わたしの陰謀論

 アフリカ大陸にヨーロッパ人がやってきたとき、アフリカ大陸の中で戦争を繰り返しながら征服した地域のアフリカ人を奴隷にしてゐたアフリカ人たちは、その奴隷を商品としてヨーロッパ人と交易を始めた。

 かうしてアフリカ人はヨーロッパやアメリカに奴隷使用を勧め、侵略と略奪と支配を自ら呼び込んだとも言へると思ふ。
 支配を呼び込んだとする見方は、アフリカ大陸に限ったことではなく、ヨーロッパやアメリカに支配された地域すべてに多かれ少なかれ適応が可能だと思ふ。

 日本でもキリシタン大名が日本人を奴隷としてヨーロッパに売ったといふ話があるやうだ。
 もし、あのまま、キリスト教が広がっていったなら、当時の世界で最強の武装民族だった日本人も、ヨーロッパに内部から文化的精神的に侵略されて、奴隷にされたかもしれない。

 豊臣秀吉はヨーロッパ人の侵略の意図に気づいてキリスト教の宣教師を追放しキリスト教徒を処刑した。これは事実としてわたしたちは教科書でも習ふ。
 
 ヨーロッパ人たちは侵略する。
 このことを知ってゐたから、幕末になってアメリカが日本に開国を強いたときから、欧米に対するレジスタンス運動が始まった。

 欧米は、当面、日本の武力侵攻は諦めて、他の支配地域で行ってゐるやうな文化的侵攻を専らとすることにした。
 「封建的な日本人は、自律性に欠け、主体性を持たず、同調的で集団主義である。周囲の目を気にして生きゐる。是非とも西洋の文物を学んで文明開化して、欧米人のやうな自律的で自己主張できる個人にならなければならない
 かうした文化的侵攻の先鋒として、福澤諭吉が『学問のすすめ』を書いた。中江兆民がフランスのルソーの人民主権論を伝へた。

 日本人は自分たちの民族性や文化に対する劣等感がある。
 これは、日本人が内省する知性と感性に富んでゐて、自分を常にまるごと肯定できるほど一面的な見方ができないからだ。

 どんなものごとにも裏表があり、角度を変へるとまったく違った形に見えることがある。さういふ洞察ができる民族は、欧米人や中国人朝鮮人のやうに「自分たちが正しい。故に、正しい自分たち以外は間違ってゐる」と単純に信じ込むことができない。

 この内省心につけ込んだのが福澤諭吉などの啓蒙家である。
 日本人はずっと「自分たちは間違ひを犯す」と思ひながら大東亜戦争に突入していった。
 敗戦して、「日本がわるかった」と外国から一斉に言はれると、それをまるごと日本人は受け入れた。何か間違ひを犯すに決まってゐて、それを自分たちでも知って反省したいと思ってゐるのが日本人だからだ。

 日本人はいつも「自分が完全に正しいことだけをしてゐるわけがない」と自分を疑ってゐる。
 外人とは、その日本人の内向的で自省的な性質につけ込む人たちのことだ。だから、日本人でも日本人の人の良さにつけ込む人は「外人」だ。

 敗戦後、
日本人は自律性も主体性も持たず、集団と同調して権威に盲従して生きてゐる
と分析する『菊と刀』がベストセラーになった。
 明治の『学問のすすめ』に相当する、昭和の啓蒙書である。

 かうして文化的な侵攻を受けた日本人は、日本だけにあるシステムを見つけると、「欧米並み」か「欧米のもの」に改革することに憑りつかれることになる。
 民主化運動。最近なら、構造改革。

 最近は、世襲議員といふものが「あんなものはヨーロッパには無い」と言ってれいわ新選組・参政党・日本保守党といった革命勢力から盛んに批判されてゐる。

 批判の内容は当たってゐる、こともある。
 そして、
 改良は、まったく、けっこうなことだ。良くなるのはわるくなるよりいいに決まってゐる。

 けれども、その改良なるものの動機、無意識の中にある動因は、自国の文化に対する劣等感と嫌悪である。
 はやく西洋人みたいに足の長い金髪で碧眼の「まったく正しい」人間になりたい―常に自分を振り返って悩んでゐる日本人は、さういふ、何をやっても言っても正しくてもう悩みの無い人間、つまり欧米人に、なりたいのだ。

 日本人を操るには、日本人の自省心につけ込めばいいことは、外人はみんな知ってゐる。
 日本で暮らす外人のふるまひをよく観察してほしい。
 日本人が「まはりの人に配慮して」守る規則や慣習を、外人は自分の個人の判断で守らない。

 たとへば、中学校の英語の補助教師である外人が、ノーブラのタンクトップでやってきたが、誰も注意できなかった。教師がノーブラのタンクトップでは教壇に立てないといふ法律は無いからだ。
 日本人がさうしないのは、「まはりの目を気にして」である。
 外人は、そんなものは気にしない。
 なぜなら、まはりで見てゐるのは、まだ文明開化できてゐない土人だけだからだ。

 『学問のすすめ』にはいいことがいっぱい書いてある。
 けれども、現代語訳をしたのは斉藤孝だ。
 それだけでも、これを今の日本人に読ませようとする意図がどういふものかがわかるはずだ。
  

 以上、わたしのトンデモ陰謀論でした。
 お楽しみいただけたでせうか?

 

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