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令和五年三月予備費使用に係る低所得者世帯給付金に係る差押禁止等に関する法律案について(政治家女子48党浜田聡参議院議員のお手伝い)

 今回は令和五年三月予備費使用に係る低所得者世帯給付金に係る差押禁止等に関する法律案についてです。こちらは衆法として提出されたものであり、地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会からの発議になります。提出者は委員長となるので橋本岳衆議院議員(自民党・無所属会派)です。衆議院では全会一致で通過しています。

概要にも記載がある通り要旨は2点になります。1点目は低所得者世帯への給付金に対して差押えの禁止、2点目は給付金が非課税対象となる事です。
 
 メディアでも多く報道されている非課税世帯への給付金から、この法律案にまつわる課題を考察してまいります。

①低所得者世帯とは

 低所得者世帯とは一般に一般的に「住民税非課税世帯」を指し、住民税は「市区町村税」と「都道府県税」を合算したものになります。住民税は「均等割」額と「所得割」額を合算したもので、均等割については、所得に関係なく一律同額が課せられます。均等割額は住んでいる都道府県および市区町村によって異なり、東京都の場合だと、5,000円(都民税:1,500円、区市町村民税:3,500円)となっています。住民税非課税世帯と認められるには、「均等割額」と「所得割額」の両方が非課税にならなければなりません。そしてそれらの要件は以下のとおりです。

・生活保護法による生活扶助を受けている

・障害者・未成年者・寡婦またはひとり親で、前年中の合計所得金額が
 135万円以下(給与所得者の場合:年収204万4000円未満)

・前年中の合計所得金額が次の金額以下である
1.本人に同一生計配偶者または扶養親族がいる場合
35万円×(本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数)+31万円以下

つまり、本人に配偶者と高校生の子どもが1人いる場合は、35万円×3+31万円=136万円以下であることが条件。

2.単身者の場合
45万円以下

東京都主税局HPより

単身者であれば、前年の合計所得金額が45万円以下(給与所得者の場合、年収100万円以下)となりますが、同一生計配偶者や扶養親族がいる場合で、均等割・所得割ともに非課税になるには、本人と同一生計配偶者そして扶養親族の合計人数によって異なります。

目安として、本人と配偶者と扶養対象となる子供が1人いる場合の基準は凡そ205万円ほどになるという計算になります。

3人で生活するのに年収205万円ではそもそも生活が維持できないので負担軽減の対象にすることには一定の理解は示しておきます。

令和3年国民生活基礎調査によると全世帯5,142万世帯のうち、住民税非課税世帯は1218万世帯で、割合は約23.7%となります。そして住民税非課税世帯の割合は高齢者のいる世帯が高く、年金生活者に多いと推察できます。

 この統計から計算すると、年代別の住民税非課税世帯の割合は60代以上が約80%を超えています。今回の物価高騰による給付金は確かに低所得者にとっては家計の助けになるものではありますが、高齢者に集中していることを鑑みると、現役世代から高齢世帯に所得が吸い上げられているとも言えなくもありません。

年代別住民税非課税世帯

「年金は…?」とどうしても思ってしまいます。現実に生活をしている高齢者が悪いのではなく、そもそも制度設計の段階で破綻している年金制度を長らく続けている政府の根底的な思考を変えていかなくてはなりません。

②給付金とその差押えの未来

筆者は以前にも「子育て関連給付金に係る差押禁止等に関する法律案」について述べたことがあります。

そこでも述べましたが、給付金・その他財産の差押えの禁止は根本的解決にはならないことを述べました。差押えを防ぐことによって目の前の生活を維持できる人は多くいることは承知していますが、ではその先の未来を考えた際、そもそもこのような法案や給付金で生活を維持する政策が行われるような状況を打破すべきではないでしょうか。
 筆者は歴史を専門に学んできたこともあり、今回は歴史という視点から債務への救済を政府の政策として行ってきた末路を考察していきたいと思います。
 現在の経済状況や社会状況とは異なりますが、今の日本社会は根本的な考え方を変えていかなければ、歴史は繰り返されてしまうと不安を感じざるを得ません。

③日本で起きた借金への政府対応

 中世(鎌倉~室町時代)には当時の政府(幕府)は徳政令という債務の帳消しを命じる政策を度々行っています。有名なものは鎌倉時代後期の「永仁の徳政令」というものです。幕府に使える御家人の債務を無くす政策でしたが、その後、御家人は新たな融資を受けることができなくなってしまいます。御家人は幕府を支える屋台骨でしたが、この法令を出した30年ほど後に鎌倉幕府は滅んでしまいました。

借上が融資資金を届けに来た様子

  室町時代には庶民による自治が発展してきました。庶民は苦しい生活を打破するために一揆を組み、自分たちの要望を訴えるため実力行使しました。(現在では絶対実力行使なんてしてはいけませんけどね…)幕府は徳政令を出し、暴動を落ち着かせましたが、幕府は徳政を出す代わりに、新たに税金を取り始めます。これを分一銭といいます。簡単に言えば「お前の借金チャラにしてやるから、その分の10%を税金で納めろ」です。……これって給付金出す代わりに増税しているのと何か変わりなりますかね??
 室町時代はそもそも中央権力が強くないが官僚機構がしっかりしていたので長く続きますが、戦国時代という乱世が約100年も続いていきます。地方分権が進んだ時期でもあり、地域によって特色が生まれ、魅力ある地域に人が集まる社会に少しづつ移行するのがこの時代です。

④現代日本での徳政は可能か?

 子育て給付や今回の物価高騰による給付金への差押えの禁止や非課税について、多くの方は賛同することでしょう。感情論として筆者も当事者の立場になれば「助かる」という気持ちを持つことは否定できなところであります。しかし、現代社会はグローバル化がすすみ、住みやすい国に就労することも可能です。低所得者が高齢者に多く、現役世代は高齢者を支えるために生きていると主張する方もいるように、現役世代はより豊かな生活を求めて海外に出て行ってしまうこともありうるでしょう。そうなれ国家の傾国は避けられないものとなります。室町時代は幕府が滅んだだけで済みましたが、日本は戦後経済大国として世界で最も豊かな国の一つでした。しかし、今は前近代と同じような政策をするに至っていると言わざるを得ません。
 では低所得者を救い、日本が豊かな国になるためには……
 それは「減税と規制の緩和」です。なぜ給付金を配るのか、なぜ給付金の差押え禁止まで政府が行うのか。それは政府や政治家が権力で国民生活を縛るからです。民間金融機関から受けた融資は民間同士で解決知ればいい話です。政府が介入することは権力の行使に他なりません。政府ができるとすれば債務を返す余裕を作る事です。そのためには重い国民負担率を下げ、どんな人でも働きやすいような環境を作る事です。

以前の「子育て関連給付金に係る差押禁止等に関する法律案」について書いた際に述べたことと同じで給付金は政府の意図に沿って使われる事はないと思います。しかし、今回は一つ主張しておきます。「非課税には賛同、差押えは議論が必要」です。議論が必要というのは、NHKのような受信料の違法な徴収を防ぐことも必要と考えるためです。現在では被害件数も減っているので、差押え扶養とも考えられますが、少なくとも民間同士の財産の移行について政府の介入は抑えるに越したことはないという方向性を示して筆を納めます。
 
最後までご拝読いただき、ありがとうございました。

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