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奇跡のような2時間半 - 「Cornelius 30th Anniversary Set」@東京ガーデンシアター

ものすごいものを見てしまったかもしれない...。ライブのあと、しばらく震えが止まらなかった。

「Cornelius 30th Anniversary Set」の東京公演に行ってきた。コーネリアスの活動30周年を総括するライブということで、2月ごろに開催がアナウンスされてから、爆速で特典付きSSチケットを取った。そこから待つこと約5ヶ月。これほどまでに七夕をドキドキハラハラしながら待ち侘びたことは初めてかもしれない。

13時半ごろに先行物販に向かったが、すでに会場の外までびっしり列ができており、初期の©️マークがついたTシャツを着ている人や、『Point』のトートバッグを持っている人など、長年のファンなのだと伺える人がたくさんいた。早い段階で『FANTASMA』と『69/96』のTシャツが売り切れ、その頃から応援しているファンの多さを感じる。

私自身は『Sensuous』のTシャツやパンフレットなどを買い、お台場で時間を潰していたのだが、会場に向かうバスを間違えてなんと芝浦まで行ってしまった(会場は有明)。人生が終わった気持ちで(実際「終わった...」と言っていた)タクシーに飛び乗り、運転手さんの軽快なトークを聞きながらなんとか開演数分前に会場到着。全力疾走し気合いで間に合わせ、最初から観ることができた。

オープニングはおなじみの「MIC CHECK」から。しかし、ブレイク前に『The First Question Award』から『夢中夢』までのアルバムジャケットがコロコロ切り替わる形で映し出され、©️マークがスクリーンの全面に出た瞬間にメンバーのシルエットが現れる、30周年ならではの演出に鳥肌がぶわあああっと立った。そこから流れるようにして「火花」「Point Of View Point」「Audio Architecture」と安定したセットリスト。このまま「いつか/どこか」とかをやるのだろうかと思っていたら、突然「サウナ好きすぎ、より深く」が始まって度肝を抜かれた。ライブでもブレイクでアンサンブルがスモークとともに会場内に響き渡り、「ととのい」が表現されていた。タナカカツキ監督のAI生成MVも異世界感がありうっとりした。

そして何より、一番感極まったのが「Another View Point」。「夢の奥で」でもサンプリングされていた、「おやまだけいご」という幼少期小山田の声からイントロが始まり、コーネリアスとしてのデビュー当時のテレビ映像が次々に流れていく。ミュージックステーションで演奏したときの「(YOU CAN'T ALWAYS GET) WHAT YOU WANT」や「MOON WALK」、まだサンバイザーをかぶっていた頃のインタビュー映像、楽曲提供した「ハミングがきこえる」のオープニング、そして女装した小枝のCM...(女装の部分が結構な尺使われていたのが面白かった)。そこからブレイクが明け、YMOやオノ・ヨーコとのライブ、Sensuousのツアー、デザインあ...と2000年以降の活動に進んでいく。
最後の方に映されたDOMMUNEの映像で涙腺崩壊してしまった。今までの活動の全てを抱きしめ、2021年に起きたことからも目を逸らさずに音楽を続けていく決意がそこから見えた気がして、たまらない気持ちになる。まだファン歴1年の私がこんなに感動するのだから、ずっとリアルタイムでこれらの映像を目にしてきた方の心境は計り知れない。

そんなコーネリアスの30年を振り返ったあと、堰を切ったように「COUNT FIVE OR SIX」が始まり、ますます勢いを増すコーネリアスグループに頼もしさすら覚える。

そして、ライブ初披露の新曲「MIND TRAIN」。約9分間、あらきさんがタイトにビートを刻みながらも、大野さんのコーラスワークが映える歌パートが爽快に突き抜ける。そして一度音楽が消えた...かと思ったら再開し、一気に畳み掛ける後半のギャンギャンギター。めちゃくちゃかっこいい!直近のライブが『夢中夢』のツアーだったので、改めて小山田圭吾はロックでパンクな人なんだと再認識した。

個人的にかなり驚いたのが、「外は戦場だよ」。ボーカルは大野さんで、ギター2本、ベース、ドラムの構成だった。まさか生で聴けると思っていなかったので、すごく感動した。大野さんのボーカルは青葉市子より芯のある歌声で、それもまたよかった。
そしてスケッチ・ショウの「TURN TURN」のカバー。小山田圭吾がギターサポートもしていた細野晴臣と高橋幸宏のユニットで、METAFIVEでも演奏された曲だが、そうした攻殻機動隊の劇伴制作など、アザーワークを多く手掛けてきたこともしっかりこのライブに反映されている。

その後も『Mellow Waves』『夢中夢』などの曲を交えながら特別なセットが続く。「環境と心理」「STAR FRUITS SURF RIDER」が終わり、そろそろ終盤かな...と思っていると、続けて「THANK YOU FOR MUSIC」が始まり、会場のボルテージは最高潮に。そして、間を割くように突然「THE SUN IS MY ENEMY」のイントロが!小山田圭吾がフライングVを持って現れ、「PERFECT RAINBOW」「(YOU CAN'T ALWAYS GET) WHAT YOU WANT」「THEME FROM FIRST QUESTION AWARD 」がショートバージョンで演奏されている光景を見て、夢かと思った。今まさに伝説を目の当たりにしているのでは...。
再び「THANK YOU FOR MUSIC」に戻り、曲終わりとともに幕が下りた。『FANTASMA』の名曲でエンディングを迎えるというのもまたファン泣かせである。

アンコールでは、迫力満点の「E」を披露。先日の中国ツアーでやったと聞いて「絶対見たい!」と思っていたので、生で観られて本当に感動したし、「ワン!」「ツー!」とキメの回数をお客さんが叫んだとき、マイクを客席側に向けた小山田圭吾もお茶目で面白かった。「ギターヒーロー」感がビシビシしていて最高。

その後、「30年前の曲をやります」というMCとともに「THE LOVE PARADE」がスタート。コーネリアスのライブでは初めて見る、お客さんが手拍子をしている様子が圧巻だった。90年代の多幸感が2024年の会場内にも溢れており、改めて94年と現在のコーネリアスが地続きになっていることを実感した。

最後は定番の「あなたがいるなら」で締められたのもよかった。恐らく2021年、多くのファンの心を支えたであろうこの曲。活動を振り返ったあとに聴くと、また違った感慨の深さがある。「あなたがいるなら この世はまだマシだな」というフレーズに、固唾を飲んで聴き入った。

小山田圭吾が捌ける前、会場を見上げて「おおー」と感慨深そうな表情を浮かべていたのが印象的だった。フリッパーズ時代から数えると30年以上活動していて、ファンが世界中にたくさんいるのに。その奢らなさにまたじーんときてしまう。

一日経っても余韻が引かない。このライブを人生で観られるなんて、どれほど幸せなことだろうか。活動を続けてくださって、たくさん素敵な音楽を生みだしてくださって、本当に本当にありがとうございます。

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