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義母の生霊と闘う話 番外編

 2023年11月14日火曜日
今日は義父の葬儀の日。
義父の兄弟も連絡が取れない人ばかりで(一番仲の良かった兄弟も、ひょんなことから義母と不仲になり縁が切れてしまった)体調を崩していた期間も長く友人も居なかったため、直葬で弔うこととなった。

明日は義父の誕生日だ。
夫は人の誕生日が覚えられない。これからもきっと私だけが忘れずにいるのだろう。

遺影

『親父の遺影、頼んでいいかな。写真送るから』
そう言いながら夫はLINEに写真を送ってきた。
スーツを着て、緊張しているような、カッコつけてるような、それでいて義父らしい。いい写真だった。
上の子のお宮参りのときに夫が『そのうち遺影にしてやるから。はい、そこ立って!』と義父をひとり立たせて撮影した、あの写真。
まさか本当に遺影になるとは。

私自身は縁切りしてしまっているので火葬に立ち会うことはできないが、そこに悔いがあることも夫はわかっていたんだろう。
私は遺影制作を引き受けた。

義父の写真を引き伸ばし、背景を神社から空色のグラデーションに差し替えた。
「少し明るくする?」
『唇がな。少し青白いよな』
消化器系が弱かった義父は元気な頃の写真を見ても唇が青い。
お義父さんのイメージを崩さないよう、少しずつ唇に色を乗せる。
「こんなもんで、どうやろう?」
『うん。これで!』
少し健康的な表情になった義父の写真を見て夫が微笑んでくれた。

今さら言えるはずのないありがとうとごめんねを込めて。
私の人生初の遺影づくりが終わった。

本当に。情けないくらい、なんもできなかったな。

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