中国語圏のVtuber表記について(1)

 現代の中国語圏において、人名表記にかなりの揺れが見られる。日本人Vtuberの中国語圏の表記に関しては、ある記事では繁体字/簡体字が使われていたかと思ったら、別の記事では日本語の新字体やひらがな・カタカナが現れていたりなど不明瞭な箇所が多かったため、自分のメモも兼ねて記事を書くことに。
※あくまで表記についてどのように使われているのか調べたいだけなので、「~表記にすべきだ」ということは一切ないです。

繁体字or簡体字

 台湾・香港などでは繁体字を、中国本土などでは簡体字を使用。しばらくは台湾の繁体字記事を中心に見ていくことになるけど、体力があるときに中国本土の簡体字記事も見たいところ。

中国語圏の外来語表記について

 ひとまずざっくりと概要を見るにはwikipediaに頼ろうということで、以下引用。

日本の女優である宮沢りえは、中国語圏では「宮沢理恵」と表記される。この場合、本名では表記せず「りえ」という音が日本語では「理恵」と表記されることが多いという判断から、中国語圏でも用いられるようになったものだと考えられる。このような場合、本人の申告によって変更を求められる事例もある(実例として松山ケンイチが2010年12月に台湾を訪問した際、名前が「松山健一」と書かれているのを見て、本来の表記である「研一」に改めさせたという話がある)。

Wikipedia

上記のような人物の俳優・女優であれば、漢字表記は漢字表記の候補はいくつかあれど(理恵・理絵等)、ひらがな→簡体字/繁体字表記は類推しやすい。しかし、Vtuberであれば漢字表記にしにくい人も多いだろうから、音訳に頼ることになりそう。私が知っている中国語表記にしにくいひらがな&カタカナ表記→簡体字/繁体字の例(=音訳)としては、「ドラえもん」の中国語表記。以下「ドラえもん」の中国語表記に関する引用。

「ドラえもん」は「哆啦A梦」と書きます。これは「ドラえもん」の発音を漢字に直した当て字なので、漢字に意味はありません。

「え」が「A」になっているのは、中国語には「え」の発音がないから。中国では、外来語の発音に近い当て字をつけるので、普段声調に苦労している方でもあまり違和感なく発音できるはずです。

中国語ゼミ

 上記の記事にもある通り、外来語の中国語表記は様々なものが見られる。例えば、「ドラえもん」のようなものの場合は、そのまま音訳をする「哆啦A梦」のパターンだったり、ドラえもん自体の意味を漢字表記で「機械猫」としたりなど。どのパターンが優先して使われるかは、母語話者ではないのでさっぱり(TVなどのメディアが決めていくことになるのかな多分)。まあなんにせよ漢字表記にするのは前提なんだろうな、と思っていた矢先にそうでもないパターンを大量に発見したので、台湾の記事を引用。

青桐高中是 Brave group 於 2018 年開始的 Vtuber 企劃,本名為「青桐高中遊戲部」(あおぎり高校ゲーム部),最初由音霊魂子與水菜月夏希兩人開始經營頻道(後者已於 2021 年畢業),之後加入石狩あかり、大代真白、山黑音玄、千代浦蝶美與栗駒こまる,現在共有六名 Vtuber 活躍著,以「企劃系」影片為主要活動內容,並積極嘗試多樣化的節目。

beanfun!

 音訳しかできなさそうな「こまる」はともかく、漢字表記をしやすいであろう「あかり」も繁体字表記ではなくひらがな表記に。まあ日本語の新字体だけ書いてるのかと思ったら「山黒音玄」は「山黑音玄」と繁体字表記になっているので、謎は深まるばかり。山黒音玄/山黑音玄表記については最も書きたいこと(というか基本的集めている資料は山黒音玄氏の記事が中心)なので、これは次の記事でまとめる予定。また、漢字表記の「石狩朱莉」や名前だけローマ字の「栗駒komaru」のようなパターンも別の記事で見られるのでそのあたりも山黒音玄氏の記事を書いたあとに体力があれば書きたい。

他にも台湾のVtuberグループのNKshoujoでも以下の通り繁体字表記をしていない。

 上記の画像にある「三星ナナミ」もそのままカタカナを使用した状態で記載されているので、必ずしも(少なくとも台湾では)日本人Vtuberは全て繁体字表記にする必要はなさそう。

台湾の外来語表記

 そもそも台湾は日本語の外来語表記は多く、日本語の新字体のままの表記(達人・居酒屋など)があったり、ひらがなの表記(台湾ではひらがなの「の」が普通に使われていたり)ので別に不思議ではないのだけど、非常に興味深い。孫引きにはなるけど、荒井・杜(2013)にある表1(鐘(2003)がまとめたデータ)を見る限りでは、2003年時はひらがな・カタカナ表記は台湾ではあまり見られない(「イチロー」や「の」)ものの、現代のインターネット文化では大分ひらがな・カタカナも許容されることにはなっているようだ。

今後の記事

 あくまで自分のメモ代わりも兼ねているので、今後メモ代わりに書きたい記事は以下の通り。

  1. 山黒音玄氏の中国語圏の表記

  2. ひらがな・カタカナの表記(台湾記事)

  3. 中国本土のVtuber表記

ひとまずまずは、自分の仕事が落ち着き次第1.は書きたいところ・・・。

参考文献

荒井智子・杜岱玲(2013)「台湾にある日本語」『明海日本語 = Meikai Japanese language journal』18. 345-353.


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