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「どうして私はフットボールを書き続けているのでしょうか?」〜ライターなるには日記【第5回】<表>

 2021年も残りわずかとなった。新しい年が明ける前に、今年の自分の仕事について、簡単に振り返ってみることにしたい。昨年に続いて今年も、コロナ禍の影響で海外での取材機会はゼロ。その代わり、ライティング以外の領域にもチャレンジできた年として、自分の中で銘記される一年となった。

 今年の2月には、ハフコミ(ハーフウェイオンラインコミュニティ)を立ち上げた。これは、JFLや地域リーグや都府県・ブロックリーグを「ハーフウエイ(中腹)」と定義し、このカテゴリーを活性化するためのネットワークづくりやウェビナーを定期的に開催するのが目的である。

 ちなみに来週月曜日には、株式会社ジェブエンターテイメント代表の田邊伸明さんを特別講師にお迎えする。おりしも今シーズンが終わり、サッカー界の人事往来が日々報じられる中、日本で最も著名なエージェントの言葉は非常に刺激的に感じられるはず。ハフコミ会員以外の方は、税込み1100円のチケットで2時間参加できるので、興味がある方はぜひ! チケットはこちらで購入できる。

 今年8月には、初めての写真集『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』を上梓することができた。こちらはJサポの「アウェイ旅の友」となるような作りを心がけた。来季の旅に思いをはせながら、ひとつひとつの都道府県の「フットボールのある風景」を楽しんでいただければ幸いである。

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 さらに来月1月末に向けて、次の書籍の追い込みに入っている。2019年のFIFAクラブワールドカップに唯一の日本人として出場。その後は不慮の事故で失明の危機に瀕しながらも、再びクラブワールドカップを舞台を目指すフットボーラー、松本光平の半生を描いた書籍である。

 私にとっては初めての「選手もの」であり、しかも著者ではなく「構成」として関わっている。これもまた、これまでの仕事とはまったく異なる領域であったが、自分でも驚くくらい楽しみながら作業を進めることができた。タイトルについても、つい先日『前だけを見る力 失明危機に陥った僕が世界一を目指す理由』に決まった。こちらも楽しみにお待ちいただきたい。

 というわけで、ようやく本題。今週、NHKの朝の連ドラ『カムカムエヴリバディ』で、主人公のこんなセリフがあった。

「Why am I still studying English when my husband is not with me anymore? (もう夫はいないのに、どうして私はまだ英語を勉強しているんでしょうか?)」

 このセリフが出てきた背景については、長くなるので割愛するが、妙に刺さるものがあった。自分に当てはめると「どうして私はフットボールを書き続けているのでしょう?」ということになる。いやあ、考えたこともなかったなあ……。

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 一口で「ライター」と言っても、さまざまなジャンルがある。経済だったり、政治だったり、旅行だったり、外食だったり、美容だったり、風俗だったり。スポーツは、そのごく一部でしかなく、サッカー専門というのは(スポーツの中では数が多いほうだが)さらにその一部でしかない。

 そんなに儲かるわけでもなければ、社会的な影響力が得られるわけでもないのに、なぜサッカーを書く仕事を選んだのか? 同業者を見渡してみると、いくつかのパターンがあることに気付かされる。

 まず、バリバリの体育会系サッカー部出身者。大手新聞社のスポーツ部やスポーツ紙の記者は、このタイプが多いように感じる。次に、そこそこプレー経験があって、夜ふかししながらワールドカップをTV観戦していた、元サッカー少年。これは専門誌の編集部でよく見かけるタイプだ。フリーランスの番記者は元サポーター、兼業の戦術系ライターは、ゲームから入ってきた人が多いのではないか。

 私の場合、系統からすると「元サッカー少年」となるだろうが、現役時代はベンチ要員だった時代が長かったので、プレーを楽しめた時代はごくわずか。サッカー観戦に関しても、スタジアムでなら楽しめるが、TVで何試合も見たいとは思わない。そんな私がなぜ、四半世紀にわたって、この仕事を続けていられるのだろうか。われながら不思議である。

【以下、OWL magazine読者のみに公開】OWL magazineでは、サッカー記事や旅記事が毎日、更新されています。Jリーグだけでなく、JFLや地域リーグ、海外のマイナーリーグまで幅広く扱っています。読んでいるだけで、旅に出たくなるような記事が盛りだくさん。すべての有料記事が読み放題になる、月額700円コースがおすすめです。

 なお、宇都宮の新著『蹴日本紀行』は、徹壱堂でお買い上げいただきますと、著者サイン入りでお届けいたします。

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