ピーマンと紅しょうががクラフトビールのおつまみに!? カンタン&おいしいレシピをさぐれ
過去3回にわたり、さまざまなクラフトビールの種類や味わい方を学んできたこの特集。となると、次はおつまみがあれば完璧では……!?
ビールのおつまみといえば、枝豆やポテトフライなどが定番。でも、せっかくクラフトビールに合わせるなら、少し変化が欲しいもの!
「おいしくて、簡単で、お財布にもやさしい“ビールに合う”おつまみを教えて下さい」
ビール特集の締めくくりは、プロの料理人にそんな「無茶振り」をしてみました。
“#てさぐり部”の名にかけて難題をぶつけてみた!
クラフトビールに合うおつまみの考案を快く引き受けてくれたのが、料理人の田場辰ノ助さん。田場さんは今回取材場所となった「日ノモトブルーイング」の月例イベントでおつまみを提供している方。
ビールに合うおつまみをプロの料理人に考えてもらおう! このコンセプトは早々に決まっていた。しかし、ちょっと待て。我々は「#てさぐり部」である。もっと悩んで、手探ってもらわねば!(プロに)
そんないじわるな編集部の意向により、ビールのプロである「日ノモトブルーイング」田村大介さんの意見も取り入れて、この3つの「お題」をチョイス。
〜お題〜
①1分以内で作れるおつまみ
②生魚を使ったおつまみ
③100円以内で作れるおつまみ
ところで、普段飲んでいる日本の大手のビールとクラフトビールでは「合わせるおつまみ」にも違いはあるのだろうか?
田場さん:国内大手各社のビールはのど越しやキレが良いのが特徴で、ポテトフライや唐揚げといったガッツリした料理がよく合います。脂分や旨味たっぷりの料理をゴクゴク飲めるビールで洗い流すようなイメージですね。対して、クラフトビールは香りや味の繊細さが魅力で、素材そのものの味を楽しめる。たとえるならクラフトビールはシンプルにお米という素材の味を楽しめる「塩むすび」なんですよ。だからビールそのものの味も、おつまみの味わいも両方しっかり堪能できる、そんなタイプのおつまみが合うんです。
お題①:30秒で完成! 雑なほどうまい爆速おつまみ
では、いよいよ田場さんが考案したおつまみのお披露目会。「日ノモトブルーイング」の田村さんにも参加してもらい、おつまみの評価や、それぞれに合うビールを選んでもらうことに。
まずはお題①「1分以内で作れるおつまみ」
きんぴらのハリッサ和え
ポイントは、唐辛子をベースにした地中海生まれの万能調味料「ハリッサ」。辛みとクミンなどのスパイスの風味、ニンニクなどの旨味が特徴だが……。
30秒もかからず爆速でできてしまった。あのー、コツとかは?
田場さん:ないですね(笑)。あえて言うなら、均一でなくむしろ雑に和えること。ハリッサが濃いスパイシーな部分と、少なめの部分で味の幅が楽しめます。ちなみに、ファミリーマートのきんぴらが味や食感がベストです!
きんぴらの甘みとしょうゆの風味に、ハリッサの辛みとスパイシーさが想像以上に合う。確かにきんぴらに唐辛子入れてピリ辛にしたりするもんなあ……でも異国風で「食べたことがない味」でもある。
この料理に合うのでは、と田村さんが選んだビールは「ダブルIPA」。
田村さん:クラフトビールはスパイス料理との相性が良いんです。ハリッサのパンチの効いた味とクミンの香り、きんぴらの甘辛く濃い味わいが、アルコール強め&味わい強めのダブルIPAにぴったりかと。
田場さん:ハリッサは常備しておくといろいろとおつまみに使えます。きんぴら以外にも、肉料理との相性も良いので、コンビニの砂肝やソーセージとかに付けて食べてもおいしいですよ。
お題②:生魚をクラフトビールに合わせる秘訣とは?
続いてのお題②は「生魚を使ったおつまみ」。お題を決めるときに事前に田村さんに相談したところ、一番むずかしい素材は生魚では? との回答から。日本酒には定番おつまみの刺し身だけれど、特有の生臭さや水っぽさがクラフトビールには合わせにくいとのこと。手軽に作れるよう、田場さんには「スーパーで売っている刺し身パック」で! との条件を出した。
まぐろタルタル
田場さん:水っぽさを防ぐために、きゅうりの種周りを取り、まぐろをマヨネーズの油分でコーティングしました。臭み対策にきゅうりの青っぽさと大葉の爽やかさ、わさびの辛みをプラス。材料は切る大きさを揃えると味がまとまりやすくなります。
最初は「まぐろの刺し身にマヨネーズ!?」と恐る恐る口に入れたら……いや全然アリ! むしろおいしいし、淡白な赤身にコクが加わって食べごたえが増した感じ。きゅうりのアクセントも楽しい。
こちらに田村さんが合わせたビールは、「ヘイジーIPA」。
田村さん:ヘイジーIPAは、まろやかな口当たりとフルーティーさが特徴。マヨネーズをまとったまぐろのねっとりした口当たりがヘイジーIPAのまろやかさと良く合います。このタルタルには柑橘系の風味が合うかなと思ったので、ヘイジーIPAのフルーティーさで補ってみました。
ヘイジーIPAは肉などガッツリ系に合うので、まさか生魚と合うとは思わず、田村さんも目からウロコだった様子。「田場さん……さすがっすね」を連呼していた。
お題③:物価高でも100円以内のおつまみは可能
そして最後のお題③は、1人前100円以内のおつまみ。食品の値上げが相次ぐ中、正直このお題が一番厳しいのでは? と思っていたが、なんと田場さんは2パターンも考えてくれていた!
ピーマンと紅しょうがのナムル
田場さん:ピーマンの青臭さを消すために紅しょうがを合わせました。ごま油とピーマンで青椒肉絲(チンジャオロースー)をイメージして作りました。ピーマンは1袋98円、紅しょうがも1袋98円で1/2袋使用、調味料も2〜3円くらい。1人前80円以内です!
紅しょうがの酸っぱさが立つのかと思いきや、ピーマンの苦みとごま油のコクとこれまた絶妙なバランス! 旨味が強いのにさっぱりしてて箸が止まらない! 現場では「これ白ご飯でも合うやつ」「お弁当のおかずにしたい」という感想も。
田場さんの説明を聞いた田村さんは何かピンときた様子で、合わせるビールには黒色が特徴的な「スタウト」を提案。
田村さん:スタウトの苦みの強さがピーマンの苦みとも通じるかなと。また、青椒肉絲といえば中華料理。スタウトの風味は紹興酒に近いのでは? と連想しました。
スタウトを飲んでみると、なるほど確かに紹興酒の独特の風味に近いかも。ピーマンの苦さと紅しょうがの塩気と酸っぱさがスタウトの苦さで打ち消しあい、一口ごとに新しさがあって楽しい。
三つ葉とちくわのわさびじょうゆ和え
田場さん:和食に合うタイプのクラフトビールと相性が良いかと思い、板わさをかまぼこより安いちくわで再現しました。糸三つ葉は今回1袋60円、ちくわは1本20円。糸三つ葉は水耕栽培なので比較的どんな季節も安定供給されている野菜。爽やかな風味がおいしいので、ぜひ積極的に使ってみてください。
糸三つ葉の爽やかな香りと触感、わさびの風味、ちくわの味わいで見事な「和」の一品。落ち着いた小料理屋で出てきてもおかしくないクオリティ。
これを食べた田村さんは、和食にも合う「ケルシュスタイルビール」をチョイス。
田村さん:ケルシュスタイルビールは、薄味でスルスルと飲める、わんこそばのようなビール。薄味で和食の繊細な味わいにも合います。
日本の大手のビールも和食に合うけれど、ケルシュスタイルビールのほうがキレがおさえめで、和食のやさしい味付けがしっかり味わえる。この組み合わせもおいしい!
「因数分解」でおつまみ作りが簡単になる?
ハードルが高そうなお題を3つも提示したのに、困る様子もなく4品も提案してくれた田場さん。おつまみを考えるコツを聞いてみると……。
田場さん:ビールのおつまみに限らず、料理の献立もそうですが、僕は因数分解して考えるようにしています。例えば、お題②の「まぐろタルタル」はビールは麦が原料だから「パン」と同じ、まぐろは「ツナ」。つまりツナサンドだから合わないわけはないんですよ。知っている食べ物に近い組み合わせならば、味のイメージもしやすいし、失敗も少なくなると思います。もちろん、ビールを飲みながら研究するのも大事ですけどね……でも僕、じつはほとんどビール飲めないんです。下戸なんで!
最後に衝撃の事実!
とはいえ、4回にわたりビールの種類や味わい方、関わる人のストーリーを知ることで、これまでよりもビールの楽しみ方が少し広がったような気がする。今日のおつまみとのペアリングも発見の連続だったしな……やっぱりビール、奥が深い!
というわけで。「ビール完全に理解した」とはいかないけれど「ビールの楽しさはかなりわかってきた!」。これからも楽しくおいしく飲みながら、その世界を知っていこうと思います。
(おわり)
クレジット
文:大浦綾子
編集:川口有紀
撮影:和田咲子
校正:月鈴子
取材協力:日ノモトブルーイング
制作協力:富士珈機
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