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河村悟『純粋思考物体』デーリー東北新聞に掲載

デーリー東北新聞【2022年12月29日・朝刊】にて、河村悟『純粋思考物体』の記事が掲載されました。本の紹介とあわせて、著者、河村悟と企画者、佐藤究を取材いただきました。

八戸市出身の詩人河村悟さん(73)が、詩集『純粋思考物体』=写真=をテテクイカ(東京都)から刊行した。30年以上前に作品は書き上げながら世に出ることはなかったが、『テスカトリポカ』(KADOKAWA)で第165回直木賞を受けた作家佐藤究さん(45)が企画・プロデュースして出版にこぎ着けた。(小林彩乃)

 河村さんはこれまでも詩集や詩画集、舞踏論などを刊行してきた。佐藤さんは19歳の頃に河村さんと出会い、多くの影響を受けたことを、デビュー後のインタビューで度々、語っている。
 本書は1989年に書き終えており、113編の短い詩や寓話、哲学、舞踏論が並ぶ。「詩人とは言語の寄生虫である。言葉にたかる虫けらである。詩人にとって詩を読むということは、詩に寄生するということだ。寄生することなしに詩を読むことができない(後略)」と、言葉を紡ぐ詩人の根源に迫ろうと思考した文章もある。
 97年ごろに原稿を読み、書籍化を望み続けてきたという佐藤さん。取材に「河村さんの著作には『言葉の舞い落ちる静かな場所』の空気が常に漂っている」と語り、「誰もいない森の奥で枝から離れた一枚の葉が、ひっそりとそれ自体の重みで舞い落ちるような、穏やかさと荒涼な気配の交錯する静けさは、他にないもの」と河村作品の魅力を挙げる。
 一方の河村さんは「小説の荒野を奔馬のごとく疾駆する現代文学の俊英」と佐藤さんを評し、「無名の詩人か死人か分からない肉に取り憑いた『物体の睡り』をたたき出そうとは、だれが想像しえたでしょうか」と、自身も完成から長い年月を経ての出版に驚きを隠さない。
 「著者はすでに晩年を迎えた一頭の老馬に過ぎない。廃馬目前のこの私に生の鞭をふるってくれる佐藤氏とテテクイカのみなさんに、この機会を借りて謝意をしるしたい」とコメントした。
 『純粋思考物体』は税込み3300円。

デーリー東北新聞
※年齢は掲載時


デーリー東北新聞社提供【2022年12月29日・朝刊】
※許可をいただき掲載しています。

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