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 「地域再生法の一部を改正する法律案」についての調査(NHKから国民を守る党浜田聡参議院議員のお手伝い)


 今回は内閣府から提出された「地域再生法の一部を改正する法律案」について調査してまいります。地方再生法は日本の地域経済の活性化や雇用機会の創出、地域の活力再生を総合的かつ効果的に推進する事を目的に平成17(2005)年に制定された法律です。地方公共団体が作成する地域再生計画を内閣総理大臣が認定し、認定計画に基づく措置を通じて、自主的・自立的な地域の活力の再生に関する取組を支援するという制度になります。今回の法改正で何が変わるのか調査していきます。


①地域再生制度とは

 地域再生制度とは前述したとおり、日本の地域経済の活性化や雇用機会の創出、地域の活力再生を総合的かつ効果的に推進する事を目的とし、平成17(2005)年以降、8度の法改正をおこない支援措置を拡大してきました。

地方再生制度の概要より抜粋

 この流れは平成26(2014)年に「まち・ひと・しごと創生法」という、人口減少や東京圏への人口集中を食い止め、地方を活性化するための基本理念などを定めた法律の制定により、さらなる拡大をしてきました。地域再生の施策は、「就業の機会の創出」・「経済基盤の強化」・「生活環境の整備」という観点でおこなわれ、政府の認定を受けた地方公共団体は地域再生制度に則り事業をおこなっていきます。地域再生計画の認定プロセスは以下の通りになります。

地方再生制度のパンフレットより抜粋

 また、地方公共団体では、申請したNPO法人や企業に対し地域再生推進法人指定の審査をし、指定を受けた地域再生推進法人が地方公共団体の監督のもと事業をおこないます。

地方再生推進法人の概要より抜粋

 現在、この地域再生推進法人は50の指定数がありますが、同一法人を指定し重複している法人を除くと39法人があります。

地方再生推進法人の概要より抜粋

 実際におこなわれている事業内容については別章にて紹介いたします。では現在の仕組みから、今回の法改正でどのような事が変わるのかを見てまいりましょう。

②今改正案の内容

 今回の改正案は大きく分けて3点の変更になります。
 1点目は地域再生推進法人が地域住宅団地再生計画を作成等を提案できるようになる点です。その提案を受けて地方公共団体は計画を作成するという流れが今回の法改正で可能になります。また、地域住宅団地再生事業計画では新たな措置が設けられ、建築物の用途変更をした際の特例措置や公園などを使用する際の占用許可の特例が設けられます。簡単に言えば使い勝手が少し良くなるという事です。

当該改正案の概要より抜粋

 2点目は、地方債の特例措置です。民間事業者が公共施設等の整備をおこなう場合においても、地方公共団体がデジタル田園都市構想交付金を活用し、補助する場合には当該補助経費の地方負担分を地方債の起債対象とするという特例です。

当該改正案の概要より抜粋

 3点目は、企業の地方移転を促進するための税制優遇の拡大です。課税の特例等により企業の地方への移転等を促進する「地方活力向上地域等特定業務施設整備事業」の範囲を拡充し、事務所、研究所等の特定業務施設の整備と併せて子育て施設等を整備する事業も課税の特例対象に含めるという変更です。
 政府は今法案改正にあたり地域再生計画の認定件数を施行後の5年で約100件とする目標を立てています。また地方拠点強化税制等による雇用創出数を令和9(2027)年度までに累計4万人という目標を立てています。なお、令和5(2023)年11月末までに約2万7千人の雇用創出を達成しています。

③地域再生制度は必要ない

 地域再生制度に関連する施策は令和5年7月に内閣府から発表された資料によると41あります。内閣府だけではなく様々な省庁が関係しているため、非常に制度的には複雑なうえに手間もかかります。そして地域再生制度には様々な制度があります。

 地域再生制度に関連する施策は令和5年7月に内閣府から発表された資料によると41あります。内閣府だけではなく様々な省庁が関係しているため、非常に制度的には複雑なうえに手間もかかります。そして地域再生制度には様々な制度があります。この制度が実際に現場でどのような取り組みがおこなわれているのか、ここで一部ですが内閣府地方創生推進事務局が公表している事例を元に筆者が問題であると考える具体的に個別に見ていきましょう。

A.地域商社

 ここでは官民協働の例が挙げられています。栃木県宇都宮市と株式会社ファーマーズフォレストの取組みについて紹介されたものを引用します。

・同社は平成 20 年に農林公園ろまんちっく村の管理業務を宇都宮市より受
託し、ろまんちっく村や周辺地域の活性化事業に着手した。その後、「道の駅うつのみやろまんちっく村」としてオープンし、栃木県産品を県内外に売り込む地域総合商社として成長している。創業8年経過時点で売上高は 20 億円となった。
・同社は地域を支える総合メディアをコンセプトに「トチギフト」という通販媒体を発刊した。加えて雑誌、インターネット、ラジオ等、様々なメディアのクロス展開を駆使し、「トチギフト」ブランドを一斉に発信している。
・同ブランドの販売を支える直営店を 10 店舗出店し、卸売・中規模流通を含めた販路づくりを徹底的に展開し、現在では数千人の購買客を獲得するに至っている。
・県内自社拠点集荷場と農家集荷デポセンター(物流拠点)をハブとする、自前の広域集配システムを構築することにより、小規模から中規模地域までの市場をカバーしロットや品質特性に応じた卸価格を実現している。
・こうした取組を通じ、県外出身の社長が「よそ者」の視点を活かして栃木の魅力発掘と域外への PR を精力的に行った結果、県内産品の販売会社としては、県内 No.1 に成長している。自社物流網の整備等に取り組み、販路・生産両者をパッケージ化した出口戦略の好循環の確立を目指す。
・現在同社は、沖縄・長野・茨城等での事業の水平展開を始めており、将来構想として、オール栃木からオールジャパンへと発展し、全国的な地域商社ネットワーク構築の下、沖縄ハブ空港を活用した海外販路への挑戦を目指している。

『民の力を活かした地方創生推進の手引き』令和元年12月 内閣府地方創生推進事務局

 ここで使われる関連制度は以下になります。

・地方創生推進交付金
・地方創生拠点整備交付金
・地方創生応援税制
・地域おこし協力隊、地域おこし企業人
・地方創生起業支援事業
・銀行の出資制限の緩和
・その他

『民の力を活かした地方創生推進の手引き』令和元年12月 内閣府地方創生推進事務局

 非常に多くの交付金制度や支援金制度がありますが、ここでは銀行の出資制限について指摘したいと思います。この出資制限の緩和は以下のような制度です。

 銀行は、監督官庁の認可があれば地域商社に対して 100%まで出資が可能。また、投資専門子会社を通じて、官公署等が策定に関与した事業計画を基に、地域経済の活性化に資する事業を行う会社(地域活性化事業会社)へ5%以上 40%未満まで出資が可能。

 監督官庁の認可があれば銀行融資が可能になるという事は、監督官庁の権力が増すという事です。そして民間企業や法人は官の権力に依存するようになり、民間の経済活動を弱めることになります。政府は好例として挙げていますが、果たしてこのような体制が地方創生につながり健全な自由経済を守ることにはならないでしょう。監督官庁の判断が正しいとは限りません。成功する事もあれば失敗することもあるとは思いますが、税金を使って失敗した際、誰が責任を取るのでしょうか。税金がドブに使われるような仕組みには賛同しかねます。

B.移住や関係人口の創出・拡大に向けた支援

 人口減少が進む山間部への移住を促進するものです。移住希望者を増やすための情報発信や住居の確保、職の確保といったものが挙げられています。ここでも移住支援の一例が紹介されています。宮城県大郷町ではリネシス株式会社と令和元年8月に官民連携協定を結んでいます。連携事項をここで確認します。

(1)大郷町における移住定住促進のための、譲渡型賃貸住宅を活用した農業をはじめとする地域産業就業希望者に対する雇用と住居の一体的な提供に関すること
(2)地域の実情に合わせた譲渡型賃貸住宅提供システムの構築、その他大郷町における譲渡型賃貸住宅の活用に関すること

 移住定住促進を図るものですが、現在の施策効果はどのようになっているのでしょうか。提携が始まった翌年の、大郷町の「まち。ひと。しごと創生総合戦略事業検証結果一覧」(令和2年度実績)を確認すると、移住定住に関する事業はすべてにおいて達成率が100%未満となっており、「空き地空き家活用移住促進事業」に関しては0%です。最も高い92%の達成率は「情報発信強化事業」となっておりますが、評価指数がアクセス数500件/日となっており、そもそもの目標設定が適当であるのでしょうか?
 移住定住促進を図るものですが、現在の施策効果はどのようになっているのでしょうか。提携が始まった翌年の、大郷町の「まち。ひと。しごと創生総合戦略事業検証結果一覧」(令和2年度実績)を確認すると、移住定住に関する事業はすべてにおいて達成率が100%未満となっており、「空き地空き家活用移住促進事業」に関しては0%です。最も高い92%の達成率は「情報発信強化事業」となっておりますが、評価指数がアクセス数500件/日となっており、そもそもの目標設定が適当であるのでしょうか?
 公表されている最新の令和4年度の検証結果一覧を確認すると「空き地空き家活用移住促進事業」の達成率は0%(令和2~6年度までの延べ目標が8世帯、令和3年度実績で4世帯となっている)。また、達成率が148%となっており、令和2~6年度までに延べ目標が50人となっている「住宅取得支援事業」ですが、この事業の対象者は「町外及び町内居住者」となっているため、移住定住促進がなされたかどうか検証する事ができません。目標指標も本来の目標から外れ、目標も達成していない事業に予算をかけることが無駄以外の何ものでもありません。

C.スポーツ・健康まちづくり

 この取組みに関してはそもそも、意味が分かりません。好事例として挙げられているのが長野県伊那市とRIZAP株式会社との連携です。

 記事の通り、3か月の「健康増進プログラム」を実施しています。伊那市は当時、「日本一の健康シティ」を目指すとされていました。現在では第3次伊那市健康増進計画(健康い~なプラン21)となっています。この取組みの結果、参加者の89.7%が体力年齢10歳以上若返りに成功し、満足度は92.3%であるとしています。
 個人の健康のためであれば、自ら取組めばよいのであってわざわざ税金でする必要もありませんし、税金を使ってやることでしょうか?地域再生につながるのか疑問しかありません。

このように、過去の事例を挙げると、地域再生・創生の名のもと目的をおよそ達成できそうもない事業が多く好事例として紹介されています。このような事例を好例と判断している政府が問題であり、このような判断をする政府が現在の地域再生制度を管理し、許認可を下すこと自体に信用がありません。地域再生が進まないまま税金が泡のように消えていく現状をいつまで続けるのでしょうか。

 また、現在の地域再生推進法人についてもなぜ認定されているのか疑問な法人もあります。例えば、神奈川県横浜市の「一般社団法人YOKOHAMA URBAN SOLUTION ALLIAANCE」という法人では公民連携による国際技術協力を通じた市内企業等の海外展開の促進を事業として行っています。そもそもですが、横浜市は地方再生・創生すべき自治体なのでしょか。横浜市は日本全国の中では人口も大きく経済規模も大きい地域です。しかも市内の企業の海外展開の促進です。衰退地域の発展ではなく海外展開するという事は国外の経済活性化であり、本来の地方再生・創生の目的が達成されるのでしょうか?
地域再生・創生につながるのか疑問しかありません。

④地域再生制度は失敗政策

 今回の改正案の内容については前述したとおりですが、端的に言えば、「官民協働事業なら国は金を出すし、認める範囲を広げる」です。
 住宅団地の再生に関しては地域再生推進法人が住宅団地の再生をおこなえる範疇が広がるという事です。しかし、地域再生推進法人の認可をしているのも官ですし、単純に参入したい民間事業者に売却すればよいだけの話です。
 地方債の特例措置も、すでに地域再生事業が必要としている自治体であれば、自主財源率が高くないため、債券償還を含め自治体の予算は地方交付税交付金への依存度を強める事につながります。
 地域拠点強化税制についても、子育て施設等を「地方活力向上地域等特定業務施設整備事業」の対象とすることも、子育て世帯が少ない地域(需要がない地域)にわざわざ施設を建てる民間事業者はいないでしょう。
 人口増加や地域経済の活性化が進まない地域に政府が介入してインフラ整備を促進したところで、過去の地方創生事業の取組み実績をからとても成功するとは考えられません。衰退が進んでいる自治体地域は地方交付税やこのような交付金制度に依存していることも問題です。住民ではない国民の税金を使い地域再生をおこなわれることに、地域自治体やその住民に自尊心はないのかと厳しい意見を諌言したいと思います。
 なぜこのような、一見冷酷ともとれる意見をするのかといえば、結果が伴っていないためです。平成17(2005)年から始まった地方再生制度は、平成26(2014)年以降、5度の法改正を行い、地方創生の推進のため事業が拡大しています。しかし、大都市圏(特に首都圏)への人口流入を止めることはできていません。

「住民基本台帳人口移動報告 結果の概要」より 総務省統計局

 上記3点の資料を見るに明らかなように、10年以上続けてきている地域再生・創生の取組みは成果を出していません。人口だけではなく様々な側面からの分析や指摘もあるとは思いますが、本質的には人がいない地域では経済の活性化は起こりません。人が集まるところで経済は回りますし、このまま無駄に税金を使い続けるよりは、人口流出している自治体で減税と規制緩和を進めるべきです。

 名古屋市では市民税の税率を平成24(2012)年度から5%引き下げたことは広く知られているかと思います。平成29(2017)年に「市民税5%減税検証報告書」というものを公表しています。

 この報告書の検証結果にはこのように書かれています。

市民税5%減税を継続して実施した場合と、市民税5%減税を実施しなかったと仮定し、減税相当額のみを政府支出に上乗せした場合の比較では、減税を実施した場合における10年間の市内総生産(名目)や民間最終消費支出(名目)、企業所得の伸び率が、減税を実施しなかったと仮定した場合における伸び率をいずれも上回っており、市内総生産(名目)の伸び率を例に見れば、その差は10年間で1.35%程度、年平均では0.13%程度であった。

 つまり、減税によって経済効果がみられるという事です。他地域の誰かの納めた税金を投入するのではなく、自分たちの地域の経済活性化は自分たちのお金でおこなうという当たり前の原則に立ち返れば、無駄な地域再生事業は必然となくなっていきます。 
 今改正案は一見要件が緩和されるようにみえて、自治体の自主性を損ねる要素を含んでいます。このような観点から、今回の改正案については賛同できるものではない事を主張しておきます。

⑤地域再生法と地域再生制度についての質問

・内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局/内閣府地方創生推進事務局の公表している「令和5年度地域再生計画の評価等に関する調査」において、認定地域再生計画の評価(事業効果の検証)の実施状況についての調査をおこなっているが、事業効果の検証を実施しているとの65.5%となっている。多くの認定地域再生計画において交付金が交付されているにも拘らず、実施しているとの回答が半数強にとどまっていることは非常に問題と考える。自治体の自主財源ではなく国費によっておこなわれた計画にも拘らず検証をおこなっていないという事は、納税者に対する説明責任を果たしていないためである。この状況について、政府の見解と今後の方針についてお聞かせ願いたい。

・内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局/内閣府地方創生推進事務局の公表している「令和5年度地域再生計画の評価等に関する調査」において、官民連携を伴う認定地域再生計画を作成するに至った経緯についての調査をおこなっているが、47.7%が「認定計画作成以前から連携実績があるため」という回答である。つまり、地域再生制度のような仕組みがなくても、既に地域では連携がおこなわれているにも拘らず、政府が介入し国費の一部が不要な事業にも使われている可能性を否定できないのではないか。また、以前から官民連携をおこなっているにも拘らず実績を伴っていないのであればも問題であるし、実績があるのであれば地域差伊勢制度は不要である。政府は地域再生計画の認定をどのような判断でおこなっているのか、お聞かせ願いたい。

・内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局/内閣府地方創生推進事務局の公表している「令和5年度地域再生計画の評価等に関する調査」において、官民連携を伴う認定地域再生計画を作成するに至った経緯についての調査をおこなっているが、47.7%が「認定計画作成以前から連携実績があるため」という回答である。つまり、地域再生制度のような仕組みがなくても、既に地域では連携がおこなわれているにも拘らず、政府が介入し国費の一部が不要な事業にも使われている可能性を否定できないのではないか。また、以前から官民連携をおこなっているにも拘らず実績を伴っていないのであればも問題であるし、実績があるのであれば地域差伊勢制度は不要である。政府は地域再生計画の認定をどのような判断でおこなっているのか、お聞かせ願いたい。

・地域再生制度が開始され、事業規模は拡大の一途であるが依然として地方の人口流出は歯止めがきいていない状況である。このような状況を鑑みると地域再生制度自体の効果に疑問を持たざるを得ないが、どのような観点から地方再生制度を評価しているのかお聞かせ願いたい。

ご拝読ありがとうございました。

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