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株式投資 第六章 データマネジメント

第六章 データマネジメント:ヤマ勘からサイエンスへ!
マネジメントの基本であるPDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルの要諦はPlanと並んでCheck、すなわち現状を分析し、確認する事です。ここでは株式投資のPDCAを回すために重要なデータ管理やレポート作りを考えてみましょう。

証券会社が提供する情報ツールを使いこなそう
まず初めに、証券会社に口座を開設してシステムにログインできるようになると、いろいろな情報を無料で見ることができる様になります。大手の証券会社は取引手数料が最安値ではないかもしれないけれど、情報提供の面で充実している事はメリットです。

例えば野村証券に口座を開設すると、自分で株を買っても買わなくてもヒートマップ というその日の株価の「火災状況地図」を見ることができます。
ご自分のPCでも、それどころか移動中のタクシーの中でもiPadのようなタブレットで火事の状況(笑)を見ることができるし、この一画面に100銘柄まで、裏画面でさらに100銘柄で合計200銘柄、ご自分の関心ある銘柄を登録しておけば、ご自身の領土の火事が一目瞭然なのです。

野村証券のユーザーが使えるヒートマップ


この日は、左側に重点投資銘柄、右側にウェイトを下げて様子見の銘柄、真ん中は水平分散投資で購入したまの銘柄群を集めてあります。色は25日平均線 の上にあるものは赤い系統の色で、25日平均線よりも下にあるものは青系統の色となっています。

野村のヒートマップは登録した銘柄の表示位置をクリック+ドラッグで移動できるので、自分で意味付けした好みのレイアウトにするのが超簡単な優れものです。

毎朝、コーヒーを飲みながらこのヒートマップを眺めて一喜一憂するのも株式投資の楽しみの一つです。

日興証券には、わざわざ銘柄を手動で登録することなく、貴方が日興証券の口座に預けている現物株式や、信用取引で売買契約済みの「買い建て」「売り建て」の銘柄、要するに貴方が投資中の銘柄を自動で表示してくれるヒートマップもあります。

日興証券では、預けている銘柄は自動的に表示される。

私は、自分で保有していない銘柄の動静を見る方が好きなので、このチャートはあまり見ません。また預かってもらっている銘柄がコード番号順に羅列されるだけで、各銘柄の表示位置を変更する方法が無いので、構造的に把握することができないけれど、事前登録という手間を省きたい人には、有効です。

ヒートマップで概観を得た後に、各銘柄の動きを理解し、その先を予想する作業が必要ですが、そのためには、おなじメニューで表示内容を切り替えることで、簡単に罫線 を見ることができます。

30インチの大型ディスプレイを二台買って、野村證券の100銘柄ヒートマップと、日興証券の自分の持ち株チャート10銘柄分を表示したら、一端(いっぱし)のトレーダー気分に浸ることもできそうです。

このスナップショットの10銘柄は実際に私が数日以内に日興証券で購入した銘柄ばかりですが、グラフを見るとピークより下がっている銘柄が多いです。これは、私が「逆張りの投資家」(つまり、値段が下がっているときに投資を開始し、値上がりをじっくり待つタイプの投資家)であることを如実に語っています。
ビジュアルで、しかも多数の銘柄を一画面に表示して眺めると、自分の投資スタイルを鏡に映して眺めるようなもので、私自身大変勉強になります。

罫線は、過去の数字、いわゆるバックミラーで後ろを見たものですが、バックミラーを見ながら車を運転しようとする人が後を絶ちません(笑)。これはあくまで過去を見るものですから、近未来を予測するには他のデータも必要となります。

近未来を知るための情報の一つに「板」 と呼ばれるものがあり、未だ成約に至らない注文がどの程度集まっているのか、いないのか、を解りやすく表示してくれます。


ここに示した例は、日興証券の利用者 に無料開放されているBriskと言う3rd Partyの情報ツールで、東京証券取引所に集まった買い注文、売り注文(日興証券の取次だけではなく、すべての証券会社経由の全注文)を表示してくれるものです。

この「板」をよく見ることで、どれだけの売り注文が到着しているのか、それに比べ買い注文は十分か? 売り買いが拮抗しないと価格による需給バランスの調整が生じます。これが市場メカニズムですから、特定の銘柄に関する市場メカニズムを見せてもらえるということです。10年先を見据えた長期投資であれば、その日の値動きを気にしてもしょうがないでしょうが、実際に株式にお金を投資するときには、その日一日でも値が上がりそうなのか(だったらすぐ買わなくちゃ)、それとも値が下がりそうなのか(だったら急いで買い注文を出さない方が良い)という重要な判断材料となります。

おなじ10,000株の売り注文が出ているときでも、その注文が何件の注文から成るかを示す注文数(売り注文を出している投資家の人数と解釈してよい)が見える詳細表示もあるので、50人が売り注文を出して合計10,000株の売りになっているなら個人中心の相場だが、仮に1とか2とか極めて少ない注文数で10,000株の売り注文が出ているなら、それは
いわゆる大口(=機関投資家)が売りに動いてるだろう、など、どのような参加者が動いているかも概ね読み取ることができます。

加えて、東証グロース銘柄など、小型株への投資を考えるときには、どの程度の売買がされているのかを板で確認することも重要です。小型株には取引量が少ない銘柄も多く、このような閑散銘柄に買い注文を入れるとそれが原因で株価が上がってしまい、また将来売り注文を入れた時にもそれが原因で株価が下がると言うことも考えられるからです。

私は1,000株単位の投資をしたいときに、板情報を見て買い注文、売り注文いずれも100株単位だった場合には、自分の売買注文が相場に影響することを避けるため、自分も100株単位の注文に替えるか、あるいは投資を控えるか、の判断をしています。

さて、ここまでは取引所で時々刻々と取引されている状況や、直近の需給を見てきましたが、自分が保有している株の状況を判断するには、これだけで十分でしょうか?
自分の保有銘柄はその買い値と保有株数によって、現在換金したら幾らの利益が見込めるか、逆に換金したら幾らの損失か、という投資原価を基準に市場価格に照らして見てゆく必要があります。
その点、いままでの情報は自分が何株保有しているか、幾らで買った株なのかが反映されないモノでしたが、これから見る情報は株式会社Lineヤフーが提供しているYahoo Financeのサービスで、どの証券会社に口座を持っているかと関係なく誰でもが無料で使うことができるサービスです。

Yahoo FinanceのPortfolio管理(無料)

この画面に自分が投資した銘柄を登録し、その際に買った株数と買い値を記入することで、時々刻々変化する株価によってあなたの投資資産がどのように変化しているのかが見えます。(時々刻々と言いましたが、証券会社の提供するシステムよりも、少々遅く、一定時間「数分?」ごとに内容が更新されるようです)

この無料のWebアプリの良い点は、自分の購入価格と現在の市場価格が比較できると同時に、複数の証券会社に口座を開設し、それぞれの証券会社の良い点、悪い点を区別して使い分けている人が、一画面で自分の投資状況を一覧できるメリットもあります。

(Case Study-27) 次は、本当は内緒にしておきたかった使い方なのですが(笑)、Negative Portfolioの管理にも使用する事ができます。
私がNegative Portfolioと命名したものは何か?
通常のPortfolioは投資を開始してから終了するまでの投資中の銘柄を扱いますが、Negative Portfolioでは投資を終了してしまった後、すなわち全部売却してしまい、今は持っていない株に関して、過去に売却した判断がどうであったかを見ることに使います。

Negative Portfolioも管理できます!

ここに載せたNegative Portfolioの例は、私が2023年7月に売却した銘柄をその時の売却価格とともに管理しているもので、システムが最新の市場価格を利用して計算する機能を使って、私の売却が良かったのか悪かったのかを知るツールとして使います。
画面上に購入価格と表示されている金額は売却価格と読み替えます。

つまり、この画面上に損益がマイナスと表示される時は、私の売却株価よりも現在の市場価格が下がっているということなので、Negative Portfolioに於いてはプラス評価の情報なのです。
この画面全体では、「もし、私が7月に売らずに現在まで同じ銘柄を保有しつづけていたら、400万円も資産価格が減少していたでしょう!」という貴重な情報を簡単に得ることができるわけです。
私の知る限り、どの証券会社も投資家が既に売ってしまって現在保有していない銘柄の逸失利益や損失回避額を管理するツールは提供してないと思うので、自分の実績をキチンと見て評価したいと考える投資家にはNegative Portfolioが管理できるWebツールとして重宝すると思います。

独自の情報管理でデシジョン・サポート
ここまでは口座を開設した証券会社やLineヤフー社が無償提供するスタンダートツールの使い方(独自の使い方を含めて)見てきましたが、これから先は手作りのツールも紹介しておきましょう。

(Case Study-28) 総合評価表
これは証券会社の約定データをダウンロードして作りますが、複数証券会社の約定データのフォーマット(データ項目の並び方)が異なるので、これらをフォーマット変更せねばならず、少々手間がかかります。Excel上級者向けかもしれません。

複数証券口座の

この管理表は、銘柄毎に年初来幾らの資金を投資して何株を購入し、また途中何株を売却して幾らの資金を回収しているかを集計・相殺しながら、現時点での投資累計(=投資金額-回収金額)と持ち株数、現在の市場価格を使って、銘柄別の投資収益を見ています。

避けなければいけないことは、一株@1,200円で購入した株が@1,300円になっているからこの銘柄では一株当たり100円の含み益があると早計に判断することです。例えば、この銘柄は今年前半にも投資をして、その時は@1,100円で購入したが期待に反して値下がりしたので、一株@950円で損切り売却したケースなどが考えられます。
そのケースでは、既に一株150円の損失を出しているので、いま手持ちの株で見かけ上100円の含み益があるけれど、通算するとこの銘柄への投資は一株あたりで50円の含み損が出ている段階だ、まだ含み益は出ていない、と判断できることが重要です。

例示した管理表では、一株当たりで投資・回収がなされた金額と今の株価、一番右の欄に両者で計算した現在値倍率(投資効率を意味し、100%超が利益)を示しています。

私は、比較的短期で結論を出すことも多く、買い値よりも安く売る(損切りする)ことでさらなる損失リスクを回避することも多いので、次の投資機会には前回の損失を通算して収益を見てゆかないと、一見儲かったように見えて、年間通算でちっとも儲かっていないと言う事が起きかねません。これをきちんと回避してゆくには累積投資金額を評価する総合評価表が重要な役割を果たしていると思います。

なお、左から三つ目のコラム「持ち株数累計」のタブで0のデータのみを選択すると、株の売却を完了して、現在の持ち株数=0の銘柄一覧(投資完了銘柄一覧)が表示され、そのViewでは右端の現在株価との対比はブランクで、中ほどの投資収益(投資額と回収額の差額)が表示されます。

テクニカルな話をすると、証券三社の約定データを共通フォーマットに変換し、各行にはそのデータの出自である”日興“、”野村“、”大和”などの識別子を入れたものを一旦作りますが、そのままだと一銘柄の情報が3レコード(3行)に分散されることになり表示が面倒なので、その最大3行のデータから日興、野村、大和の専用コラムをもった一行のレイアウトに非正規化をして転記します。その際には=IF(COUNTIF($Axxx,"日興"),Jxxx+Kxxx,0)というExcel関数を日興証券専用のコラムに埋めてデータを拾っています。
複数の証券口座を使い分けている方は参考にしてください。

さて、最後になりますが、投資経験のある銘柄の現在の市場価格は高いのか、安いのか、自分が今まで実施してきた取引記録と突き合わせて迅速に当たりをつけ、再投資を実施するか、様子見にするかを判断する材料が必要になります。

ここでご紹介する「底値帖」がその貴重な情報を提供してくれます。
(Case Study-29) 底値帖

エクセルで作った底値帖

この表で、紺色で示されている左の4つのコラムが日興証券提供のBriskが表示してくれるリアルタイムの市場情報で、この表を作成するにはその日の取引が終了した15:00過ぎのタイミングでCSV形式のデータをダウンロードして、この表に貼り付けます。
そして、右側にある黄色の部分が今までの大和証券、野村證券、日興証券の三社で売買した約定データから集計・加工した、銘柄の株価の「最低買い値」と「最高売り値」を示しています。
テクニカルに言うと、一番左のコラムにペーストされた銘柄コードをキーとしてVLOOKUPというExcel関数を使い、過去の約定データを銘柄別に集計した表から該当する数値を拾っています。

お示ししている状態は「最高売り値からの下落率」順にソートしてあるので、
一番上に出てくる銘柄が「私が売った時の値段より、最も値下がり率が大きい銘柄」ということになり、今買うと「再び以前の価格にもどすならば、、、、、、」大きな値上がり益が期待できる銘柄ということになります。

もちろん、会社の経営が悪く、あるいは事業環境も恵まれずに株価が下落し続ける買ってはいけない銘柄もこの表の上位に顔を出すことになるので、この表だけで投資判断が完結するわけではなく、あくまでこの表の上部に登場した銘柄は「私の経験のなかでは今の株価が安い」という事を示すだけです。最終的な投資判断は第三章に詳述した投資対象の選定の考え方に準拠して分析・評価をしたうえで決定する事は言うまででもありません。

株式相場を占う恐怖指数
株価は経済活動を反映するので、経済に関するいろいろな統計、たとえば金利の動向、失業率、インフレ率、人口動態などなどは株式投資の方向性(リスクオンなのかリスクオフなのか)を決める重要な指標であります。
ここでは、各種ある指標のなかでも特色のある、通称「恐怖指数」をご紹介しておきましょう。正式名称をVIX (Volatility Index)と言います。

VIXの東京証券取引所バージョンが「日経平均ボラティリティー・インデックス」 です。日経平均VIと略します。
2020年のダイヤモンド・プリンセス号の感染者隔離のときに歴史的な高さを示し、その後の株価大暴落を示唆したと考えられています。
私は、この指数が30に近づいたときには株式投資からリスクオフすることを考える様にしています。



人生は振り返ることでしか理解できないが、
しかし前を向いて生きなければならないのだ
・・・・キルケゴール


<第六章のまとめ>
証券会社に口座を開設すると各種の情報を見ることができる。
証券会社の情報は過去の報(バックミラー)。これだけで投資判断しない。
Line ヤフー社のツールでは複数の証券会社扱いの持ち株数や自分の買い値を管理できる。
標準ツールを使って、独自のNegative Portfolioも管理できる。
総合管理表で銘柄ごとの累計投資収益を見える。
底値帖で、現在の株価が自分の売買レンジどこにあるかが見える。

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