我々の生活の利便性を向上させてくれることは周知の通りです。政府主導の産業育成ではなく、民間中心の研究開発と競争が当該産業を成長に導くのではないでしょうか??
 少なくともこれまでの政府が世界で新規市場の獲得に失敗した実績を考えた際、同じ轍を踏んではいけません。仮に獲得競争に失敗した場合、国費を海外に流出し続けることにもつながります。
 基金造成は決して産業を活性化するものではありません。使われる原資が税金であることを忘れてはいけないのです。

⑤質問考えてみた

・宇宙関連事業の民間企業・大学への助成はどのような選定基準を設けているのか。これは公表されるのか??

・仮に助成金が交付されたとして、その費用対効果や産業に寄与する事業評価をおこなう予定はあるのか。あれば、どのような方法でおこなうのかご教示をお願いしたい。

・宇宙関連事業に関するこれまでの事業評価を一元化することで、透明性を図ることができると考える。しかし、当分野は関連府官庁が多岐に渡りすぎるため、煩雑であると考える。政府として、透明性を図るためにどのような公表方法を考えているか見解を伺いたい。

最後までご拝読ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?